呼吸困難
あぁ、苦しいなぁ。胸を掻き毟りたいぐらいに。
生命活動であるはずの呼吸がすでに辛くて。息を吸うたびに肺が悲痛な叫びをあげる。
目の前に転がる半壊した音楽プレイヤー。そこから漏れ聞こえる音楽を、止める気力すらなくて。
ただ寝ころんだアスファルトから伝わる、無機質な温度に体を任せる。僕の周りだけ赤色に染まっている。
どこかから聞こえる救急車のサイレン。はずれたイヤホンに手を伸ばすのも辛いから、BGM代わりにしてしまおう。
あぁ、悔しいな。涙はもう枯れて、流れない。
どうして僕は、無様に地面に這い蹲っているんだろう。もう少しで、空に届いたはずなのに。
禁忌を犯したと神様は、僕のありもしない両翼をもぎ取っていってしまったんだ。
ただ、落ちていくだけの世界。反転した灰色の世界。音楽プレイヤーが叩き付けられて半壊した。
息が詰まる。息をしようとすれば、するだけ。生きていても同じだったけど。
終わりに向かう世界の中、それでも体は必死で息をしようとする。
そうしなければ、死んでしまうから。
でも、僕は。
悔いはないと、笑った。
飛び降りは即死だった気がしなくもないですが。




