ー6章ー 27話 「魔物たちの誓い──ガルーガの極秘計画」
王都周辺から追い出された魔物たち。
その証言を聞くため、ガルーガはロックゴーレムとスライムを呼び寄せました。
彼らが語ったのは、不穏な“何か”の存在。
そして、ガルーガが下した決断とは──。
今回も緊張感ある展開をお楽しみください。
カリフスはロックゴーレムとスライムを連れ、領主城の一室にある警備ギルドへと戻っていた。
鍛え上げられた兵士たちの声が遠くから響く中、彼の足取りには微かな緊張が混じっていた。
この場に連れて来た二体がどのような証言をするかによって、今後の計画が大きく変わるのは間違いなかった。
警備ギルドの執務室に入ると、そこには険しい表情をしたガルーガが待っていた。
少し前に地下牢から戻り、元領主グレイストから得られるだけの情報を引き出した直後だった。
【ガルーガ】「戻ったか。ロックゴーレム、スライム、急に呼び立てて悪いな」
その声に、ロックゴーレムがわずかに首を傾げた。
【ロックゴーレム】「俺たちに何か用か?」
戸惑いを隠せない声音だった。
だが、ガルーガはすぐに本題へと切り込む。
【ガルーガ】「済まない、早速本題に入ろう。二人は王都周辺に住んでいたそうだが、追い出された当時の事を聞かせて欲しいんだ」
その問いかけに、重苦しい沈黙が数秒だけ流れた。
ロックゴーレムは巨体を揺らし、低い声で語り始めた。
【ロックゴーレム】「俺の住んでた岩山、王都の傍にある。皆は岩に擬態して逃れた……今も住んでる。でも俺、擬態が遅かった。だから俺だけ追い出された」
淡々とした言葉に、室内の空気が揺らいだ。
ガルーガは腕を組み、じっと彼を見据える。
【ガルーガ】「そうか……しかし、お前程の体格の魔物を人間がどうやって追い出したと言うのだ?にわかには信じ難いが……」
ロックゴーレムは三メートルを優に超える巨体。
普通の人間が追いやるなど、到底考えられない。
だが、その答えは意外なものだった。
【ロックゴーレム】「俺の住んでた岩山、不思議と力出る岩山。でも、あの時は力出なかった。嫌な何かが体に流れてきた」
魔物の力を阻害する「何か」。
ガルーガは直感的に嫌な予感がした。
【ガルーガ】「その岩山は何処にあるんだ?恐らく擬態して難を逃れた仲間は、今もその何かに苦しめられているかもしれない……可能なら救出してやりたいのだが」
一瞬、ロックゴーレムの目に喜びの色が宿る。
だが、すぐに陰りが差した。
【ロックゴーレム】「岩山、王城の後ろ。行くとしても城の横を通らないと行けない。行ったら見つかる」
王城のすぐ裏手。
つまり、救出を行えば必ず人間に察知されるということだ。
リスクは計り知れない。
ガルーガは深く息を吐いた。
【ガルーガ】「そうか……分かった、ありがとう」
それ以上追及することなく、今度はスライムに視線を向ける。
【ガルーガ】「スライムが住んでいた辺りではどうだったんだ?」
【スライム】「僕たちは村と王都がある間の草原に住んでたよ。でも、草が王都のある方からドンドン枯れてきて……女王スライム様の意向で村の方へ逃げて行ったの。大地から嫌な感じがしたから、村を超えてこっちに来たの……気がついたら壁で戻れなくなっちゃった」
状況は違えど、共通点は一つ。
両者とも「嫌な何か」を感じていたのだ。
【ガルーガ】「そう言う事か....これは急がないと村人もタダでは済まないかもしれんな」
口調は低く、しかし焦燥を隠しきれていなかった。
そして、ガルーガはついに決断する。
【ガルーガ】「二人共、聞いて欲しい事がある。実は王都側の村を救出しようと思っている。しかし、我々警備ギルドだけでは少し心もとない……だから領地内で手の空いている魔物の力を借りたい!お前たちにもだ。お願いできないか?」
誠意を込めたその言葉に、ロックゴーレムとスライムは顔を見合わせた。
しばしの沈黙の後──力強い声が返ってきた。
【ロックゴーレム】「俺、仲間助けたい。人間、いいヤツ多い。今、力かなり湧いてる!だから手伝う」
【スライム】「僕も養分が凄くなってるのが分かるんだ!今なら嫌な感じの大地を治せるかも。仲間もいっぱいリュウジ様が増やしてくれたから、手伝うよ!」
二体の承諾に、ガルーガの表情がわずかに和らいだ。
しかし、同時に強い決意を込めて告げる。
【ガルーガ】「……ありがとう。だが、この計画はリュウジ様には秘密だ。忙しいリュウジ様に心配をお掛けする訳にはいかない。仲間を募る際には十分注意して欲しい」
その一言に、室内の空気が再び引き締まった。
こうして、魔物たちによる極秘の国王領侵攻計画が動き始めた。
果たして、魔物だけで村を救えるのか。
そして、この計画がリュウジに知られることなく進むのか。
未来は未だ霧の中にあった。
魔物たちの証言が揃い、ガルーガの計画がいよいよ動き出しました。
果たして、彼らは村を救えるのか、それとも……。
物語はさらに深い局面へと進んでいきます。
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