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転生した元勇者の物語  作者: 紅柴の月希
第1章 わたしの日常
7/9

わたしととうさまの出会い


 大変お待たせしました(/_;)

 読んで下さってる方、お気に入りに登録して下さった方、評価して下さった方、ホントすみませんでした。

 

 楽しんで読んで頂けると嬉しいです<(_ _)>


 甘くておいしい//


 今わたしはディオンと並んで泉に脚をつけて、風の精霊に取ってきてくれた果物を食べている。

 わたしが食べてるこの果物は形はブドウに似てるけど、色と味は全く違ってて、皮の色は真っ青で実が真っ赤という何とも不気味で不味そうなのに、イチゴに似た味がして甘くておいしかったりする。

 

 そうそう、精霊の長の中で人の一般常識と価値観を理解してる光の精霊の長・アルテミシアに聞いて知ったんだけど、この果物ってとても珍しもので上流階級の人達しか手に入れることができないくらい高いものなんだって。なんと、わたしが今いる国の一般階級の人の収入3ヶ月分!


 そんなのを毎回来るたびに食べてるわたしって……


「はぁ…」

「ん?どうしたの?」

「…いやね、この果物を週何回も食べてることがばれたら面倒なことになるなぁ…って思ってね。もう、面倒なことに巻き込まれるのは嫌だし……」

「リーナ…… 心配ないですよ。貴女のことが人間にばれることはないです。僕たちが口を滑らすことは絶対ありませんし、最近の人間の中に魂を判別することができる者は一人しかいません」

「そうなの? ……それって、もしかして………」


 わたしの頭の中に彼の顔が浮かんだ。


「彼ですよ」

「…やっぱり……」


 そうだよね…

 出会ったときから、色々人間離れしてたし。魂を判別することができても不思議じゃない。


「本当に彼は凄いですよ… 人間であれ程の魔力を持っていますし、自らの力のみで下級精霊を視覚に捉えることができますしね。それに、僕たちがあらゆる手段を使って隠してたリーナが転生したことに気づきました」

「……え?!」


 驚きで手に持っていた食べかけの果物を泉に落としてしまった。普段なら持ったいないから急いで拾うんだけど、あまりの衝撃でそのままわたしはディオンを凝視したまま固まった。


 …………彼が……気づいた…?


「ほ、ほんとに…?」

「本当です。彼が貴女が転生したことに気づいたのは、貴女が記憶を取り戻した日です。あの時、貴女の魔力が一瞬盛大に放たれたので、王都にいる彼も感知することができたんでしょう。まあ、一瞬の出来事だったので、場所まで特定することができなかったみたいですけど」

「それなら、よかった……」


 わたしはほっと胸をなでおろした。でも、胸の奥が小さく疼いた…


 彼に気づかれたのは予想外だ。

 だって、ここは王都から結構離れてるから彼や他の私と面識がある人達が訪れることはまずない。国境を超えることがあっても彼らは上流階級の人達だから転移塔を使って移動するし。


「しかし、王直属の隠密隊を動かして探してはいるみたいですよ」

「……よくないじゃん…」

「ええ。本当に鬱陶しいです。この前なんて無謀にもレヴァンを尾行しようとしていましたね。まあ、失敗してましたけど……」


 無謀だね……

 中級クラスの精霊を尾行しても成功するのは稀なのに… 精霊の長なんて確実に人間には無理。もし成功したとしても、それは精霊が気づいていて放置したからとかだし。


「でも、これからは少し気を付けた方がいいかな?ディオン達のせいで居場所がばれることはまずないと思うけど、どんなことがヒントになるかわかんないし。それに、とうさまがいるしね………」

「そうですね。彼は、元宮廷魔術師で彼の幼馴染ですからね」



 とうさまは彼の幼馴染。






 わたしが前世でとうさまと出会ったのは、勇者だったわたしを確認しに来た彼の護衛としてついて来たから。会って間もない頃のとうさまは、今と違って感情がない人形のように無表情で、喋るのも彼やもう一人の護衛の幼馴染の騎士だけだった。とうさまにとってはわたしは存在していないもので、話し掛けられることも目を合わせることもなかった。

