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#人類は滅亡しやがりました   作者: 鴉野 兄貴
守護者を討て。
8/17

イチ〇ーのレーザービームで人類よ。滅亡してくれ

「ダイチ。『ネット恋愛』なる文化が判らぬ」


 不死身の魔王・沙玖夜さくや様はラノベを読むのが趣味だ。意外な趣味だなと俺様は思っている。


「インターネットの発展により、人間は恋文のみの遠隔恋愛をネットのチャットやメールのやり取りに置き換えたのさ。人類の文明のアダハナってヤツかな」

「ふむ」


「ネットの上のつきあいより、七夕の日はベッドの上で」


 沙玖夜は半眼で睨むと、半沸騰した純金製の『天の川』で俺様を溶解焼却した。


 旅は続く。

「おい。ピー助。停まれ」

 俺様はバイクのブレーキをかけて呟く。


「どうした? ダイチ?」

「ん? ホレ。沙玖夜さくや


 俺たちの頭上には満天の星空。星。また星。


 核戦争後の核の冬が到来した現在において、星が見えるなんてまずありえないのだが。

 ん? なにしたかって? まぁちょっと隣の魔王様を怒らせた程度? たいしたことはしてないよ?


「空に星が見えるな」


 そういって「だからどうした」と小首をかしげる魔王様。2000年生きている癖に、たまにたまらないほど可愛いしぐさを見せる。

「星が見えるだろ?」

「ああ」


 その瞳に映る星もまた美しい。


「エーデルワイス。3D画像を」


 携帯端末に宿る電子妖精が解説用の3D画像を出す。


「あれが『彦星』。ワシ座のアルタイル星。

 こっちが『織姫』。こと座一等星のベガ星。


 彦星は牛飼い。織姫は機織。

 二人はとても働き者だったのだが、恋にかまけて職務放棄した挙句に、天の神様に天の川の東西に分けられてしまうのさ」

「人間の生み出す伝説は時として事実を越えている」


 そう感想を漏らす沙玖夜。

 星明りに映る魔王様は星々に勝るほどに美しい。


「でも、結局二人を哀れんだ天の神様は一年に一回。

 七月七日だけ、に乗って会いにいっていいって許可を出すのだ」


「鵜には人は乗れない。そして許可を出すくらいなら最初から引き裂くな」


「まぁその通りだが。普通ならここでめでたし、めでたしなんだが」


 俺様はニヤリと笑う。


「この日に降る雨を催涙雨さいるいうと言う。

 一年に一度しか会えない二人が、天の川の氾濫で会えないことを知って流す涙と言われている」

「……」


 急に黙り込む魔王様をニヤニヤと笑って見つめる俺様。


「ちなみに、当日に雨が降る確率は滅びた我が祖国・日本だと53%といわれるが、この日は凄い勢いで『彦星爆発しろ』『織姫雨天オメwww』とかツイッターなどでツイートされまくったりする。てか、俺様もやったからな」

「ふむ。星が会うというのはありえないが」


 星明りで沙玖夜の頬が少し赤く見える。

 瞳に星を湛えてほほ笑みを漏らす彼女。

 最高にきれいだ。あ。星がな。照れ隠しだ。


「いやいや、『織姫』『彦星』が絶対喜んでいるって。よっ! 神様仏様ッ! 魔王様っ!」


 沙玖夜はちょっともじもじしていたが。


「まぁ、コイツを懲らしめる過程の偶然だが、由としよう」


 改めて天に向かって微笑む彼女。

 俺様はすかさず、沙玖夜の肩に腕をかけるべく。


 ……女人結界に阻まれて、崖下に転落した。


「私は星の恋人たちしか見ていない。私は何も見ていないぞ。阿呆は適当に這い上がって来い」


 沙玖夜の声が頭上から聴こえた。

 お前まおうはライオンの親かよっ?!


