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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー3章ー 27話「赤い炎と職人の技」

ホノエ村で進められていた“塩作り計画”に向けて、いよいよ本格的な準備が整い始める。

鍛冶職人バルドンとタケトは、ロックゴーレムの煉瓦を使った炉の最終調整に取り組み、そこへ加わったのは赤スライムの熱。

異世界ならではの素材と技術、そして人の手によって、ついに“鍋”が誕生する。

職人の魂が込められたその鍋は、村の未来を切り開く第一歩となる。


昼過ぎのホノエ村。トリア村から戻ってきたナツキは、荷台いっぱいにメロンを載せていた。


【リュウジ】「メロンばっかり仕入れたんだな……全然新メニューが想像できないや」


リュウジは荷台を覗き込みながら首をかしげたが、ナツキはふふんと得意げに笑った。


【ナツキ】「だから内緒だって言ったでしょ?ふふっ、作戦内容を教えてくれなかった仕返しよ!」


イタズラっぽく笑うナツキに、リュウジは肩をすくめた。


【ナツキ】「またね!作戦ガンバって。何かあったら言ってね!」


そう言って、ナツキはウルフ車を走らせ、トリア村へと戻っていった。


一方その頃、タケトは工房でバルドンとともに炉作りの最終調整に入っていた。


【バルドン】「よし!これで炉は完成だ!」


完成した炉を前に、バルドンは細部まで念入りに確認を行い、満足げに頷いた。


【タケト】「ふぅ…。やっと出来上がりか。慣れない作業だったけど、勉強になったよ!ありがとう、バルドンさん!」


初めて手がけた炉にタケトも満足そうな表情を浮かべていた。


【バルドン】「後は実際に火を入れてみないと使えるかは分からんがな」


そんなやり取りをしていると、工房の入り口から赤スライムが顔を覗かせていた。


【タケト】「ん?あいつ、こっち見てどうしたんだ?」


赤スライムはぴょん、ぴょんと炉の中へ跳ね入り、その身体がじわじわと赤く光りはじめる。


【タケト】「お前は緑を増やしたりできないんだよな……。退屈なんだろ?」


そう語りかけるタケトをよそに、赤スライムは炉の中でさらに熱を帯びていく。


【バルドン】「おいおい!!コイツ火の代わりになろうってんじゃないだろうな!?」


慌てるバルドンをよそに、タケトはひらめいたように薪を手に取る。


【タケト】「そうだ!薪を赤スライムにやってみよう!」


薪を炉に入れると、それはまるで導火線に火がついたように燃え上がり、炉全体の温度が一気に上昇していく。


【バルドン】「まだ使った事もないのに、いきなり火力を上げたら壊れちまうぞ!」


だが、ロックゴーレムが作った岩煉瓦の炉はびくともせず、継ぎ目一つひび割れなかった。


【バルドン】「………なんちゅう炉なんだ……。こんなもん、見た事ねぇぞ……」


長年鍛治職人として多くの炉を見てきたバルドンでさえ驚く仕上がりだった。


【バルドン】「おい!タケト。そこの鉄鉱石持ってこい。試しに使ってみるぞ!」


タケトが鉄鉱石を差し出すと、バルドンはふとリュウジの言葉を思い出す。


【バルドン】「確か、鍋を作って欲しいって言ってたな……」


火花が散り、鉄が赤く染まり、バルドンの手が動き出す。


板を切っていた時の姿とはまるで別人。鍛治職人としての真骨頂がそこにあった。


無駄のない動き、素材を見極める眼差し、そして炎と鉄に向き合う覚悟――。


【タケト】「……すげぇ……これが、職人か……」


やがて鍋はその形を成し、冷やされ、整えられていく。


【バルドン】「ふぅ…。おい、出来たぞ。リュウジに渡してやれ」


鍋を手に取ったタケトは目を輝かせた。


【タケト】「おお!!スゴいな!こんな鍋見たことないよ!」


それはまさに“職人芸”の一言に尽きる逸品だった。


【バルドン】「まぁ、わしの腕の良さもあるだろうが………この炉が別格だったな!タケト、お前さん、いい腕してるぜ!あと、赤スライム、お前さんもな!」


その言葉に照れ笑いを浮かべるタケト。


【タケト】「じゃぁこれ、リュウジに渡してくる!」


駆け足で工房を出て、タケトはリュウジの元へ向かう。


【タケト】「リュウジ!スゴい鍋出来たぞ!」


受け取ったリュウジは、思わず目を見開いた。


【リュウジ】「なんだこれ!?こんな鍋見た事ないぞ!?………バルドンさんってやっぱスゴいんだな……」


鍋の重みと輝き、仕上がりの丁寧さ――それはまさに、次なる工程“塩作り”への希望の象徴だった。


【リュウジ】「よし!これで、塩作りができるな!」


鍋を前に、リュウジとタケトは胸を高鳴らせていた。


ご覧いただきありがとうございます!


今回は、鍛冶職人バルドンとタケト、そして赤スライムの力を借りて、

村にとって大きな転換点となる「鍋」が完成する回でした。


鍋一つと思われるかもしれませんが、この道具が後に村の食や経済を大きく変えていく――

そんな“始まり”として、今後に繋がっていく伏線も込めています。


次回はいよいよ“塩作り”へ!

この世界では超高級品ともいえる塩を、村の手で作れるのか……ぜひ楽しみにしていてください!



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