ー6章ー 24話 「新たな子供ギルド」
トリア村で開かれた絵のコンテストも、いよいよ結果発表の時を迎えます。
果たして優秀作品に選ばれるのは誰なのか。そして、子供ギルドにどんな変化が訪れるのか……。
ぜひお楽しみください!
翌日、待ちに待った「絵のコンテスト」の結果発表の時がやってきた。
会場となったトリア村の広場は、子供たちが思い思いに描いた絵の選考結果を、今か今かと待ちわびている。
席に座った子供たちは横や後ろの友達とワイワイと話し、会場全体が期待と緊張に包まれていた。
【カリム】「それでは結果発表を行います!今回のコンテストは輸送ギルドからの依頼ですので、ミリューさんに発表してもらいます」
カリムの声に、視線が一斉にミリューへと集まる。
広場の中央に進み出たミリューは、子供たち一人一人の顔を見回した。
皆の表情には期待と不安が入り混じり、親たちもまた我が子が選ばれるのではと胸を高鳴らせている。
【ミリュー】「では、発表します」
その一言で、広場に満ちていたざわめきが嘘のように消え去り、しんとした静寂が訪れた。
【ミリュー】「コンテストの優秀作品は……」
会場全体が息をのむ。
子供たちの胸は早鐘のように打ち、親たちの視線も食い入るように舞台へ注がれる。
やがて──
【ミリュー】「シトリーニさんの作品です!」
一瞬の沈黙の後、広場は大きな歓声に包まれた。
【シトリーニ】「え……?わ、私!?」
名前を呼ばれた少女は、信じられないというように目を見開いた。
イモ畑を営む村人の娘、シトリーニ。
まさか自分の絵が選ばれるとは思っていなかったのだ。
子供たちは一瞬落胆の色を見せたが、すぐにシトリーニのもとへ駆け寄り、祝福の声をかける。
【子供A】「やったな、シトリーニ!」
【子供B】「うん、スゴいよ!」
【子供C】「絵、可愛いもんね!」
祝福の声に囲まれ、シトリーニの頬は赤く染まった。
少し涙ぐみながら、彼女は舞台に上がり、ミリューに言葉を求められる。
【ミリュー】「おめでとう!この絵を大切に使わせて貰うわ」
その優しい声にシトリーニは小さく頷き、会場を振り返った。
【シトリーニ】「ありがとうございます……皆と絵を描けて、楽しかった!」
子供らしい純粋な感想に、広場は再び温かい拍手と笑い声に包まれる。
だが、発表はそれで終わりではなかった。
【ミリュー】「優秀作品は今発表した通りです……ですが、皆さんが一生懸命考えて描いてくれた絵を無駄にはできません。よって、時期は遅くなりますが、皆さんの絵もバス停のデザインとして採用させてもらいます!」
その言葉に、会場は一斉に歓声をあげた。
子供たちも親たちも驚き、そして歓喜に満ちあふれる。
優秀作品以外が採用されるなど、誰も思っていなかったのだ。
そこへ豪快な声が響いた。
【じいさん】「うむ!みんなよう頑張ったな!本来ならばシトリーニだけに渡す予定じゃったが……全員に特製のイモをやろう!頬っぺたが落ちんように気をつけて食べるんじゃぞ?」
笑い声と共に湧き起こる歓声。
子供も大人も大喜びし、広場は一層の賑わいを見せた。
だが、その中でひとり緊張した面持ちの少年がいた。
カリムだ。
確かにコンテストは大成功した。
しかしカリムには別の目的がある──子供ギルドへの勧誘だ。
心臓が早鐘を打つ中、カリムは意を決して声を張り上げた。
【カリム】「み、みんな!聞いて欲しい事があるんだ!」
歓声が次第に収まり、子供たちと大人の視線が一斉にカリムへと注がれる。
喉が渇き、手が震える。
だが、彼は真っ直ぐに言葉を紡いだ。
【カリム】「今日、皆と絵を描けて楽しかった。もっと皆と色んな事をやりたいんだ……だから、良かったら子供ギルドに参加してくれない?」
広場が一瞬の沈黙に包まれる。
だが、その沈黙を破ったのはリオンだった。
【リオン】「俺も参加してるけど、楽しいぞ!あと、ウルフの子供も参加してるんだ!この前なんか、皆で魚取って遊んだんだ!」
その言葉に子供たちの目が輝き始める。
【子供D】「……私、ウルフと仲良くなりたい!」
【子供E】「なんか楽しそうだな…」
【子供F】「他には何をやるんだ?詳しく聞かせて!」
一気にざわめきが広がり、子供たちはカリムを取り囲む。
そこにはもう「元領主の息子」という壁はなかった。
ただ同じ村に暮らす仲間としての声と笑顔が溢れていた。
見守る大人たちは誰一人として口を挟まず、ただ静かにその光景を微笑みながら見つめていた。
こうしてコンテストは大成功のうちに幕を閉じた。
結果、トリア村の子供たち、カリムとリオンを除いた18人全員が、新たに子供ギルドに加わることとなった。
笑顔と笑い声が広場を満たし、その響きはいつまでもトリア村にこだました。
シトリーニが選ばれた瞬間の驚きと喜び、そして子供たちが笑顔で一つになった場面はとても温かいものになりました。
コンテストを通じて、子供ギルドに新しい仲間が加わったのも大きな一歩ですね。
気に入って頂けたら、評価やレビュー・一言コメントなど、お気軽にお寄せください!お待ちしております!




