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第一話『銃とエルフのミスマッチ』

酒場というのは、あまりに柄が悪い。

気弱な青年ハロルドにとって、そこは別世界にも程があった。


(無理だ。これは僕には話し掛けがたい! 適当になんか飲み物飲んで、一人で出掛けるしかない……)

ここに来てかれこれ一時間。

一応銅製の剣と盾はもらったが、なよなよとした彼を見て客達はハロルドを鼻で笑う。

『こんなヤツが勇者な訳無いだろ』と。

ハロルドは覚悟を決め、一人で出掛けようと最期になるかもしれないアルコール無しのジュースをかっくらい、店を出ようとテーブルを立つ。


『おじさーん! ワインね!』

がたりと音を立てて立ち上がった彼に合わせるかのように、一人の少女が酒場に入り込んできた。

見た目は16歳になるハロルドと大差はない。

代わりに、とても羞恥心があるとは思えない踊り子のような軽装に、長い耳がある。

(――エルフ? 嘘だろ?)

ハロルドがカウンターに腰かける少女を見て、心の中で呟いた。

この世界、人間以外にも様々な種族がいる。

その内一つが、エルフ族だ。

エルフ族の存在は長らく幻とされていた――いや、今も知る人は数少なく、見たと言っても信じる人間など居ない程だ。

だが、今彼の目の前にはそんなエルフの特徴に合致する若い少女が豪快にワインを呑んでいて、腰には少なくともハロルドの国にはない武器がぶら下がっている。

――拳銃だ。


エルフたちは歌声を使って怪我を癒したり、心を癒したり。

とにかく心が綺麗で、純真そのものであると言う。

(つまり、目の前にいるコイツはエルフじゃない。そうだそうだ)

そう、目の前の少女は伝記通りならばあまりに俗っぽすぎる。

彼が思うエルフは敬語で、優しいしゃべり方をする。

少女も肌は白く、よく引き締まった肢体を持ち声は透き通るように綺麗だが、やっているのは飲酒だ。

想像のエルフとはかけ離れていた。


『おぅい、レーネ! そこのボウヤがお仲間を捜してる! 行ってやったらどうだよ』

突如、酒場にいた客の一人からそんな言葉が飛んできた。

その瞬間、酒場の視線はハロルドに釘付けだ。


(何で僕に振るっすか!? 怖い、すっごく怖い!)

レーネと呼ばれた少女は、拳銃を抜いてくるくる回しながら歩み寄る。

ハロルドはいつ攻撃してくるのかと、内心ひやひやして仕方ない。

だが、逃げ出そうにも足が重りのように感じて動かなかった。

「ふーん? お供でも捜してるって訳ね。付いていっても良いけど――」

レーネはリボルバー式の拳銃から蓮根の様な弾倉を振りだして、酒瓶のような弾薬を落とす。

ことことと、軽い金属音が木の板を敷いた床から聴こえた。


彼女は床に落ちた弾薬から一つをつまみ上げ、再び弾倉に押し戻してからからと弾倉を空転させる。

「――試させてよ、貴方の度胸。これで三回、引き金を引いて当たらなかったら付いていく。三回引けなかったら付いていかないし、アタリを引いたら貴方は死んじゃうからね」

意地の悪そうな笑みを浮かべ、レーネはリボルバーをハロルドの手に握らせる。

(――何、この流れ)

リボルバーを受け取った彼の周りにいたギャラリーは、既にこのゲームでヒートアップしている。

早くやれだとか、そんな野次すら飛んでいる。


逃げるにも逃げようがなくなってしまったハロルド。

彼はよく判らないまま、命を賭ける羽目になった。

「と……とにかく、コイツを自分目掛けて引けば良いんだね?」


「うん」

ハロルドは拳銃など見たことはない。

自分の国は小さいし、そんな物で武装した兵もいない。

全員槍や剣、良くて弓だ。

いまいち、彼にはこのへんてこな武器の殺傷力が判らない。


(……まぁいいか。とにかくとっととやっちゃおう)

彼は躊躇うことなく、引き金を引く。

一回、二回、三回――いずれも撃鉄が弾薬を発火させる、撃針を叩く音だけで終わった。

「――へえ、あっさり引いたね。度胸あるじゃない」

リボルバーを返されたレーネは床に落ちた弾薬を再び弾倉に戻して、ハロルドに手を差し伸べる。

「いいよ、一緒に行ったげる! 名前は道すがら聞くから早く行こ?」

そうレーネは笑いながら言って、手を取ったハロルドを引っ張って酒場から飛び出すのだった――

お金も支払わずに……

一応銃器類はすべて実在モデルです。

ただそれだけ(笑)

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