第三話 成長
「双子座、分身!」
先輩が分身を生み出し、先程まで僕のいた場所に配置する。
「なにかする気だろうが、このまま押し切るぞ!」
人体がまたもや小腸を複製し手数を増やし、攻撃を始める。
「「やれるものならやってみな!」」
先程の倍以上ある小腸を二人の先輩がそれぞれいなしていく。
やっぱりこの人は強い。
僕なんて今一つのことをしようとしているだけで精一杯なのに、先輩は僕のことを気にしながら攻撃をいなし、更には出来るだけ道路や建物に攻撃がいかないようにすべての攻撃をいなしてしている。
本当にすごい。
先輩だけじゃない。ライブラリの人達全員だ。
皆が皆自分だけじゃなく、味方や全く関わり合いのない赤の他人のことまで気にかけ、行動する。
その行動をできるほどの実力がライブラリの人達にはあるのだ。
僕は知りたかった。
それほどの実力を手に入れるためにどのくらいの努力、どのくらいの時間、自らのシリーズを愛でてきたか。
僕は気になって気になってしょうがなかった。
これはライブラリに入る一つのきっかけでもある。
だからまずは。僕がその領域にいかなくてはならいない。
だからまずは目の前の事を終わらす。
「先輩!準備できました。彼から離れてください!」
「了解!」
先輩は分身を解除し、人体から距離を取る。
「何をする気だ?」
「プロミネンス。赤」
僕がそう言うと人体の周りに炎の円ができ、瞬間大きな火柱が人体を中心に発生する。
「熱いぃいいいいいぃいいい」
断末魔に似た声を後に人体は完全に焼却される。
「うわー」
あれ、先輩が引いてる。
なぜだろう。
「どうかしました?」
「いや、君の成長速度に驚いてるだけ」
成長?新技になにか成長した要素でもあったのだろうか。
「どこらへんが成長しました?」
「うーん。断末魔を聞いてもケロってしてるところかな」
「え、断末魔なんて出してなかったじゃないですか。良いって叫んで喜んでたじゃないですか」
「え?」
「ん?」
先輩がヤバイ奴を見る眼で僕を見てくる。
なにか変なこと言っただろうか。
「冗談のつもりだったのに…」
「え?」
先輩は車に向かいながらボソッと言う。
冗談だった?らしい。
「それでどこが成長してました?」
「そんな気になる?」
「はい!とても!」
早く成長するためには他者からどう見えていたか、どう感じたかを言ってもらうのが一番手っ取り早い。
「まあ一番成長を感じたのは離れてるところに技を出せたことかな」
離れてるところに出せたこと?
どういうことだ?
「どういうことって顔してるね」
「まあはい」
「君みたいな何もないところから火だったり火柱だったりを出す能力のシリーズ使いの大抵が離れているところには出せないんだよ」
「それはなぜ?」
「イメージが出来ないから」
「イメージが出来ない…?」
イメージ?
そんなものが必要なのか?
「君はあの火柱を出すとき、なぜ時間がかかったと思う?」
時間がかかった理由。
そんなの簡単だ。
まずどの程度の火力でどの程度の範囲かを設定するために周囲の様子を想像して…
「あ」
「気付いた?」
僕と先輩は車に乗り込む。
「私が言ってるのは車でいうエンジンをかける前の話で、そもそもその行動を取った時にどんな事が起きるかを想像、イメージできないと離れてるところになんて技を展開できないんだよね」
先輩はエンジンをかける。
「なるほど」
僕は無意識の内にイメージしていたのか。
だから離れてるところに技を撃てた。
「参考になります」
「まあ私が使う、ほとんどの能力が身体強化とかだし今のも全部受け売りなんだけどね」
「ええ」
そこは言わないでほしかった。
「まあでも私から見ても今回の人体戦で成長したところがあったから伝えさせてもらったよ」
先輩は何気ない雰囲気で言っているが、案外うれしい。
「先輩脳筋ですもんね」
「おー?喧嘩するか?」
そう言うと先輩は誰もいない道路で蛇行運転を始める。
誰だこの人にハンドル握らせてるの。
まあ少なくとも今は勝てる気がしないので
「やめておきます」




