とある兄姉の相互監視
何か思いついたので書いてみました、けどそれっぽくない気がする。
今回小ネタはあまり入ってません、メリーさんほど思いつかなかったです。
言葉遣いについては習うより慣れろということで、厳しくお願いします。
けど出来れば鞭と飴両方ほしいです。
誤字脱字、修正しました。一応全部チェックしましたが、まだありましたら報告お願いします。
俺達兄妹は周りから可笑しいぐらい仲が良い、恋人みたいだ、ていうか結婚しとけ。とか言われるが特別仲が良いわけではない。
確かにその辺の糞兄貴だとか、寄るな豚だとか、死ねとか言う妹を見ているとかなり仲が良い方だと思うが、あの手の兄妹はそもそも論外だ。
とまあとりわけ仲が良いわけでは決して無い、俺達兄妹の朝は大抵が妹のモーニングコールから始まる。
「叶、起きなさい。って今日は起きてるのね、ご飯できてるよ」
「おう、おはよう。祈」
俺の双子の妹である祈は俺よりも随分と早起きだ、その理由は夜遅くまで働く母さんに代わり朝食と弁当を作っている為。
朝食は割とシンプルで基本的に食パンと何か一品、家の家族はそろいもそろって朝食は控えめ派なので意外とコレで足りる。
今日は刻みネギを混ぜ込んだスクランブルエッグだった、よくかき混ぜられた玉子の黄色にネギの緑がちらほらと見える。
基本的に我が家では玉子料理に限って味の好みがまちまちなので味付けされておらず、それぞれ好みに合わせて調味料を後から加えるようにしてある。
祈はシンプルに塩を振りかけているが、俺はあえてマーガリンとオーロラソースを軽く塗ったトーストにスクランブルエッグを乗せる食べ方を推す。
「ちょっと、行儀が悪いわよ。口の端にマヨケチャついてるし」
マヨケチャではなく、格式高くオーロラソースと言うべきだ。
口では謝りながらそんな事を思うが、無論口に出す愚は冒さない。
スクランブルエッグは半熟だが、焼き立てのため汁っ気が少なくふんわりとしたやわらかさがある。
トーストに塗られたマーガリンの油がそのやわらかさを包み、オーロラソースが絶妙な味わいを付け加える。
そして若干口の中に残るマヨネーズなどの匂いをネギの青臭さが纏めて消し去る、当たり前のように美味い。
「ほら、いつまで食べてんの。さっさといかないと遅刻するわよ」
少しぐらいは悦に浸らしてくれても良いと思う。
2人そろって登校路を歩くが基本的に俺達の会話は食べ物に終始する。
どこの何が美味いとか、あそこは全般的にダメだとか、味付けに若干好みの違いはあれど基本的に好き嫌いも一致する為、新しい店の開拓は2人手分けする事になっている。
食事の話題が頻繁に出るという事は、当然それに付随する問題も3ヶ月に一度前後出るものだ。
「祈、さっきから俺に喋らせないよう必死なのは分かるがあえて言うぞ。お前食いすぎただろ」
「う゛、やっぱり分かる?」
「当然だ、何年兄妹やってると思ってる。しばらくは食い歩き控えろよ、俺のために」
「わかったわよ、仕返しは食らいたくないからね。ご飯は食べたいけど」
家で普通に食べる分には構わないが、食べ歩きは控えて貰う事にした。
かわいそうだが本人だけの問題ではないのだ。というかこれで何回目だ、そろそろ学習してほしい。
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私達姉弟に周りは結婚しとけだの、気持ち悪いぐらい仲が良いだの言うが、実際の所それなりに仲が良い姉弟程度だと思う。
確かに友達の兄の話を聞いているとかなり仲が良いのかもしれないが、その友達の兄が論外すぎるだけだ。
正直私でもその兄ならサンドバックにする自信がある。
だけど私が姉だ、それだけは絶対に譲れない。
「どうしたの祈、また食べ歩き禁止された?」
「自業自得なんだけどね、今日は遊ぶ気にもなれないし直帰かな」
里芽は数少ない私達の体質を知る友達で、昼食は大抵一緒に食べる。
弁当の中身を交換して味を聞いたりするのも良くある事だ、無愛想だがしっかりと意見してくれるのは台所の主として嬉しい。