 旅は続く。話は変わる。


「ダイチ。墓医療とはなんだ」


 不死身の魔王、沙玖夜様はラノベがお好きだ。

 当然、素人投稿サイトの跡地も閲覧している。

 もっとも、ほとんど全てが人類滅亡により『未完』になっているのであまり見ないが。


「文脈から見て、『文章に破壊力がある』んじぇねぇか?」


 俺様の脳内保管。納得した素振りを見せる沙玖夜。


「そうか。人間は魔法を再習得したのだな」

「していない」


 この魔王さま。時々ボケる。そこが可愛いのだが彼女の照れ隠したるや百八本のダイヤソードで鱠切りなどぬるいレベルなので黙っている。


「では何故墓医療なのだ」


 小首をかしげる彼女に。


「たぶん。破壊力。アルファベットでHAKAIRYOKUのKをタイプミスしたまま変換して墓医療ってタイプをしてしまったのだろうさ。それより、メシ出来たぞ」


 髪の毛から作った合成醤油をかけてピンクスライム肉っぽい謎肉を味付け。フライパンを軽く返して感性。元移管しえ。もとい。完成。

 俺様、疲れているに違いない。


「何故誤字脱字はなくならないのだろうな」


「文豪でもやるぞ。まぁPCを使うようになって変換ミスやミスタイプの要素も加わったけど」


 腕一本で字を書くより、両手で行う打鍵のほうが速度が速い。故に頻度が上がったのは致し方ない。


 駄弁りながら食べているとすごいことを言いだす。


「私も小説を書いてみたい」

「誰が見る」


 エロ人工知能陣は喜んでみるかもしれないが、限度ってもんがある。


「……」


 顔を赤らめるな。赤らめるな。俺様に読ませる気か。


 数日後、彼女は本当に作品を書いてきた。

 見上げた魔王さまである。


「こ、これが自信作だッ!」

「……」


 顔を赤らめてキスできる位置にて感想を乞う彼女には悪いのだが。


「ど、どうだ。どう思う」


 ううむ。これは……そもそも小説とよんでいいのだろうか。

 なんと言うべきなのだろうか。

 はっきりいってダイヤソードは嫌だ。

 そうだ。これだ。


「トレビアーン」

「そ、そうか。よかった!!」


 当時のスラングなど知らない魔王様。

 原稿を豊かな胸に挟んで飛び上がらんばかりに喜ぶ彼女を尻目に、俺様は料理の続きを始めた。


 後日。

 俺は魔王様の努力家である面を失念していた。


『最も人気のある傾向の作品の問題点を全て無くした作品を作った』


 等と称して転生チートハーレムモノ100万文字のデータを渡された俺様は。泣いた。


「ツッコミどころが無いと感想貰い難いぞ。

 お互いプロで無い人間同士のコミュニティ用小説だからそこも共感ポイントだ」

「そ、そうか」


「可能な限り投稿前に誤字脱字は潰すが、指摘されたら感謝コメと共に即直すのが良い作者だろうな」

「ふむ」


 勿論、無いに越したことは無い。


「ところで」

「なんだ?」


 不思議そうに問う彼女。こういう顔していると可愛いのだが。


 俺さまは気づかず地雷に触れた。


「主人公の名前がお前の名前なのは偶然の一致と言うことにしておいてだ。

 ……このハーレム対象のダイチA ダイチB ダイチC ダイチD とはなんだ」


 虐殺が始まった。

 照れ隠しにしては激しすぎるので辞めてくれ。お願いします。



【独白】


 私の名前はキャプテンイチゴー。

 私はある日、謎の力を得てスーパーヒーローになった。貧弱だった肉体よさようなら。みよこの筋肉美。みよこの正義の鉄拳トンファーキック。

 究極のトンファー術が今日も邪悪に決まる。

 受けよ我が必殺のトンファービーム。

 今日も「トンファー関係ないっ!」と叫ぶ邪悪な博士操るロボを粉砕。

 ついでに呼びましょう。

 我が愛機「ガクテンソック」を。


「いけ!ガクテンソック!」


 牽引ビームで華麗に乗り込む。

 うなる必殺のマッハキック。


「マッハキックビーム!」

「うぎゃあああ!」


 こうして、地球の平和は今日も護られる。

