日本人転生者が多い三つの理由を、現代の戦乙女はかく語りき
過労死大国ニッポン。
世に狂った戦争は数あれど、命を弾頭にして敵へ突っ込む正規軍が居たのはこの国だけだ。
カミカゼ、ハラキリ、ヤバすぎないか。
故国を守る為とか、家族を守る為とか、色々理由があるのは分かるけども。
「という訳で、ニッポン人の特異性は神界でも高く評価されているのよ――――平和ボケしたところはあるけど、適度に外道を吊るしておけば引くほど徹底的に、その、ざまあ? するのよね?」
「舐めてます?」
「正義感の高さも英霊としての適性よ。悪人には容赦しない。死なば仏だけど、死ぬまで許さないんだから、アナタ達って」
「舐めてますよね?」
「昔からも言われているのよ、労働者として最も素晴らしい適正があるのはニッポン人だって。戦う為の力はこちらで与えられる。必要なのは真面目で成果を上げる為なら自己の生死すら忘れ去ってくれる都合の……有能な戦士なの」
「都合良く使おうとしてます?」
「そちらにとっても悪い話じゃないわ。神界も人間界ほど堅苦しくはないから、組織の為に過労死するほどの魂であれば、多少ハメを外していたって誰も文句は言わない。そうでしょう? だってアナタ達って昔から、えぇ……えっちなことが大好きだもの」
「神様がハーレム容認派だったなんて初めて知りました」
「ハーレムどころか、アナタ達の神様なんて近親姦とか浮気とか大好きじゃない? なんだっけ、裸踊りを見たくて引き篭もりを脱した神様も居たわよね?」
「それ最高神ですねぇ」
「こちらも相当身勝手だけど、ニッポンの神様もなんというか、自由よね?」
「ハメを外す為に普段真面目やってるところありますから。無礼講、ですよ」
「つまりアナタ達にとって異世界への転生は無礼講みたいなものなのよ。そもそも過労死するまで働いたんだから、もう我慢とか色々考えなくていいの。便利な力を貰って後は楽しく逝きなさい?」
「それってアナタ……神様にとってメリットあるんですか?」
「言ったじゃない。皆真面目で正義感が強い。一度武器を手に取ったら我慢強い分徹底的にやってくれるから後を引かない。アナタ達が直接という場合も多いけど、次代や子孫が遺産を使って、私達神族にとって邪魔な相手を始末してくれることが多いの。たまにヤバいのになっちゃうヒトも居るけど、比率としては悪くないわ」
「あぁ、ヤバいヒトも居ますからねぇ」
「えぇ…………まあ、それはそれでいいわ。無暗に領域を冒さず対話を求めれば、ヤバいなりに応じてくれるんだから」
「ヤバいのは変わらないんですね」
「なまじ神様が身近な民族だから、容赦ないのよね。だからこそ、本来はその世界に於ける神様とも言える魔王とか相手に、平然とぶち殺しにいけたりする」
「あ、魔王って神様に分類されるんですか?」
「圧倒的な力を持っていて、その存在が世界の法則足り得るのなら、広義に於いては神と言えなくもないわね。ウチのも、すごいわよ?」
「聞いたことあります」
「あぁ、後はそういう知識の豊富さも利点よね。知っている? ニッポン人はあの、青色の猫型タイムトラベラーのおかげで、幼い子供でも多次元宇宙を理解しているって言われてるのよ」
「アニメやゲームなんかも、昔に比べて一般化しましたしね。実際に戦えと言われたら怖いですけど、ボスキャラの分析や自己ビルド、攻略構築なんかも好きかもしれません」
「案外大切なのよ。畑違いに思えても、思考の土台があれば当て嵌めていける。アナタ達に求めているのは強靭な肉体じゃなくて、暴力を私達好みに振るえる精神性と、時に死を度外視する異常性、そして」
「……そして?」
戦乙女は羽を散らした。
それらは光となって解けていくと、止まっていた周囲の時間が動き始める。
受け答えをしていた者は、今更気付いたみたいに足元へ目を向けて、苦笑いする。
深夜の三時、誰も居なくなったオフィスの一室、意識を失って倒れた姿を一瞬だけ見詰めて。
「興味を持ったことには徹底してこだわり抜く職人、あるいはオタク気質なところかしら。それは周囲からの注目と協力さえ得られたなら、時に世界を変革するほどの力になってくれる。だから私達は、アナタ達を異世界へ送るのよ」
マリアージュ、と戦乙女は呟いた。
絶妙なる調和。
時に、神懸かりとも言われる噛み合いを現す言葉に、俯いていた者も顔をあげた。
「流石は、大昔から大勢の魂を自分達の戦いへ駆り立ててきた戦乙女。乗せるのが上手いですね」
「乗ってくれる? どの道すべてを管理なんて不可能だから、どうなるかはアナタ次第。世界を変革して救ってみせるのも、魔王となって私達神界へ弓引くのも、ただ自分の幸福を求めて静かに生きるのだって自由にすればいい」
「美味しい話過ぎて、悪魔との契約を疑うレベルですよ、それ」
「それで、返事は?」
ため息の後に答えが来た。
「どうせもう死んでます。後は精々、アナタの言う無礼講を楽しみますよ」




