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アリシエンヌ

王国ルガーナの豪華な作りの居間、そこで夜食の準備をする使用人たちは、なかなか応援に来ないメアリについて愚痴をこぼしていた。


──────「全くメアリの奴? こんな忙しい時に何をノロノロやってんのよ!」


そう口にしたのは、メアリとは仲良しでお互いを僻み合う中でもあるアリシエンヌだった。そんなイライラしているアリシエンヌに同じ使用人で男の子のデル・ピノが余計な事を言う。


「まさか・・・今頃あのスケラテス様とイチャイチャしてたりして?」


これにアリシエンヌは・・・


「・・・・・・あのさ? ただでさえ私は今、メアリの事でイライラしてんだから、そう言う火に油を注ぐ事を言うな!」


「でも見たんでしょ? ・・・あのスケラテス様がまたメアリの手を引っ張って消えて行くとこ?」


「・・・見たか見てないって言うと? ・・・はっきり見た! さっきあのメアリがまた(・・)スケラテス様に引っ張って行かれるところを・・・・・・しかも昨日の夜も合わせて・・・二回目!」


自慢げにピースサインをデル・ピノにしっかり見せつけるアリシエンヌは、軽く笑ったあと・・・・・・直ぐ表情を崩し嘆く。


「あーあ!! 美しい瞳のスケラテス様?!  どうしてこのルガーナの使用人たちの中で最も美しいとされている私・・・アリシエンヌでなく! ・・・どうしてあの大雑把で鈍感なメアリの手を掴むのですか?!


容姿で言えば、どう見ても私の方が、スケラテス様の美しくも・・・少し意地悪そうな表情には似合っていると思うのですが? ・・・何故・・・どうして?」


大袈裟に天井を見つめるアリシエンヌ。呆れているデル・ピノ。そこに突然割って入る声。


「それに異論は無いわ? ・・・アリシエンヌ?」


「・・・メアリ? ・・・貴女いつからそこに?」


豪華な居間の出入口に立っていたメアリ。


「うん? ・・・ちょうどさっき? で、遅れてごめんね!」


メアリは、表情と両手でごめんなさいと謝罪して食卓のテーブルに駆け寄り、固まって置かれた皿やスプーンにフォークを綺麗にそのテーブルに並べ始める。


「・・・ねえメアリ? 異論は無いって・・・・・・じゃあ聞くよ?」


「ええ・・・何でも?」


「・・・スケラテス様と何処へ?」


「うーん・・・ある部屋へ・・・」


「なんで部屋へ・・・二人きりでしょ?」


「うん」


「・・・そこで何をしていたの?」


「さあ・・・何でしょう?」


「はっきり答えてよ? 聞いてって言ったのは貴女よ?」


メアリのもったいぶった言葉に少しイラついた表情でアリシエンヌはメアリを促す。


「・・・怒られてた」


「怒られた?」


「うん? 私が余りにミスや失言に近い言葉を使うからその事で怒られていたの?」


「本当に? ・・・二人きりになった部屋で・・・スケラテス様が貴女を叱っただけ?」


「ええ・・・本当に? 貴女も知っているでしょ・・・アリシエンヌ? 私がドジでおっちょこちょいな性格である事を?」


このメアリの言葉にアリシエンヌは口を開いたまま考えていた。メアリの性格が確かにそうである事やよく物を落としたり壊したりして王族の者から怒られている事などを・・・


「フフ・・・アハハハハハ。メアリ? 本当に貴女らしい事ね? ・・・あの素敵なスケラテス様から手を引っ張って行かれ何事かと思いきや? ・・・その先に待っていたのは?


・・・・・・お説教ですって?


アハハハハハ、メアリその者だわ!」


アリシエンヌが両手を腰に当てて高笑いを上げる。


その横でメアリは食卓に食器を綺麗に並べ続けている。


「・・・はいはい、そうですよ? 私はアリシエンヌの言う通りドジでマヌケですよ?」


「まあ? 何も私は貴女をマヌケ(・・・)とまで言っていないわ?」


「はいはい! そうそう? マヌケとまで言ってなかったね? アリシエンヌ?」


「そうそう? 大事な仲間の事をマヌケとまでは言わないわよ・・・あれ? ねえメアリ? ・・・口元?」


「え? 口元が・・・どうしたの?」


アリシエンヌは、メアリの口元の右の横に血が滲んでいる事に気がついた。



「どうしたの? なんで血が滲んでるのよ?」


「・・・ええ? ・・・ああ! さっきドアか何かの角にぶつけたのかな? それで・・・血が出たのかなぁ・・・あははは」


「・・・メアリ? 貴女ただでさえドジ踏んで怒られて来たのに・・・自分にまでドジ踏んでどうすんのよ? もっと自分を大事にしなさい・・・分かった?」


「ははは・・・そうだね? ありがとう! アリシエンヌ?」


メアリがアリシエンヌの気持ちにお礼を言うと、そこに出来上がった料理が運ばれて来る。それを見たデル・ピノは、それらを食べたい気持ちでいっぱいになるのを我慢していた。


「美味そう・・・・・・いやいや! さあ二人共? 無駄話はそこまでにして・・・早いとこ出来上がった料理を皿の上に乗せ・・・終わりにしようよ?」


その問にメアリとアリシエンヌは、互いに目を合わせ・・・


「賛成!!」


────

──


王族の食事の準備を終えた三人は、その居間をあとにする。


居間のドアを閉め終え振り向いたメアリにアリシエンヌがそっと近づいてまた聞いた。


「ねえ? ・・・しつこいようだけど、本当に何もなかったの・・・スケラテス様と?」


「・・・本当に! 本当に・・・何もなかったよ?」


「・・・嘘じゃない?」


「うん! 二人きりになった形だけど? スケラテス様からお叱りを受けだけで・・・そのあと私は、ドアに顔をぶつけて口元を怪我しただけ? ・・・どう納得した?」


「・・・うん」


メアリはとっくに彼女の気持ちに気がついていた。


アリシエンヌが二年前にこの王国ルガーナにやって来たスケラテスに好意がある事を・・・

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