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二話『剣がなくて犬はある』

まったく関係ないけど

凸凹

って、ぴったり埋めたくなりません?

城門を出てハロルドはエルフのような少女、レーネと二人、森へ向かって歩いていた。

「そういえば自己紹介あったわね。私はレーネ、エルフよ」

――存在自体幻とされたエルフ。

レーネと名乗った少女は、自身をあっさりエルフだと言い切った。


「僕は……ああ、ハロルド。宜しくね」

ハロルドは自身の名前ではないが、彼はハロルドと名乗る。

勇者ハロルドが今の名だからだ。

しかしハロルド、護衛がついたというのに頻りに辺りを気にしていて落ち着かない。


地面に生えた葉などが揺れようものなら、彼は身体を震わせて素早く振り向く。

「――もっとシャンとすればいいのに。貴方、ルーレットはあっさりやったじゃない」


「いや……だって、使い方もロクに知らないし――弓より危ないようには見えなかったから」

ハロルドのそんな言葉に、レーネが固まった。

レーネは彼の度量をかって共に旅をする筈だったのだ。

そんな彼が度胸ではなく、単に『危険物に見えなかったから引き金を引いた』と話して、彼女は軽く引いていた。


「――嘘でしょ。じゃあ、ロクに何も判らないまま引き金を引いたの?」

ハロルドの言った言葉が、彼女には信じられなかった。

彼女……いや、今や大陸で見ても拳銃はポピュラーで当然な兵器だ。

レーネは、彼の国に銃器が無いことなど知らなかったのだ。

「うん。マズかったかな……」


「まぁ、そりゃそうよね。貴方みたいにナヨナヨした男が、ルーレットなんて出来るわけない。私がバカだった! で? 目標は何処なのよ」

レーネに言われて、ハロルドは『針の塔』を指差す。

その塔を指差すということは、彼の目標は魔王討伐だということ。

レーネにはハッキリと理解できた。

そして同時に溜め息まで出てくる。


「魔王討伐の勇者って訳? 貴方みたいにナヨナヨしたヤツが? 衛兵のがマシじゃない!」

レーネはため息以上に、吐き出すようにハロルドにハッキリとそんな言葉をナイフのように突き立てる。

そんなレーネに、ハロルドも必死に応戦しようと叫んだ。

「僕だって帰りたいよ! この剣だって盾だって重たいし、背負ってるものは大陸全体の期待だよ!? 押し潰されそうだ!」


「なら帰れば良いじゃない!? 大人しく『出来ません』って!」


「王様に“脅された”んだ! 槍を首元360度に突きつけられて、断れるもんか! イヤなら帰ってくれ、僕一人でもやってやる!」

――自殺行為である。

だが頭に血の上りきったハロルドには、それさえも理解できない。

案の定、レーネは肩を一度竦めて呆れたような目でハロルドを見ると、とっとと引き返してしまった。


「ふん! あんなのこっちからお断りだ。あとは別な街で仲間――」

彼がレーネから目を離し、元来た進行方向へ振り返ったその瞬間、禍々しい見た目の犬が飛び掛かる。

ハロルドは一瞬の内に押し倒されるが、何とか咬まれないように必死で抵抗した。


「く……この! 僕から離れ――いてて! アォォォォォウ!」

しかしお約束というべきか、ハロルドは腕に食い付かれて情けない悲鳴を上げる。

まだ剣すら抜いていないのに負けてしまいそうだ。

(駄目だ。痛すぎる、痛くて堪らない。意識が……)

痛みに慣れていないハロルドはただの一噛みですら意識を刈り取られそうになる。

勿論相手はただの犬ではないが、幾らなんでも虚弱すぎる。


「ハァッ……」

大きな溜め息と共に、ハロルドの耳には雷鳴にすら聴こえる“銃声”が響く。

刹那、頭を撃ち抜かれた魔犬は腕から牙を離し吹き飛んでいく。

(――レーネ……?)

銃口から真っ白な硝煙を上げ、その向こうでレーネは呆れきったような顔でリボルバー『モデル53』を片手で構えていた。


「なんで戻っちゃったんだろ。お陰で面倒が――」

もう一匹、魔犬が彼女に鋭い牙を見せながら飛び掛かった。

レーネはそのすらりと伸びた脚を振り上げ、飛び掛かる魔犬を真正面から蹴り飛ばす。

「――増えたじゃない。もう」

飛んでいった魔犬との距離を一気に詰めて、起き上がる前にレーネは胴体を踏みつけて五発の銃弾を頭部に叩き込んだ。


しかし、敵はまた増えていた。

犬だけではあるが、五匹だ。

全て、レーネに向けて威嚇している。

「おいで、ワンちゃん」

手招きしてレーネはモデル53を真上へと放り投げた。

すると、犬達は纏めてレーネへ向けて漆黒の体を走らせる。

だが彼女はあくまでも余裕だった。


次に弾薬の纏められたクリップを取り出して、モデル53と入れ替えるようにして放り投げ、拳銃をしっかりとキャッチ。

手馴れた手付きで弾倉を振り出して、空になった薬莢を草原に撒き散らし、降ってくるクリップに合わせて拳銃を握った右腕を振った。


六つの穴に綺麗に収まった弾薬は、クリップから切り離されて遠心力により弾倉と共に銃へと戻る。

「――おすわり」

ちゃき、と音を立てて撃鉄が起こされ、弾倉が回転した。




「――これ、どうしようかな」

魔犬を始末し終えた物騒なエルフ、レーネは虚弱な勇者ハロルドを見下ろす。

軽く蹴飛ばしてみても、反応がない。

気絶しているようだ。

(生きてはいるみたいだから、取り敢えず森まで連れていこうかな)

レーネは溜め息と共にリボルバーをくるくると回してホルスターに押し戻し、ハロルドの脚を両脇に抱えて引き摺っていくのだった――


エルフとは思えないエルフと、勇者に見えない勇者の戦いが今、始まった……

さて、二話目ですが本格的にスタートです。

ベタベタなRPG展開、ベタベタなタイトル中にあるのは異常なエルフに虚弱な勇者の凸凹コンビ。


十六夜的、銃器解説-参考までに編-


この世界での銃器は全て、ハロルドのいる大陸外から輸入されたものという設定になります。

モデル名は実銃に則したものですが、メーカーは有りません。

また、解説はメーカーからではなく銃自体のみとなります。


表記例

銃器名/銃器実在モデルメーカー+モデル名

使用弾薬:弾薬名

装填数:装填数(+1表記の場合は、薬室に一発入る)


モデル53/S&W Model.53

使用弾薬:.22ジェット

装填数:6発

口径は小さいが、弾速の速いマグナム弾を使用するリボルバー。

レーネの左腰に差してあり、抜刀するように引き抜ける。


レーネが持っているリボルバーで、装填出来る弾薬は6発。

銃身長は6インチと、比較的長め。

弾薬には『ジェット』と厳つい名前があるが、特にジェット推進する訳ではない。

弾速が速いが為にそう呼ばれるらしい。


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