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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー6章ー 20話 「託された知恵と未来への道」

地下牢でのガルーガとグレイスト。

罪人と警備ギルドマスターという立場の違いを越えて、国王領の危機を前に共有される危機感。

一方で領地では、ウルフバス計画や子供ギルドの活躍が日常を彩り始めます。

対照的な二つの流れが、やがて一つの物語へと収束していく――そんな回です。

ガルーガは、地下牢の前に立っていた。


牢の奥に佇むのは、かつてこの地を治めていた元領主グレイスト。

敗戦の将として鎖に繋がれながらも、その眼差しには未だ消えぬ誇りと理性の光が宿っていた。


互いに立場は異なる。

だが今、二人を繋ぐのは領地を越えた先にある危機感だった。


国王領に広がる異変、村々を覆う飢餓の影。霊脈の存在や、リュウジたちが張り直した三点結界の真実は知らぬまま、彼らが見据えるのはただ一つ──


「このままでは国王領の人々は死に絶える」という未来である。


【グレイスト】「ガルーガ殿……私は罪人。直接の手助けは叶いませぬ……しかし、堕ちたとは言え元領主!本来ならば国王を諌めるのが我が務め。それが叶わぬ今、私の知る全てを貴殿に託しましょう」


牢の中から響く声は、悔恨と決意に満ちていた。


ガルーガはその真摯な言葉にうなずく。


【ガルーガ】「ありがとう、グレイストさん。事態は急を要するが、領地外である以上作戦は綿密でなければならない……」


こうして、二人はそれぞれの立場を超えて未来を見据えた。

ドラゴンを討伐しようと目論む国王の狂気。その失策の影に潜む陰謀から、罪なき人々を救うために。


その頃、領地内では着実に発展の兆しを見せ始めていた。


輸送ギルドが中心となり、剪定された新たな道が着々と形を成していたのである。


整地される土、行き交う村人、作業に励む魔物たち。

その光景は、かつて荒野だった頃を知る者からすればまるで夢のようだった。


ホノエ村では、輸送ギルドマスターミリューと、ギルド統括役のユウが顔を合わせていた。

机の上には大量の書類と、簡易な路線図が広げられている。


【ミリュー】「ウルフバスは試験的に各村と街を繋ぐ循環ルートから運行を開始します」


ミリューの声は希望に満ちていた。

領民たちが自由に移動できる──それはただの利便性に留まらず、交流を促進し、未来を切り拓く大きな一歩となる。


【ユウ】「良いんじゃないかしら!私はウルフ車がないから、とても助かるわ。肝心のバスの車体はどうなっているのかしら?」


リュウジと行動を共にする日々から離れ、今は各ギルドの報告書に目を通しているユウ。

その量は膨大で、まだ全貌を把握しきれてはいなかった。


【ミリュー】「車体の骨組みを鍛治ギルドに依頼しています。建築ギルドで使う車体の骨組みと並行しているとの事ですので、完成にはもう少し掛かると思います」


鍛治ギルドマスターのバルドンは、山積みの依頼と職人育成を同時に進めている。

負担は大きいが、誰もが領地の発展のために力を尽くしていた。


【ユウ】「今はどのギルドも大変でしょうから、仕方がないわね……」


ユウの声には不満はなく、むしろ誇らしさが滲んでいた。

領地の誰もが、それぞれの役割を全うしている。

それが何よりの証だった。


ふとユウは思い出したように顔を上げる。


【ユウ】「そうだ、ミリューにお願いがあるの。バス停の看板のデザインを子供ギルドに依頼してくれないかしら?この前、バルドンさんに会った時デザインに困っていて、私が依頼を提案したんだけど……私も報告書の確認で手が空かなくて……」


【ミリュー】「なるほど!子供達の絵を採用したいという事ですね?分かりました、バス停は私たち輸送ギルドが依頼している案件です。お任せ下さい」


明確な方向性が決まると、ミリューは即座に行動を開始した。


その足でトリア村へ向かったミリューを待っていたのは、意外な光景だった。


広場では大人たちが集まり、笑顔を浮かべている。手には新鮮な魚やサワガニが抱えられていた。


【ミリュー】「……何かあったのですか?」


問いかけると、村人の一人が嬉しそうに答えた。


【村人A】「あぁ、ミリューさんか。これ、見てくれよ!子供ギルドからの差し入れって事で、子供たちが川で魚やカニを取ってくれたんだ!俺たちも忙しいから本当に助かるよ」


子供ギルドの働きが村を支え、人々に笑顔をもたらしている。

小さな力でも、確かな変化を生み出していた。


【ミリュー】「なるほど!子供ギルドも頑張っているのですね。……カリムは今どこに?」


周囲を見渡すが、広場に彼の姿はない。


【村人B】「カリムなら家に戻ったんじゃないか?」


そう聞いたミリューは頷き、足をじいさんの家へと向けた。


バス停デザインの依頼を受けてもらえるか──それはまだ分からない。

だが子供たちが村の未来を描くその一歩は、きっと新しい風を吹き込むはずだ。


こうして、表では穏やかな日常と未来への準備が進み、裏では国王領の崩壊を阻止するための密かな策謀が動き始めていた。


二つの流れはやがて交わり、大きな物語のうねりとなるのだろう。


重苦しい対話と、穏やかな日常。

その対比を楽しんでいただけたでしょうか。

ガルーガとグレイストのやり取りからは緊張感を、

領地でのやり取りからは温かさを感じてもらえたら嬉しいです。


気に入って頂けたら、評価やレビュー・一言コメントなど、

お気軽にお寄せください!お待ちしております!

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