わたしとにいさま達
大変遅くなってすみません!!
ほんとにすみません!
わたしにはにいさまが5人いて、今はみんな王都にいる。
にいさま達は良くも悪くもキャラが濃い。
流石美形のかあさまととうさまの子だけあって美男子ばかりだけど、キャラが濃くて台無しになってると思う。でも、王都じゃモテモテなんだって… 世の中やっぱ顔がいいと特だ。
そんなにいさま達の休みが見事揃って全員が家に帰って来ると毎回いろいろ凄いことになる……
タッタッタッ。
いつもと同じように朝ご飯を食べるために階段を下りて食堂に向かった。
今日は起きた時に何か嫌な悪寒がした。
いや、寒いからじゃないよ?春先だから偶にまだ寒い朝だったりするけど、今日は青空が広がって太陽がポカポカと照らしてて暖かったし。
だから、きっとこれは何か起きる気がするんだよね…… これまでの経験上こういうのって嫌になるほどあたるんだよ……
考えながら歩いてると食堂から若い男性の話し声が聞こえてきた。
ん?
まだ、開店前なのにもうお客さんが来てるのかな?
とうさまとかあさまは、きっちりしてるようで所々適当だったりする。お客さんが開店前に来ても何もなかったら入れるし、逆に色々忙しかったら開店時間が来ても店をあけなかったりなどなどマイペースにやっている。
まあ、こんな田舎だから大丈夫だけど街だったらクレームが沢山来てるかも……
今日は珍しく寝癖もなくてお客さんの前に出ても大丈夫だと思ったので、わたしはそのまま話し声が聞こえる食堂に向かった。
後の祭りだけど、食堂よりかあさまがいる調理場に行けば良かったと激しく後悔した…
食堂の扉を開けて見えた光景に一瞬固まったけど、わたしは中にいる人達が反応する前に素早く扉を閉めた。
な、なんでいるの?!
…今日ってまだ平日だよ!仕事や学校があるよね?!
ドアノブを無意識に掴んだまま心の中で絶叫してると、閉まっていた扉が開けられた。
ドアノブを掴んだままだったわたしは扉を開けた人に倒れた。扉を開けた人は倒れこんできたわたしを難なく受け止めてそのまま抱き上げた。
「……」
「………お、おはよう?」
「……」
逃げようとしたわたしを捕獲したのはレンにいさまだった。
ただじっと見つめてくるレンにいさまに、可愛くみえるように首を少し傾げながら挨拶をする。
この仕草は、とうさまとかあさまのDNAを受け継いで美形に生まれたからこそできるものだ。
前世だったら絶対に無理。だって平凡だったし……
でも、あの人は可愛いって云ってくれたなぁ…
「…なぜ、逃げようとした?」
「えぇ~と……」
に、にいさま達が全員揃ってるからなんて云えない……
「俺達が嫌いなのか……?」
いや、そんな捨てられた子犬のような眼をしなくても?!
しょぼんと垂れてる犬の耳も幻想だけど、見えるんですけど!
「にいさま達を嫌いになることはないよ!大好きだよ!」
……全員揃うと厄介だから避けたいけど。
「そうか…」
レンにいさまぎゅっとわたしを抱きしめて、わたしもにいさまの首に腕を回して抱き返した。
小さい時から暇ならかあさまに抱きついてるとうさまを見てきた影響か、にいさま達も抱きつき癖が付いてる。
でも、にいさま達が抱きつくのって、わたしだけなんだよね。かあなまやとうさま、にいさま達同士でやってるの見たことないや。
「いつまで、リーナを独り占めするきだ?!」
「…ほぇ?!」
声がしたと思ったら、レンにいさまじゃないもっと逞しい腕の抱きしめられた。
見上げると、眉間に皺を寄せて不機嫌な顔のダルにいさまだった。
「…俺とリーナの邪魔しないで下さい。燃やしますよ?」
……はい?
レンにいさま、殺気が恐いです……
「おお?やれるもんならやってみろよ。まあ、できるもんならな…?」
ダルにいさま、挑発するのやめて…
てか、5歳も年下でまだ学生のレンにいさまが近衛騎士のダルにいさまに勝てないのわかってるわけないのわかってるくせに……
二人の殺気が辺りに広がっていく。
レンにいさまいつの間にかどこかから取り出した杖を構えて呪文を唱え始めて、わたしを利き手の左手に座らせる感じで抱きながらダルにいさまは、そんなレンにいさまを口元に笑みを浮かべ右手で剣を抜いた。
「二人とも何してるのさ?」
「リーナに怪我させるつもり?それなら、僕たちも黙ってないけど…?」
声がした方に振り向くと、テルにいさまとセルにいさまが笑って立っていた。
「テルにいさま、その氷の塊はなに?セルにいさま、にいさまの剣に電気が帯びてる気がするんだけど……」
わたしの質問に意味深げな笑みで答えた。
中性的な美形だけにその暗い笑みは悪魔の微笑みで、思はずダルにいさまの服をぎゅっと握り締めてしまった。
や、やばい!!