 誰が呼んだかキャプテンイチゴー。

 正義のヒーローキャプテンイチゴー。


「……どうみてもチートなんだが」

「やぁ。君はぼくのファンだね。ではサインを。

 おお。すばらしいサムライソードだ。これは君のかね」


 彼は体調が悪いようだ。

 なぜなら私のサインを断るものなどこの世に存在しないからである。


「いや、サインはいらんのだが」

「謙虚だ。実に謙虚だ。サムライの国は謙虚を美徳とするという」


「え~とだ。壊れた街とか、巻き添えで死んだ人とかどうするんだ?」

「問題ない。ちゃんと皆逃げている。なぜなら私はヒーローだからね。誰も死なない殺させない」


 はあああああ。なぜかため息をつく男。


「……悪い。沙玖夜サクヤ。今日はリタイヤしたい」


 不思議なことを言うね。ぼくの名前はキャプテンイチゴーだよ?


「え? ふざけんな?

 無理無理無理。もう近づくだけでダメ」


 謙虚なサムライは去っていった。あれが戦士か。


 悪の博士のつくりしロボを打ち壊し打ち壊し、我は往く往くキャプテンイチゴー。


 ある日、首筋にちくっと痛みを感じた。


 ???


 おかしい。

 からだが。

 こえが。

 でな。


 これは

 おい

 いやこれはあのとき

 あのときにこんなことはなか

 あのときってなにを


「流石に人間体なら針は効くのか」


 良く解らん。なぜだ。なぜ動けん。


「氏ね。キモオタ」

「ガクテンソッ……」


 卑怯だ。ロボを呼ぶ前に攻撃などありえん!

 いやそもそも変身できぬヒーローを攻撃など!!??


「トンファービーム!」


「……」


 ビームを受けて消滅したはずの男。

 塵が集い血肉となり、ぼこぼこと波打って。

 再び男はその場に立った。



「トンファーブーメラン」


 トンファーが私の意志を受けて飛ぶ。男を打ちのめすが。


「もう耐えられん。死んでくれ。リア充」


 生身の私は剣を防ぐことは出来なかった。なぜだ。無敵の私がなぜ。


 いやだ。

 いやだ。

 おもいだしたくない。


「もうね。予想通りの部屋と言うか、なんと言うか」


 男が肩を落としている。


 私の筋肉!?

 私の美しい身体はどうしたのだっ!!?

 なぜもとのブヨブヨに戻っている!!??


「さっさと死ね」

「まてっ! 私が一番この世でロボを自在に動かせるのだ……ぞっ??!」


 血の花が咲いた。たぶん私の血なのだろう。

 私の名前はキャプテンイチゴー。無敵のヒーロー。


 だった。


 はずだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 討伐守護者サーバーDATA『憤怒(正義)』守護者サーバー「キャプテンイチゴー」&「ガクテンソック」


本体ハード

 巨大な遊園地跡地。


コア

「キャプテンイチゴー」(本名不明)


 国策で作成された血液製剤の所為で不治の性病と内臓病を発病。

 その後、国家を相手に訴訟団を率いて戦い、中心人物となる。

 趣味はロボットアニメの観賞であり、ヒーローの活躍を見て勇気を奮い、最後まで戦い抜く。

 夢は『愛する妻を娶り、天から授かった自分の子を優しく抱きたい』だった。享年38歳。

【役割】

「無敵のヒーロー」……(DATA LOST)


予備バックアップ

「ガクテンソック」(本名不明)

 訴訟団の選任弁護士。家族を暗殺されながらも国を相手に戦い抜く。享年52歳。

【役割】

「ヒーローのロボット」……(DATA LOST)


悪役ヒール

「グリンハーツ」(本名不明)

 国策会社の最高責任者。訴訟団の家族を暗殺し恐喝を繰り返した。

 最後まで責任を取ろうとせず、部下に押し付けて逃げ延びた。享年72歳。

【役割】

「マヌケな悪の天才科学者」……(DATA LOST)

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