ー1章ー 19話 「川を繋ぐ者と、とんでもない運搬計画」
川を繋げる工事、ついに始動します。
ただ掘ればいい……わけじゃない!?
出てくるのは“残土”。それすら無駄にしないリュウジの発想とは……?
森の再生が順調に進む一方で、俺にはもう一つ気になっていたことがあった。
――水。
この前の協議で話した川の工事だ。
井戸の水量には限界があるし、ウルフたちの森にもいずれ水が必要になる。
そのための下準備は済んだ。
そこで俺は、ある決断をした。
【リュウジ】「よし、一度ミズハ村に行ってみよう。水源の様子を見ないとな」
森の再生をスライムたちに任せ、俺はミズハ村へと向かった。
ミズハ村に到着した俺は、ガンジ村長とタケトを呼び寄せ、さっそく話を切り出した。
【リュウジ】「ガンジさん、タケト。今回は“水”の話なんだ」
【ガンジ】「ふむ……水か。確かに最近、川の水量は増えてきたが、濁りはまだ完全には引いておらん。それに、トリア村まで届くような水量でもないからのう」
【リュウジ】「トリア村の井戸も限界が近いんだ。そこで、川の整備をしようと思ってる。ミズハ村からトリア村まで、もう一度川を繋ぎたいんだ」
【タケト】「この前の協議で決まったアレか!」
【リュウジ】「そう、それ!川幅も深さも改善しないといけないし、水が自然に流れてくるようにしないとな。幸い、ミズハ村の方が少し高い位置にある。この傾斜を使えばいけるはずだ」
【ガンジ】「しかし、それだけの工事となれば、相当な労力が必要じゃぞ?ワシらも手伝ってやりたいが……何せ村の復興もまだ途中でのう」
ガンジは申し訳なさそうに眉を下げる。
【リュウジ】「あぁ、それは分かってます。ミズハ村の皆さんは自分たちのことに集中してくれて構いません。川の距離も約5キロあるし、少しずつトリア村の人手で進めていくつもりです」
【タケト】「俺も手が空いた時は手伝うよ。ただ、村の復興が優先だからな」
【リュウジ】「もちろん、それでいい。ただ、問題は……“残土”なんだ」
【タケト】「残土?」
【リュウジ】「川を掘れば、大量の土が出る。それを捨てるのはもったいない。何かに使えないかなって思ってて」
【タケト】「ああ、それなら……。その土、もしよければミズハ村に回してくれないか?
今の家の基礎は水にやられてる。高さを出せれば被害も減らせる。土台作りにちょうどいい」
【リュウジ】「それだ! 土は無駄にならないし、復興にも繋がる。よし、それでいこう!」
【タケト】「でも……運ぶ手段がないぞ? 土なんて、人力でちまちま運んでたら日が暮れちまうぞ?」
【リュウジ】「そこなんだよな……」
(荷車……荷馬車……馬がいない……馬!?)
思わず笑いそうになったが、ある“とんでもない案”が頭に浮かんできていた。
それは奇抜だけど、可能性があった。
【リュウジ】「……ぷぷっ!ちょっと“良い案”を思いついた。一旦、村に戻って準備する。任せてくれ!」
【ガンジ】「何を思いついたかは知らんが……おぬしの発想はいつも常人の枠を超えておるのう」
【リュウジ】「それ、褒めてる? それとも呆れてる?」
【タケト】「いや、多分両方だな。まぁ、気をつけて帰れよ」
【リュウジ】「ありがとな!次来た時にビックリさせてやるから、楽しみにしててくれよ!」
こうして俺は、再びトリア村へと戻ることにした。
いよいよ本格的に、川の再整備工事が始まる。
残土の受け入れ先も決まった。
【リュウジ】(この案が上手く行けば、工事もかなりスムーズに進むし、村も森も一気に潤うな!)
そんな事を考えながら、荒れ果てた川沿いを
軽快に歩いていく。
………そして物語は、またひとつ前に進もうとしていた。
今回もご覧いただきありがとうございます!
ついに村を繋ぐ“水の道”が動き出しました。
地味だけど重要なインフラ回、どうだったでしょうか?
そして、リュウジのとんでも案……予想、当たりますか?
感想・ブクマ大歓迎です!
 




