ー2章ー 29話 「街へ──見えぬ敵の気配」
街へと向かったリュウジとタケト。
旅の途中、彼らを支える仲間たちとの絆が描かれる一方で、到着した街では思いがけない光景が待っていました――。
朝の空気は少し冷たく、旅立ちにはちょうどいい天候だった。
リュウジとタケトは、街へ向かう準備を整えていた。
【リュウジ】「イモも持ったし、水もよし。よし、ウルフ車の準備も万端だな」
【タケト】「こうして改めて旅支度するのって、なんか久しぶりな感じするな」
そこへ、軽やかな足音と共に現れたのは、コボルトたちとハーピーの一団だった。
【リュウジ】「おお!? どうした、みんな?」
【コボルト族長】「リュウジ様。この地域の空気が、最近おかしい。我らも、それを感じております」
【ハーピー長】「あなたが街へ行かれると聞き、何かあった時のために支援を申し出たく、参りました」
その言葉に、リュウジは胸を打たれた。
信頼とは、こうして築かれるものなのかもしれない。
【リュウジ】「ありがとう。本当に助かるよ」
リュウジは、地域ごとの警備体制を整理した。
【リュウジ】「じゃあ、コボルトたちはミズハ村の警備をお願い。あそこが一番手薄なんだ」
【コボルト族長】「承知しました。我らの者をすぐに向かわせましょう」
これでトリア村にはウルフ、ホノエ村にはゴブリン、ミズハ村にはコボルトという警備体制が整った。
さらにリュウジは、ハーピーたちに上空からの監視を依頼した。
【リュウジ】「それと、一体だけ……俺たちの頭上を飛んで、街まで同行してくれないかな。護衛ってことで」
【ハーピー長】「お任せください。空の目は、地上よりも遠くを見通せますので」
【リュウジ】「心強いな……ありがとう!」
こうして準備は整い、リュウジとタケトはウルフ車に乗り、街を目指して出発した。
ぬちゃぬちゃのスライムは今回はお留守番だ。
道中、森の境界で巨大な影が彼らの前に現れた。
【ロックゴーレム】「……リュウジ様。街へ向かうのか?」
【リュウジ】「おう、ちょっと偵察だ」
【ロックゴーレム】「この森の監視、任せろ。異常ないか見ておく」
【タケト】「……舗装工事で大活躍だったが、今回もたのんだぜ!」
【リュウジ】「へへっ、いい仲間が増えたもんだ」
再びウルフ車を走らせ、しばらくすると、ついに街が視界に入る。
瓦屋根の家々が連なる光景は、人々の営みで栄えている様子を感じさせた。
【リュウジ】「ついに来たか……」
【タケト】「思ってたより……静かだな」
街の入り口に差しかかると、道の脇に数人の人影が倒れているのが見えた。
【リュウジ】「おいっ、大丈夫か!?」
慌てて駆け寄ったリュウジが、声をかけると――
【街の男】「……もう、何日も……食べてなくて……」
かすれる声でそう呟いた男の頬は、こけ、目は虚ろだった。
他の人々も、力なく倒れている。
【タケト】「……まさか、本当に……街がこんな状況だなんて……」
【リュウジ】「何が起きたんだ……?」
ぬくもりの村々とは対照的に、ここには寒々しい絶望の気配が漂っていた。
何が街を、こうまで追い詰めたのか――
リュウジとタケトは、静かに目を見合わせた。
今回は第2章のクライマックス直前回です。
街で目にした異変と、村々の“ぬくもり”との対比が強調されてきました。
いよいよ物語は動き出します。次回、2章ラスト、ぜひお楽しみに!




