ー3章ー 29話 「塩と怒りと作戦会議」
塩作り編、いよいよクライマックス!
鍋も完成し、赤スライムの協力で海水から塩を抽出します。
しかしその帰り道、ハーピーが届けたのは――領主からの書簡。
圧政の牙がついに本格的に動き出します。
セリルとフィーラというマーフォークの子供たちと別れた後、リュウジとタケトは本題である塩作りに取り掛かっていた。
【リュウジ】「まずは鍋を支える台がいるよな……」
現地にあるもので作るしかないため、リュウジが周囲を見渡しながら台の構造を考えていると、タケトがすぐに察したように声を上げた。
【タケト】「ああ……そういう事か。任せておけ、その辺にある手頃な材料で作ってやるよ。その間に海水でも汲んで来てくれ、こっちはやっておくから」
【リュウジ】「さすがタケト、助かるよ!」
リュウジが海水を汲みに行く間、タケトは赤スライムが入りやすいサイズの穴を砂浜に掘り、周囲を転がっていた大きめの石で囲んでいった。さらに鍋の設置に必要な平らな木材を当てがい、安定感を出すために丁寧に調整する。
やがてリュウジが戻ってきた。バケツにはたっぷりと海水が汲まれている。
【タケト】「こんなんでどうだ?」
タケトが自信ありげに組み上げた簡易台を見せる。
【リュウジ】「おお!いいんじゃない? じゃ、早速始めるか!」
リュウジは鍋の上にザルをセットし、そこへ海水を流し込む。砂やゴミが取り除かれ、澄んだ海水だけが鍋に残った。
【リュウジ】「よし、赤スライム。燃やさないように海水を温めてくれ」
リュウジの指示に応じて、赤スライムが熱を帯び始める。次第に鍋の温度が上昇していく。
しばらくすると、海水がグツグツと煮立ち、白い結晶がゆっくりと浮かび始める。
【タケト】「おお!塩になってきてるんじゃないか!?」
興奮気味に覗き込むタケト。理科の実験のような工程に目を輝かせる。
そして数回の加熱と蒸発を繰り返し、ついに――
【リュウジ】「できた!塩だ!」
リュウジは満面の笑みで、鍋底に残った白い結晶を見つめた。
【タケト】「スゴイな……! 塩、作っちまった……」
傍らには分離された透明な水が残っている。タケトが不思議そうにそれを指さす。
【タケト】「なぁリュウジ。その水は捨てないのか?」
【リュウジ】「あぁ、これはにがりってヤツだ。塩を作る時にできる副産物だな。確か何かに使えるから、ナツキにあげようと思ってさ!」
収穫物を手に入れた二人は、満足げに海を後にし、ホノエ村へと戻ることにした。
その帰り道、街道の封鎖地点に差し掛かった時、一羽のハーピーが滑空してきた。手には何かを握っている。
【ハーピー】「リュウジ様。領主側からこんな物が届きました」
それは矢に括られた書簡だった。明らかに敵意を含んだ文面のそれを、リュウジは静かに開封する。
「街道を封鎖し、領民を匿っている者に告げる。
領土の略奪、及び領民の搾取。これは極刑に値する行為である。
直ちに街道の封鎖を解き、我々の検閲に応じよ。
さもなくば、今後領民に課される税負担を五割とし、抗う者は投獄も辞さない。
以上、速やかな返答を求める。」
書簡を読み終えたリュウジは、静かに怒りを内に秘めて言った。
【リュウジ】「緊急作戦会議を開くぞ」
すぐにホノエ村へ戻る二人。村に着くと、リュウジは魔物と男たちを集め、書簡の内容を共有した。
【バルドン】「おいおい……!税負担5割って、俺たちに死ねって言いてぇのか!?」
【街人A】「街じゃ食べ物も買えないっていうのに、さらにこんな仕打ちかよ!」
【街人B】「もう無茶苦茶だな!そんな領主の統治が続いたら、家族はどうなるんだ!?」
ざわつく空気。重たい沈黙。そして――
【リュウジ】「上等じゃねぇか!!!その歪んだ悪政を根こそぎぶっこ抜いてやんよ!!!」
リュウジの怒声が空気を切り裂くように響く。
その言葉に誰もが目を見開き、一気に士気が高まっていく。
その晩、各自に作戦内容が伝えられ、本格的な対領主戦略が始動した。
そして、夜がふけていく――。
今回は塩作りと、ついに届いた領主からの“圧”。
リュウジが静かにブチ切れました。
ここから本格的な対領主戦略が始まります!
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