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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー2章ー 7話 「ナツキの決意とスライムの奇跡」

干からびた牧草地、弱った家畜たち。

タケトの不在を埋めるように、ナツキが立ち上がります。

そして帰ってきたスライムたちが起こす“ぬちゃぬちゃ”の奇跡とは——

希望が、静かに村を包み始めます。



タケトがスライムを迎えに行っている間、ナツキはホノエ村の家畜たちの様子をじっと見つめていた。

干からびた地面、痩せ細った牛や豚。彼女は歯を食いしばりながら、胸の中で静かに決意を固める。


【ナツキ】「このままじゃダメ……タケトさんが戻るまでに、少しでも立て直さないと……!」


彼女はすぐに村人たちを呼び集めた。勢いに戸惑う者もいたが、その目の真剣さに応じ、村人たちは次第に動き出した。


【ナツキ】「イモを蒸してください!そのままじゃ家畜には硬すぎて食べられません」

【村人A】「イモ? 食べなかったから、無理かと思ってたが……」

【ナツキ】「蒸すと柔らかくなるし、水を混ぜて裏ごしすれば、食べられるかもしれません。まずは水を飲ませて、胃を慣らしてあげてください」


彼女は手早くイモを蒸し、裏ごし器に向かう。疲れた身体に鞭を打ちながら、黙々と作業を続けた。


【ナツキ】「……もう少し水で伸ばして……あ、そっちは、裏ごしをしっかりお願い……」


その様子を見た村人たちは感心し、次第に手伝い始めた。子どもたちまでが手桶を持って水を運び、村に活気が戻りつつあった。


やがて、ペースト状になったイモを牛の口元へ運ぶ。


【ナツキ】「……お願い。食べて……」


牛は一瞬鼻先をひくつかせたあと、ぺろりと舌を出してゆっくりとそれを舐めとった。そして、もぐもぐと噛み始める。


【ナツキ】「……食べた……!」


その瞬間、ナツキの頬を一筋の涙が流れた。絶望の中に、確かな光が差したのだった。


と、そのとき。


【村人B】「おい!誰か来たぞ!ウルフ車だ!」


土煙を巻き上げながら、タケトがスライムたちを連れて帰ってきた。


【タケト】「戻ったぞー! 青と緑、どっちも元気だ!」

【リュウジ】「ナイスタイミング!よし、行こう!」


リュウジはウルフ車に駆け寄ると、スライムたちを少しだけ残っていた牧草のところへ案内した。


【リュウジ】「お前たち、頼む!この牧草を一気に広げたいんだ!」


青と緑のスライムは元気よく跳ねながら、牧草のそばへ向かう。


【青スライム】「牧草はじめてー。なんだか甘い匂いー」

【緑スライム】「草の中においしそうなエネルギーあるー。いただきまーす」


二匹は夢中になって牧草を食べ始めた。そして、少しすると体をぐるりと回転させながら、粘液を土壌に撒き始める。


【タケト】「お、来たぞ。ぬちゃぬちゃタイムだ」


ぬるりと広がる粘液。その効果はすぐに現れた。粘液の染み込んだ地面から、新たな芽がふわりと顔を出し、青々とした牧草がじわじわと村の一角を覆いはじめた。

しかも、緑スライムの影響で一部には薬草も混じっていた。


【村人C】「な、なんだこれ!? 緑が……戻ってきてる……!」


歓声とどよめきが村を包んだ。ナツキはその様子を見つめながら、小さく呟いた。


【ナツキ】「す……スゴい……。これなら、きっと……」


小さな努力が、確かな結果となって返ってくる。それを目の当たりにした瞬間だった。

──次回、さらに驚く奇跡が待ち受けている。


今回はナツキ回でした。

真っ直ぐで、地道な努力が誰かを救う。そんな瞬間っていいですよね。

そしてスライムたちの活躍も健在。牧草+薬草のコンボが地味に便利です。

次回もどうぞお楽しみに!


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