弁当は小さい野菜の天ぷらが幾つかとから揚げが1つ、ご飯とおかずの割合が7:3という世のお母さん方が羨ましがる構成だ。
私も叶も少量のおかずでご飯を大量に食べるので、おかずによってはコレでもご飯が少なかったりする。
私は普通の塩派だが弟は抹茶塩か梅塩派で、たまには用意してやろうという事で塩は別の小容器に入れてある、だからこのまま食べると少々味気ない。
「相変わらずご飯の量が多い、ご飯に乗っかってるのも梅干の切り身がちょっとだし」
実はそれも置く場所が無かったから乗ってるだけで、実際は最後の口直し用だったりするのだが。
ともあれから揚げを半分と天ぷら幾つかを渡し、切干大根とピカタを半切れ貰う。
里芽の家の切干大根は味が若干薄めで、煮込み時間が短めなのか大根が若干硬めだ。
煮物は母親も本人も苦手だと言っていたから、現在練習中といった所か。
ピカタは鳥の胸肉で微妙に香るオリーブオイルが食欲をそそる、きっといいオリーブオイルを使っているのだろう。
鳥自体にも味付けされているが薄めで、別に用意していたらしいケチャップを少量かけると実に良い味を出してくれた。
オリーブオイルの香りが飛ぶのが少し残念だが、冷たい弁当では少々味を濃くした所で大差は生まれない。
弁当用に別で作り、ケチャップを生かす味付けにしたのは明白だった。
「煮物は冷ます時に味が染みてくから、ゆっくり長めに煮込んで、冷ます時は更に長めにすると良いと思うよ。ピカタは美味しかった、高めのオリーブオイル使ってるの?」
「から揚げの皮がちょっとべた付いてる、油切りが足りないのかしら。天ぷらは美味しかったわ」
そんな風に意見交換するのもちょっとした楽しみだ。
下校時間になると自然と正門に向かってしまう、それが私の普段の行動原理を表しているわけだが今日からしばらくはダメなのだ。
帰宅する為の最短ルートである校門へ歩いていると弟の姿が見えた。
「叶ー!今帰り?」
「おう、祈を待ってた。ちゃんと直帰するんだなえらいぞ、もし歩き食いしてたら運動もせずやけ食いしてる所だ」
「怖い事言わないでよ、叶が動かなきゃ私が太る一方じゃない」
「祈のせいで俺はちょっと太ったけどな」
そういうことだ。私が食べれば叶が太り、私が動けば叶が痩せる。
逆もまた然りで叶が食べると私が太り、叶が動けば私が痩せる。
しかし筋肉は本人が運動しなければつかないという謎仕様、神様は一体私達で何がしたいのだか。
だから私達は特別仲が良いわけじゃない、お互いを牽制し、気にし合い、機嫌を取る事で自分が致命的に体型を崩さないようにしてるのだ。
結果的に仲の良い姉弟ではあるが、そんな理由が先にあるので特別仲が良いという自覚は持てない。
「いじわる」
「俺は結構気にしてやってるんだぜ?祈は女だしな。そうだ、今から市民プールでも行って運動するか」
「叶の奢り?」
「当然、祈の奢りだ」
「いじわる!」
けどまあ、こんな関係は嫌いじゃない。
今回も一応解説、必要ないと思いますけど。これ結構たのしいのでやります。
兄と姉 →
兄が叶、姉が祈。祈った後に叶うから姉が本当、兄は実は弟
オーロラソース →
今回のは日本風、ケチャップとマヨネーズを混ぜ合わせたもの。個人的に若干ケチャップを多めにしたのが好み
7:3 →
高校時代の私の弁当比率、8:2の時もあったけど十分だった
ピカタ →
鳥の胸肉などに塩コショウで下味をつけ、小麦粉を少量振りかけて解き玉子を塗って焼くだけのお手軽料理。弱火でじっくり焼かないと玉子が焦げたり鳥に火が入りきらなかったりするので注意
オリーブオイル →
安いのは臭いのが多いらしい、良い品はとても良い香りがするらしい。聞いた話ですが
切干大根 →
揚げと人参と切干大根の煮物、私の大好物。味はご飯が無いなら薄め、あるなら濃いめと作り分けたい
料理に関するうんちく →
基本的に信じてはダメ、半分ぐらいが妄想で残りもうろ覚え知識
以上。料理のうんちくは絶対信じないでください、後が怖いので。