わたしと、とうさまと、かあさま 1
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わたしは8時ぐらいに起きる。起きると、にいさま達がいない時は一緒に寝てるかあさまはもう起きていて、今日一日の下準備をしている。
まだ体が小さいのと寝るのが好きだから早起きができない。
わたしの家は二階建てで、二階は住居で一階で昼はレストランで夜は酒場をやってるんだ。レストランは結構人気で常連客も多いし、わざわざこんな森の中の田舎の村まで食べに来てくれる人もいる。最近は、村の人以外は予約を取るようになった。
着替えて、顔を洗ってからご飯を食べるために下に降りると、調理場を覗くとかあさまが野菜を切っていた。
「おはようございます、かあさま」
「おはよう、リーナ」
かあさまは庖丁を置いて、エプロンで手を拭きながら寄ってきて、わたしの髪を撫でた。
「ふふ、今日はいつもより寝癖がひどいわね。ちょっと待ってなさい、今蒸しタオル準備してくるわ」
タオルを取りに行くためにかあさまは二階に上がって行ったので、一先ずわたしは調理室から出て鏡がある洗面所に向かった。
洗面台は家族みんな大きいから、一般の家庭より大きく造られている。小さいわたしは洗面台の横に置いてあるわたし専用の台に乗らないと使えない。
洗面台まで持って来て台に乗って、鏡をみる。
うわぁ、ホントにひどいや。爆発してるよ……
かあさまに似たのは嬉しいけど、細いしやわらかいからよく絡まるし、寝癖が毎日できちゃうんだよね。
鏡を見て爆発してるところを何とかしようと手で梳いてみようとするけど、引っ掛かって痛いだけだった。
悔しくてがんばって手ですいてると、暖かく湿ったタオルが乗せられた。
「痛いだけだからやめときなさい。後で梳いてあげるから、タオル落とさないように座ってなさい」
「うん。ありがとう、かあさま」
「どういたしまして。さあ、朝ご飯食べましょうか?シルヴァンももうそろそろ戻ってきますしね」
かあさまに抱っこされてそのままカウンターの席まで連れてかれた。5歳にしては小さいわたしはよく家族に抱っこされる。
昔の記憶を思い出した最初の頃は恥ずかしくて抵抗してたけど、今はもう慣れてされるがままにしてる。小さい今だけで大きくなったできないし、王都に住んでるにいさま達とのスキンシップだしね。
わたしの家族はみんな大きい。
とうさまは185㎝だし、かあさまも女性にしては大きくて175㎝はある。
だから、にいさま達も大きい。一番大きいのはダルにいさまで、とうさまより大きく191㎝。
二番目はレンにいさまで182㎝で、双子のテルにいさもまとセルにいさまは二人揃って179㎝。テルにいさまとセルにいさまは、弟のレンにいさまに背を抜かされて悔しいらしくて、この前帰ってきたときに練習相手にしてボコッていた。学生相手に大人げなかった…
最後に、この中では一番小さいリューにいさまは160㎝。同年代の中では大きい方なのに、この家族の中だと小さくみえる。ダルにいさまなどよくからかっている。
カウンターにあるイスに座ってかあさまが淹れてくれたホットココアを飲みながら足をぶらぶらさせて、かあさまがご飯を持って来てくれるのを待つ。
少しして、かあさまがわたしの分と自分の分をトレイに乗せて持ってきて、わたしの前にホットケーキを置いた。
「ヤッター!ホットケーキだ!」
「お待たせ。どうぞ、召し上がれ」
「いただきます!」
云うと同時に、食べやすい大きさに切ってあるホットケーキにフォークをさして食べた。
おいしい!かあさまのホットケーキはふっくらして、シロップがたくさんかかって、なのに口の中に広がる甘さが甘ったるくなくおいしいね。
わたしはリスみたいに頬が膨らむくらい詰め込んでもぐもぐと食べる。
「そんなに急いで食べなくても誰も取らないわよ。そんなに急いで食べると喉を詰まらせるわよ」
「ふぁっれ、おいひいんふぁもん」(だって、おいしいもん)
零れないように気を付けながら答える。
そんなわたしをかあさまは頬えみながらみている。その顔はもう帰ることができない世界にいる母さんと同じもので、幸せなのに…哀しくなって泣きたくなる……
「そうだよ。美味しのはわかるからよく噛んでお食べ」
そう云われて、ぽんと頭に手を置かれて撫でられた。
フォークを持ったまま振り返ると、そこには予想通りの人が立っていた。
「とうさま!」
わたしの頭を撫でたのは出掛けていたとうさまだった。
わたしはファークを持ったままとうさまに抱きついた。案の定とうさまの来た服にフォークについていたシロップが付いちゃったけど、とうさまは気にしないで抱きしめ返してくれた。
