ー3章ー 4話 「生きている山と、モグラたちの願い」
今回の舞台は“山”。草原とは打って変わって、荒れ果てた風景の中——リュウジが出会ったのは、なんと“喋るモグラ”!?
滅びかけた土地に残る命の息吹。
それを感じたリュウジは、また一つの決意を固めます。
リュウジが山の中腹に到着した頃、日はすでに西へ傾きかけていた。
かつて緑が生い茂っていたであろう山は、今では枯れた木々と茶色い土肌がむき出しになっており、風が吹くたびに乾いた葉の音がカサカサと耳に届く。
【リュウジ】「……どこ行ってもこの風景だな」
川を通し、畑を拓き、村を救ってきたリュウジでさえ、この山の荒廃ぶりには言葉を失っていた。
そんな中、ふと視界の端に、不自然な穴が見えた。周囲の地面とは違い、最近掘られたように土が柔らかく盛り上がっている。
【リュウジ】「ん……なんだ、これ?」
しゃがみ込んで覗き込もうとしたその瞬間──
穴の中から“モゾッ”という音と共に何かが顔を出した。
【???】「うわあっ!? に、人間!? なんでぇぇっ!!?」
あまりの驚きに、飛び出してきた“それ”は勢い余って転がり出た。
灰色の毛並みに、まるっとした体。爪は大きく、土を掘るのに適している──どう見ても、モグラだった。
しかも、しゃべった。
【リュウジ】「うわっ、ご、ごめん! 脅かすつもりはなかったんだ!」
【モグラ】「び、びっくりしたぁ……まさか地上に人間がいるなんて……」
【リュウジ】「こっちもびっくりだよ。まさかモグラの魔物と出会うとは……って、お前、ここに住んでるのか?」
モグラは小さく頷いた。
【モグラ】「うん。……まあ、住んでるって言っても、この辺りには最近住み出したんだ。」
【リュウジ】「以前は別の所に住んでたってことか?」
【モグラ】「うん。この山の向こうにね。あそこは緑豊かな草原だったんだけど、今は荒野になっちゃってさ……。とても暮らせる環境じゃないんだ」
【リュウジ】「……やっぱり向こう側もそうなってるのか。でも、こんな荒地で生きていけるのか?」
【モグラ】「完全にダメになった土地なら無理だけど、……この山、まだ完全に死んだ訳じゃないんだ」
【リュウジ】「どういう事?」
モグラは土をかき分けるように前足を動かしながら、ぽつりぽつりと語りはじめた。
【モグラ】「この山の地中にはね……まだちょっとだけ、生きてる部分がある。
小さい虫たちが集まる場所。湿り気も残ってる。俺たちモグラ族には、分かるんだ。
全部が死んだわけじゃない。ちゃんと、まだ“息をしてる”場所があるんだよ」
リュウジは目を細めて、しばし黙った。
【リュウジ】「……それでも、だいぶ厳しい状態だよな」
【モグラ】「うん。実は、半分くらいの仲間は、もう引っ越しちゃったんだ。向こうの草原に。」
モグラが示した先は、スライムたちが作ってきた草原地帯だった。
【モグラ】「けどさ、俺たち……まだこの地が好きでさ……離れられなくて残ってる連中もいるんだよ。今じゃ50匹くらいになっちゃったけどね」
50匹。思ったより多い。
それだけ、この山に未練があるということだろう。
【リュウジ】「なるほどな……」
リュウジは、ふとこれまで出会った魔物たちの顔を思い出した。
スライム、ウルフ、ゴブリン、ロックゴーレム……
どの種族も、みんな豊かな土地や平和な暮らしを求めていた。
モグラたちも例外ではない。
【リュウジ】「……よし。決めた」
【モグラ】「え?」
リュウジは立ち上がり、枯れた山肌を見渡す。
【リュウジ】「他にも困ってるやつらがたくさんいる。だから一気には無理だけど……
まずは、この場所と山。草原に変えてやるよ」
【モグラ】「……え……ほんとに……!?」
【リュウジ】「ああ。今は口約束だけどな。戻って準備するよ。お前らの力も、借りることになるかもしれないけど……いいか?」
モグラは目を輝かせ、力強く頷いた。
【モグラ】「もちろんだよ! みんな、きっと喜ぶ!」
【リュウジ】「よし、じゃあ近いうちにまた来る。その時はスペシャリストも連れてくるよ!」
そう言って、リュウジはモグラに手を振り、山を後にした。
帰る道すがら、背中には少しだけ明るい風が吹いたような気がした。
その風は、やがて草原を運ぶ風になる。
リュウジはそう信じて、一歩一歩を踏みしめた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回のモグラたちは、スライムやウルフたちに続く“共存の仲間”候補です。
今は枯れた山も、きっと未来には草原に——。
そう信じて一歩ずつ前へ進むリュウジと、彼を取り巻く魔物たちの絆に、ぜひご注目ください!




