表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/178

ー2章ー 6話 「それでも私は、この世界で生きると決めた」

ホノエ村で出会ったナツキ。

女神を知っていた彼女は、リュウジたちと同じ“転生者”だった。

少しずつ明らかになる彼女の過去と想い──

そして、この村の再建に向けて、ナツキの心が動き出します。


村の片隅に、リュウジとナツキは静かに向き合っていた。

空気は静まり返り、周囲のざわめきすら遠くに感じるほどだった。


 ナツキはリュウジの問いかけに、しばし沈黙していた。

 この世界に来た理由を、ここで話すべきなのか。

 だが──転生させられたこの地で、突然絶望を味わい、絶体絶命の瞬間に現れたのがリュウジだった。

 その彼が女神の存在を知っている。ならば、隠し通すことは不誠実だと思えた。


 意を決して、ナツキは口を開いた。


【ナツキ】「……はい。知ってます。というか、あの女神に……転生させられました」


【リュウジ】「やっぱり、か。いや~、なんとなくいると思ってたんだよ。他にも俺たちみたいなやつが」


【ナツキ】「まさか……あなたも?」


【リュウジ】「うん。俺も、タケトも地球からこの世界に来た。あのテンション高めの女神に、ほとんど説明もなく送り出されてな」


 ナツキは一瞬驚いた顔をしたあと、肩を震わせて笑った。


【ナツキ】「あの人、本当に説明不足ですよね! 私も気づいたらこの村で……人も家畜も倒れてるしゴブリン襲ってくるしで……! まさか命がけのスタートだなんて思わなかった」


【リュウジ】「だろ!? 俺なんて草むらにまるごしで放り込まれたんだぜ。最初に声かけてくれたのが村のじいさんじゃなかったら、たぶんそのまま野垂れ死んでたわ」


 二人はしばらく笑い合った。

 似たような境遇の者同士、どこか通じ合うものがある。

 だが、すぐにリュウジは真剣な顔に戻った。


【リュウジ】「……で、これからなんだけどさ。君は、この先どうするつもり?」


 ナツキは少し目を伏せ、考えるように唇を噛んだ。そして、ゆっくりとリュウジの目を見つめ返す。


【ナツキ】「私……あ、ナツキって言います。実家が農家で、米や野菜の栽培だけじゃなくて、酪農も少しやってたんです。

だから、さっきの牛たちの様子を見て、すぐにわかりました。このままだと……もう、もたないって」


 言葉の端々に、農業や家畜への愛情が滲んでいた。

 リュウジは静かにうなずいた。


【リュウジ】「……俺も同じ考えだ。動物の事はよく分からないけど、牧草なら食べるかもしれないんだろ?

それなら、うちの仲間のスライムたちがいれば、なんとかできる。ヤツらのぬちゃぬちゃ効果で、土壌改善はできる。あとは、それを活かせる“人の知識”が必要なんだ」


【ナツキ】「スライムって……魔物のスライム、ですか?」


【リュウジ】「ああ、でも大丈夫。うちのは仲間なんだ。農業用スライムとでも言えばいいかな。青と緑、それぞれ役割が違ってさ」

「他にも、ウルフやドラゴンもいるけど、今は全部仲間だよ」


 ナツキは目を見開いて驚いた。

 普通なら魔物と聞いただけで身構えるところだが、リュウジの語り口には恐れも疑いもなかった。

 むしろそこには、人と魔物の“共存”を当然とする思想が根付いていた。


【ナツキ】「……すごいですね。魔物が味方って、まだちょっと信じきれないけど……」


 そう言いながらも、ナツキの中で何かが動いていた。

 この世界で、命を救ってくれたのはリュウジたち。その彼が築いてきた信頼できる仲間たち。

 もし、本当に魔物とも手を取り合っていけるのなら──。


【ナツキ】「私を……使ってください!」

「農業と酪農についてなら、それなりにやってきました。この村の復興の役に立てるなら、何でもします!」


 その真っ直ぐな言葉に、リュウジは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに大きくうなずいた。


【リュウジ】「ありがとう、ナツキ。仲間が増えるってだけで、こんなに心強いことはないよ!」


 ナツキはふっと微笑み、その目に光を宿した。


 二人は並んで歩き出す。

 夕焼けが空を黄金色に染め、影が長く伸びていく中、復興の第一歩が確かに刻まれていた。


 タケトがスライムを連れて戻ってくるまで、あと少し──。


ついに明かされた、ナツキの正体。

そして、彼女の意志。

転生者として、農業のプロとして、この村にどう貢献していくのか……。

次回はタケトがスライムたちを連れて戻ってきます!お楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