「ただいま、レティー、リーナ」
とうさまはわたしを抱きかかえて、わたしが座っていたイスに座って、わたしを自分の膝に乗せた。
そして、かあさまの唇にキスをして、わたしの頬にキスをした。
とうさまは必ず最初にかあさまにキスをする。
かあさまはとうさまにとって一番大切な人で、かあさまもとうさまが一番大切なんだと思う。多分確実に何かあった時とうさまは、かあさまにいくら罵られようがわたしやにいさま達よりかあさまを助ける。
別に、わたしもにいさま達も哀しいとかいう感情はないんだ。とうさまがわたし達を愛してくれてることはわかってるし、その気持ちがわからなくはないから……
「おかえりなさい」
「おかえりなさい、とうさま」
「今、紅茶いれますね。そのままリーナを膝に乗せていてもいいですが、食べる邪魔はしないで下さいよ」
「わかってるよ」
呆れた顔をしてかあさまはとうさまを注意して、調理場に向かった。
とりあえずわたしは食べるのを再開する。
とうさまはそんなわたしをにこにこと笑顔見つつ、時々頭を撫でる。
とうさま、わたしの頭撫でるのすきだなぁ… にいさま達もか……
そんなことを考えながら気にせず食べていると、突然とうさまがあーんと口を開けてきたので、ホットケーキを口に入れてあげる。
「ありがとう、リーナ。ダル達と違ってリーナは優しい子だね。ダル達は最近冷たくて… 僕があーんしても無視するし、抱きつこうとすると容赦なく斬りつけてきたり攻撃魔法を使ったりして嫌がるんだよ……」
「とうさま、にいさま達が嫌がるのは当然だと思う…」
「えぇぇっ?!何で?大切なコミュニケーションじゃないか?!」
「……にいさま達の年頃になるとそういうのは恥ずかしいんじゃないかな?ほら、反抗期とかもある齢だろうし」
帰ってくるといつもご飯食べるときとか、とうさまからできるだけ遠い席に座ろうと頑張ってるなぁ…… いつもは物静かなレンにいさまが怒鳴ったりするし。
まあ、反抗期ってやつだね。
のしっと、とうさまがわたしの頭に顔を乗せてきた。
わたしが思っているより落ち込んでいる。わたしを取り合ってケンカをよくするけど、とうさまにとってはにいさま達も大事な自分とかあさまの子供だし、嫌われるのはやっぱり怖いんだよね…
「…とうさま。にいさま達は別にとうさまのこと嫌いじゃないと思うよ。だって、かあさま以外どうでもいいと思ってるとうさまが愛してくれてるんだもん。それに、とうさまが嫌いならわたしに会うためだからといってわざわざ王都からかなり離れたこんな田舎まで帰って来ないって。にいさま達もとうさまが好きだよ」
顔を乗せてるから見えないだろうけどにっこり笑って、頑張って短い腕を伸ばしてとうさまの頭を撫でた。
とうさまがもっとぎゅっと抱きしめて来た。ちょっと痛かったけど我慢する。
わたしはとうさまが大切に思ってる人達と必要以上にコミュニケーションを取りたがって…、愛情を確認したがっているか知っているから…
「あらあら、シルヴァンったらまた落ち込んでるの?今度はどうしたの?」
しばらくそうしてると、とうさまの朝食と紅茶をトレイに乗せてかあさまが戻って来た。
「…レティー……」
力なく呟いて少しの間ジーとかあさまを見つめた後、わたしを膝の上から下してイスに座らせると、カウンターを飛び越えてかあさまに抱きついた。
かあさまはしょうがないわねと、呟いて苦笑しながら、でも、愛しいという瞳でとうさまを抱きしめる。
まだ少し残っているけど頭の上の蒸しタオルを取ってカウンターの上に置いて、わたしはイスから降りて店のドアに向かう。
ドアを開けながら振り返ってかあさんを見て云う。
「外で遊んでくるね。お昼は森の中で木の実でも取って食べるからお昼いらないよ」
「わかったわ。あんまり森の奥に行ってはだめよ」
「うん、わかってるよ。じゃあ、行ってきます!」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
にこって笑ってかあさまに手を振って外に出る。
カチャッといってドアが閉まった。
わたしは森に向かって歩き出した。春の風が優しく髪を撫ぜて行った…
さっきの光景を思い出すと胸が痛くなった。多分、自分がしたことの結果が突きつけられているから……
受け止めないといけないし、償わなければいけない。
とうさまをあそこまで追い込んだのは、橘 凛、わたしだということを……
読んで下さってありがとうございます。
これからどんどんこの世界の設定を説明していきたいと思います。次話は多分、会話より主人公の独白とか、回想が多くなるかも……
それが終わったら、主人公の兄達が出てきます。
そして、あの人も……ね?
これからも読んで下さると嬉しいです。