 まあ、わたしもそのことをを気にすることはなくて、逆に構われなくてほっとしてたかな?あのころはもう傷つくのが嫌だったから、こっちの世界に信じられる人はいないと思い込んでいたし。


 でも彼に救われた後は気になり始めて、そして気が付いた。


 彼に救われる前の自分と同じということに。傷つくことを恐れて自分だけの世界に閉じ籠っていることに……


 わたしは、返事を返してもらえなくても何度も話し掛けたし、無理やり彼の隣に座ってご飯を食べたりした。

 最初の頃は無視されて避けられた。

 でも、時間が経つにつれて喋ることはなかったけど避けられることはなくなった。わたしが隣に座ってもすぐに席を立って離れずに一緒に食べてくれて、わたしの話す話に相槌を打ってくれた。



 そんなある日、いつも通り魔物を討伐した後に起こった。

 この日は、いつもより魔物が多くて倒すのに手間取っていた。戦っているのはわたしと彼の仲間だけで、わたしの護衛(監視)として付いてきている騎士達は何もしないでわたしの後ろで見ているだけだった。騎士達は勇者であるわたしが自分達を守るのは当たり前だと考えていた。


 わたしも習慣になっていて騎士達を背後に庇って戦っていた。

 2匹の魔物が同時に襲ってきて、片方の魔物の心臓に剣を突き立てて仕留めたその隙を付いてもう1匹が騎士達に襲いかかった。そして、わたしが急いで駆け付け仕留めた時には騎士の一人が腕を傷付けられていた。

 幸いにも傷は浅くて大したことはなかったが、騎士の一人は彼と魔物の処理をしていたわたしを無理やり引き離し森の奥に引っ張って行き怒鳴り散らした。


「浅かったから良かったが、死んだらどうしてくれるんだ!あんたは俺たちを助けるためにここにいることがわかっているのか!?」

「……」

「あぁ?なんだその眼は?あんたは黙って俺たちを守っていればいいんだよっ!!」

「……っ!」


 今まで従順に従ってきたわたしが反抗的な眼を向けたことが気に入らなかったのか、右頬を容赦なく殴られた。そのせいで口の中が切れたのか血が口から垂れてきた。

 無言で血を拭って、冷めた眼で見た。昔なら怯えていただろうけど、彼に出会ってから色々取り戻すことができたからもう怖くはなかった。

 

 怯えなかったわたしが気に食わなかったのかもう一回殴り掛かってきた。


「そんな眼を向けんじゃねえっ!………っ!?」


 わたしの頬に当たるはずだった拳が寸前のところで止められていた。

 止めた手の持ち主の顔確かめるように見上げた。


「……消えろ」


 ぼそりと呟かれたその一言に秘められた怒りに戦いた騎士は、すごい速さで逃げて行った。


「助けてくれてありがとう、シルヴァン」

「……」


 助けてくれたのはとうさまだった。


 とうさまは無言でわたしの腕を掴み近くの岩場に連れて行って、座らせると頬に手を添えてきた。頬がぽーと暖くなり、暖かさがなくなると今まであった痛みのなくなった。

 治癒魔法で頬の痛みを取ってくれた。


「ありがとう」

「…………どうして抵抗しない?」


 ぽつりととうさまが呟いた。


「……諦めてしまったからかな?」


 微苦笑を浮かべる。

 とうさまは無音で続きを問いかけてきた。 

 

 ……云ってもいいの…かな?

