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ー1章ー 18話 「命が芽吹く森で」

それぞれの村で、少しずつ進む“再生”。

ミズハ村では地を乾かし、トリア村ではスライムたちが緑を広げていく。

そして今、小さな芽吹きが確かに現れた──

森に、村に、そして人と魔物の心にも。

希望の新芽が顔を出す、第18話。


ミズハ村では、朝から村人総出で作業が始まっていた。

日差しは強く、天気も味方してくれている。今のうちに、水をかき出して地面を乾かさなければ。


【タケト】「よし、今日中にこっちの区画を終わらせよう! まだ水が残ってるとこは、ぬかるんでるから足元に気をつけて!」


【村人A】「タケトさん、こっちは水引きました!」


【タケト】「おお! ありがとう! 次は日当たりのいいところを優先して乾かしてくれ!」


タケトは先頭に立ち、休む間もなく動き続けていた。

その眼差しには、誰かのために動くという確かな意志が宿っている。


そして彼の目には、少しずつだが変化が見え始めていた。

土の色が、わずかに乾いた茶色へと変わり始めていたのだ。


【タケト】「……焦らず、少しずつでいい。地面が乾けば、家も建て直せる」



その頃、トリア村では──



【リュウジ】「スライム部隊、森の北側へ回ってくれー! あ、ぬちゃぬちゃは控えめにな!」


【女王スライム】「ぷるぷる~♪ 了解よ~♪」


スライムたちの働きで、トリア村の周囲は確実に緑を取り戻しつつあった。

村人たちも慣れた手つきで、ぬちゃぬちゃに塗れた地面を整地していく。


【村人A】「何か空気が変わった気がするな。少しずつだが、森が……生き返ってきてる」


【村人B】「それに最近では聴かなくなった、鳥のさえずりも聴こえるようになったしな!」


【リュウジ】「だろ? ふふ……スライムって、やっぱりすげぇよな」


スライムたちには、ウルフが希望していた範囲以外にも森を拡大するよう指示。

荒れ果てた大地のままでは、他の動物も戻ってこれないと判断していたからだ。


俺は村人数人とともに、例の窪地へと足を運んだ。

かつて池があったであろうその場所に、新たな川を引き、池を作ろうという計画だ。


【リュウジ】「このくらいの幅と深さでいいかな……」


スコップを軽く握りしめ、試しに地面を削ってみる。


【村人A】「深くしなくていいのか?」


【リュウジ】「あぁ。ウルフたちは問題ないだろうが、戻ってきた他の動物のためにも、浅めにしてあげた方が親切だろ?」


【村人A】「なるほどな。住みやすい環境を最初から作ってあげるってことか」


【リュウジ】「自然に対して人がそこまでしても良いのか疑問だが……まぁ、俺たちが作った“スライム産の森”だからな」


そんな会話を交わしながら、俺たちは森の入口付近まで、小川になる予定の溝を掘り進めていく。


その日の作業を終えた頃、リュウジはウルフの長たちに作業状況を報告していた。


【リュウジ】「お前らが言っていた範囲は、大体終わって、今はさらに森の範囲を大きくしているところだ。お前たちも、どうせ住むなら広い方が良いだろ?」


【クラウガ】「あぁ……有難いことだ。……しかしリュウジ、人間というのは……こんなにも自然を変えることができるのか?」


正直、半信半疑だった彼らにとってみれば、所詮は人間の戯言程度に思っていただろう。


【リュウジ】「いや、俺たちだけじゃさすがに無理さ。それにこの森は、スライムがいて、ウルフたちがいて、みんなが動いてくれて……それで、やっと成り立ってるんだ」


【リュナ】「ふふ……素敵ね。こんな森、初めて見た気がする」


【リュウジ】「これはまだ少し先になるだろうけど、あそこの窪地を池にするために、川となる溝を掘っておいた。この森と、お前たち森に暮らす者のためにね」


【クラウガ】「どこまでも世話になってしまった。リュウジ、ありがとう」


【リュナ】「二人で話したのだけど、ここまでしてもらったお礼に、この森とあなたの村の警備をさせてもらえないかしら?」


【リュウジ】「いいのか!? それは助かる! 今度、村長のじいさん連れてくるよ!」


昨日まで枯れ果てていた丘に、小さな命が顔を出していた。

緑の息吹が、確かにこの地に戻りつつある。

リュウジはふと空を見上げ、小さく笑みを浮かべた。


【リュウジ】「よし……もう少しだ!」


それぞれの村で、それぞれの“再生”が、確かな歩みを始めていた。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!


トリア村とミズハ村、それぞれの再生が少しずつ進み始めました。

自然が戻り、心が繋がり、そして小さな“芽吹き”が、確かな前進を物語ってくれています。


戦わずして進む物語。

でも、それは決して“何もしない”ということではなく、

一歩一歩積み重ねていく“行動”の先にある未来だと思っています。


次回も、どうぞお楽しみに!


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