ー1章ー 8話 「再会と決意、そしてドラゴン」
転生の謎が少しずつ明かされ、ミズハ村には新たな展開が。
そして──予想もしなかった“存在”との出会いが待っていた。
俺とタケトは、支援物資を積んだ荷車を引いて、再びミズハ村へ向かっていた。
その道すがら、俺はどうしても気になっていた事を聞くことにした。……そう転生のことだ。
女神は「転生のことは異世界の人には話してはいけません」と言っていた。
だが、タケトはどう見ても日本人。
ならこっちの人ではないから問題ないはず。
俺は一応小声で………
【リュウジ】「なぁタケト、ひょっとして転生者か?」
タケトは一瞬驚いたが、すぐに冷静になり
【タケト】「あぁ、やけに軽いノリの女神とやらに、先に行ってる転生者と協力しろと。それってリュウジ……なんだろ?」
【リュウジ】「……話から察するに恐らくね。あの女神、何か企んでるのか?」
女神の企みは分からないが、タケトという同郷の仲間ができた事は心強かった。
【タケト】「そうか、なら俺はリュウジのこと手伝うよ、そしたら何か分かるかもしれないしな」
【リュウジ】「分かった、改めてよろしく!」
俺たちは共通の軽いノリの女神に転生させられた仲間として、握手した。
この話は他に聞かれるとマズイので、ここで切り上げた。
そう、ミズハ村が見えてきたからだ。
泥に足を取られながらも、水をかき出している村人たちの姿は、昨日と変わらなかった。
【リュウジ】「おーい!大丈夫か!」
声をかけると、何人かがこちらを振り返る。
【村人A】「……あんた、昨日の……!」
【リュウジ】「今日は支援物資を持ってきた。多くはないけど、しばらくは凌げるはずだ!」
俺が荷車の中身を見せると、村人たちは目を見開いて駆け寄ってきた。
【村人B】「イモだ! 水もあるぞ!」
【村人C】「ありがてぇ……助かる……!」
村の中心に物資を置き、俺とタケトは年配の男性に声をかけた。
【リュウジ】「昨日伺ったリュウジです。こちらは同行してくれたタケト」
【ガンジ】「おお、よくぞ来てくれた。わしはこの村の代表、ガンジと申す」
【リュウジ】「ガンジさん、少しだけお話を伺ってもいいですか?」
あいさつの後、俺は切り出した。
【リュウジ】「昨日見かけたんですが、川を塞いでいる大岩……やっぱり、あれが水の流れを止めてますよね?」
【ガンジ】「うむ、間違いない。あれさえなければ、氾濫は起きなかったじゃろう」
【リュウジ】「だったら、その岩を調べたいんです。何か打開策があるかもしれない」
【ガンジ】「村の者は手が離せなくての。水をかき出すだけで精一杯じゃ。見てきてくれるなら助かる」
【リュウジ】「任せてください。タケト、いいよな?」
【タケト】「もちろんだ! ほっとけるわけないだろ!」
俺たちは川沿いを歩き、大岩の元へと向かった。
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ぬかるんだ地面に苦戦しながら進むと、やがて巨大な岩が視界に入る。
【リュウジ】「……あった、あれだ!」
その陰に、何かがうずくまっていた。
【リュウジ】「ん?……おい、あれ……動いてないか?」
タケトが警戒しながら近づいていくと、ゆっくりと姿が動いた。
それは、ドラゴンだった。
黒い鱗に覆われた巨体。
脇腹には槍が深々と突き刺さっており、荒い息を吐きながらもこちらを威嚇する様子はない。
【リュウジ】「……ドラゴンが、傷ついてる……?」
【タケト】「威嚇の気配がない……ただ、痛みに耐えてるだけみたいだ」
その姿を見て、俺の中で何かがはっきりと固まった。
【リュウジ】「一度村に戻ろう。今の俺たちじゃ、何もできない。村長に相談して、あいつを助ける手段を探す」
【タケト】「……待て、俺はここに残る。何もできないかもしれないが、あの目を見て放っておけるかよ。……一人には、させたくない」
【リュウジ】「……わかった。じゃあ俺は、村で情報と手段を探してくる。お前を信じてる。頼んだ!」
俺はタケトとドラゴンを残し、村へと走り出した。
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――見捨てない。
たとえ相手が、伝説級の魔物でも。
【リュウジ】「頼む!無事でいてくれよ!」
なぜこんな事になっているのか。
誰が槍を刺したのか。
謎はあるが今は、命を救おうと必死だった。
ついにリュウジとタケト、転生者としての出会いが果たされました。
そしてドラゴン登場──異世界といえば、やっぱりこの存在ですね。
でも彼(彼女?)との出会いは、物語にどんな波をもたらすのか。
次回から、ちょっとシリアスとドタバタが交錯していきます!お楽しみに!