 だって、今までこんなことを訊かれたことないし。彼にだって話していない……


 わたしの心の闇のことだから


 でも、とうさまは続きを云えと見つめてくる。


 こんなにとうさまと見つめたのは初めてかも…


「……………意味がなかったから。わたしだって最初から抵抗しなかったわけじゃないよ。でも、わたしが泣こうが喚こうがやめるてくれたことは一度もなかった… それどころかエスカレートして、もっと暴力を振るわれた。抵抗された方が燃えるとかいう奴も中にはいたんだ」

「誰?」

「…あの国の宰相。こっちに来たばかりの頃は元の世界に帰りたくて暴れたりしたからね。シルヴァン達には悪いけどこの世界がどうなろうが関係ないのとか、なんでわたしが魔王なんて倒さないといけないのとか考えてたし。まあ、そんな感じだったからぼろぼろになるまで色々やられてさ」

「……」


 無表情なのに辛そうな風に見えて、そっととうさまの髪を撫でた。


「そんな時、抵抗する気力が無くなって何もしなかったら酷いことされなかったんだ。それからかな、抵抗しなくなったのは…… てか、感情を捨てたのは… そうしないと自分を守れなかったから……… 弱かったんだ」

「そんなことない。お前は強いよ。弱いのは僕だ…」


 とうさまがわたしに自分のことを話してくれたのはこの時が初めてだった。

 


 魔力が強すぎるとうさまは小さい頃から人の心を読むことができたらしい。今みたいに上手く魔力をコントロールすることができなかった頃は、誰彼かまわず心を読んでしまって化け物と呼ばれたりして気味悪がられた。そう、実の親にさえ……

 それから、感情を出すことをやめ喋らなくなった。そんなとうさまを助けたのは彼やもう一人の騎士の幼馴染だった。2人はとうさまを怖がることはなくて、心を読まれても笑ってすました。

 でも、成長してコントロールができるようになってもとうさまのことを知る人は怖がって近寄ることはなかった。


 とうさまはまるで人事のように淡々と話した。

 でも、わたしはとうさまが傷ついていることも、悲しんでいることもわかった。わたしの手を握るとうさまの手が微かに震えていたから。


 その後、彼が探しに来るまで小さい頃の思い出やわたしの家族について、魔法について、わたしの世界についてとかを話した。

 移動中や食事の時、休憩などで今までのとうさまが嘘のように表情豊かに沢山喋るようになった。



 とうさまは大切な友人になった。

 あの国から助けてもらった後、わたしにかけられた呪いに気づいた時も彼には知られたくないという気持ちを汲んでくれて黙っていてくれた。とうさまがとても苦しむことはわかっていたけど、頼んでしまった。

 死ぬことになるあのパーティーの日、会うのが最後になるとは思っていなかったから約束してしまった。それが、あれほどの深いキズとなるとは思わなかった……



《僕が絶対リンの呪いを解くから、生きて下さい》





 わたしは久しぶりにとうさまの出会いを思い出した。

 あの時の約束は果たすことはできなかった。あの約束はとうさまがわたしが死にたいと思ったことに気づいたから持ちかけてきた。


 わたしが死ぬことを諦めることを願っての、優しくて哀しい約束…


「リーナ、もう一つ知らせがあるんですが聞きますか?」

「…?」

「貴女の詮索のためにシルヴァンを王都へ呼び戻すことが決まったそうですよ」

「え…?」


 ちょっと待って。

 シルヴァンはとうさまで、とうさまが王都に戻る=わたしも王都に行くってことだよね?

 王都に行ったら王様に挨拶しに行かないといけないから=彼に挨拶で、わたしの魂がわかる彼に会うってことは彼にわたしのことがばれるってことじゃん?!


「ええぇぇぇ?!!」


 静かな森の中にわたしの叫び声はよく響いた…


 なんかこれから大変な日々が続く予感。

 わたしの人生に平穏とか、安らぎって少なくないですか?!




 そんな頭を抱えて悩むわたしを精霊達は暖かい眼差しで見守っていました。

 






 明日にもう一回投稿できたらいいなぁと頑張っています。


 次は兄達との話か、入れずに王都に行く話か迷っていますが書き上げたいと思います。

 『彼』もいい加減名前を出して上げたいとも思っています。


 色々書きたくて頭の中ゴチャゴチャしてますが、頑張ります。


 これからも応援よろしくお願いします(^o^)/

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