キレかけてる!
サーと辺りの温度が下がっていくのを感じた。
レンにいさまも唱えるのをやめていて、ダルにいさまの余裕綽々だった口元も引きつっていた。
「ほら、頭に血が上ってるみたいだから冷やしてあげようと思ってね」
「ほら、リーナが傷つけないように痺れさせて動けなくしようと思ってね」
そんな大きな氷の塊をぶつけたら、冷えるだけじゃすまないと思うんだけど、テルにいさま?!
剣で斬り付けられたら、痺れるだけじゃないよ、セルにいさま?!
「お、落ち着けって!俺らがリーナを傷つけるわけないだろ?!」
「わかんないよ?」
「ダルにいさんは変な所でへまするし、」
「レンは首席と云え、まだ学生だしね」
ダルにいさま逃げ腰で、レンにいさまは二人の言う通りなので反論できなくてぶすっと不貞腐れてる。
この場合って、わたしがどうにかした方がいいのかなぁ?
このままだとレンにいさま大丈夫だと思うけど、ダルにいさまがやばいことになりそう……
この家の総合的にみた力関係って、かあさま>>>>とうさま>>>ダルにいさま>テルにいさま・セルにいさま>>レンにいさま>リューにいさま>>わたしだけど、テルにいさまとセルにさまがタッグを組むとダルにいさまも勝てないんだよね。
ダルにいさまも近衛騎士になるくらいだから強いんだけど、双子の神秘で相乗効果で一人の時より何倍も強くなるから二人同時に相手すると勝てない。
テルにいさまとセルにいさまって、ケンカしててもどっちかが危なくなったら助けに行くんだよね。
何とかして勝とうとして、ケンカ中を狙ってダルにいさまも挑んだみたいだけど最後の最後に駈けつけて来られて負けてたらしい。
というわけで、今まで一回もダルにいさまはテルにいさまとセルにいさまに勝ったことがない。
「わたし、久しぶりににいさま達みんな揃ったから、みんなで仲良く一緒にごはん食べたいなぁ…… だめ…?」
本日二度目の首を傾げて見上げる仕草。眼を潤ませるオマケ付き!
「「「「うっ!」」」」
「?」
…えーと、どうしたの?!
みんな一斉に顔背けないでよ!しかも手で顔を覆いながらっ!
本当に涙が浮かんで来て、恥ずかしくて隠すようにダルにいさまの肩口に顔を押し付けてぐりぐりした。
やってから気づいたけど、ダルにいさまが今着てる服って近衛騎士の服だ。
「リ、リーナ?!」
ダルにいさまの焦ってる声と、慰めるように誰かが頭を優しく撫でてきた。
でも、気にするか!
乙女?を泣かせた罰で、わたしの涙でぐちょぐちょにしてやるっ!
あの仕草は地味にわたしもダメージをうけるんだい!
この時、わたしは気づいていなかった。
にいさま達が顔を手で覆って背けたのは、わたしの仕草で出そうになった鼻血が出ないように抑えるためだったということに……
「リーナ、泣き止んで!」
「一緒にご飯食べよう!」
「俺らが悪かった!今日はもうケンカしないから、泣き止んでくれ!」
「もう、(今日は)剣抜かない」
慰めながら、ぐりぐりと顔を押し付けて甘えてる?わたしに可愛いと萌ていることも知らなかった。
テルにいさまとセルにいさま、レンにいさまが、わたしに甘えられて戸惑いながらも鼻の下を伸ばして喜んでいるダルにいさまに今夜闇討ちを仕掛けに行こうと考えていたことも…
わたしが回復して顔を上げたのは、にいさま達が慰め初めてから15分後だった。
忘れていた。
起きた時に感じた嫌な悪寒を……
幸せの時間は理不尽にも唐突に失ってしまうことを……
密かに、だけど着実に運命は動き出していた
カメ以上に遅くてすみません……
今後、頑張っていきたいと思ってます!
これからも読んで下さると嬉しいです<(_ _)>
∮今回の補足∮
リーナの考えの家族内の力関係は本編の通りですが実際は以下の感じです。
レティーツィア(かあさま)>>リーナ>>とうさま>>>ダリウス(ダルにいさま)>アンテルム(テルにいさま)・アンセルム(セルにいさま)>>フローレン(レンにいさま)>リュドヴィック(リューにいさま)
です。
レティーツィアは最強ですね、はい。
魔力とかだけならシルヴァンなんですが、レティーツィアを溺愛してるので勝てる日はないと思います。
リーナはアイドルなので、みんなメロメロです。
本人は自覚なしですが…
唯一勝てるのは、母親だけだと思います。
リーナ以外の子供にはシルヴァンは厳しいです。
決して、嫌っているわけではないですよ。リーナと同様に愛しています。
でも、男の子なので厳しいです。
兄弟達もケンカしまくりですが、大切に思っています。
まとめ:とっても仲がいい家族です!