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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー6章ー 17話 「ガルーガの決断──国王領への密かな介入」

領主城に運ばれてきた青年トマスが口にしたのは、国王領で進む飢餓の現実でした。

果たしてガルーガたちは、どのような決断を下すのでしょうか。

穏やかな午後の陽が差し込む領主城。

警備ギルドが使用している部屋には、緊張感とわずかなざわめきが広がっていた。


 先ほど倒れていたところを発見された青年、トマスは簡単な手当てを受け、やつれた身体を椅子に預けていた。

頬はこけ、目の下には濃い影が落ちている。


 それでもようやく口にした温かな食事──イモと水に、少しだけ顔が緩んだ。


【トマス】「……すみません、食事まで振舞って頂いて…感謝のしようもありません」


 そう言いながらも、トマスは夢中でイモをかじり、水で喉を潤した。

長く空腹に耐えてきたことは、見ている者にも容易に想像できた。


【カリフス】「慌てなくて良い。イモならまだたくさんある」


 デザートウルフのカリフスは、心配そうに声をかけた。

イモを抱え込むように食べるトマスの姿は、ただの飢餓ではなく、生きるための必死さがにじんでいた。


 やがて少し胃が落ち着いたのか、トマスは手を止め、深く息をついた後語り始めた。


【トマス】「国王領にある村は、城に納める作物などを主に生産しています。それを納めることで少しばかりのお金を手にでき、薬などの必要な物を城下街で購入出来ていました」


 それはごく普通の制度に聞こえた。

作物を納め、対価を得る──農民と統治側の支え合いの形。

だが、その後に続いた言葉は、場を重く沈ませた。


【トマス】「ですが……大地が枯れ始め、川の水量が減り出した頃、王様に原因の調査をお願いしたのです。このままでは作物の収穫量が落ち込み、城への納品は疎か食べて行く事さえ困難になると」


【ガルーガ】「それで、国王は何か調査や策を講じたんですか?」


 警備ギルドマスターのガルーガが問いかける。

だが、トマスの表情は暗く沈んだ。


【トマス】「その場では検討するとだけ……しかし待てど暮らせど調査らしき事をしている感じは見受けられませんでした。おかしいと思った頃には作物が育たなくなり、川の水量も減り出して……」


 国王は「検討する」と言葉だけを残し、実際には何もしていなかった。

結果として村は痩せ細り、人々は飢えに苦しむことになった。


【カリフス】「挙句の果てはコレか……結局調査は行われたのですか?」


【トマス】「残念ながら、そのような事が行われたという話は聞いていません……」


 一同は絶句した。

領地の危機に何もしない国王など、統治者の資格すら疑われる。


【ガルーガ】「考えたくはないが……意図的に調査をしなかった可能性は?」


【トマス】「ここまで疲弊してしまった村を見れば、そうとしか思えません……」


 トマスの声には憤りと絶望が混じっていた。

民を救うための行動を取らず、逆に放置する国王。

理由があるにせよ、庶民を見捨てる姿勢は許されるものではなかった。


 部屋に沈黙が広がる。

ガルーガは考え込み、眉間に皺を寄せた。


【ガルーガ】(こんな時、リュウジ様ならどうされるだろうか……)


 領主リュウジは多忙で、この場にいない。領地の発展は各ギルドが担っており、村人や魔物の一部はすでに領地内の課題に専念している。

それでも、この現状を黙って見過ごせるはずがない。


 やがてガルーガは決断を口にした。


【ガルーガ】「……カリフス。領地内で手の空いている者は居そうか?」


【カリフス】「ギルドに所属していない魔物なら居るかと思いますよ」


 カリフスが答えると、ガルーガは頷き、力強く言い放った。


【ガルーガ】「リュウジ様は大変お忙しい……従って我らだけでこの問題を解決するぞ!なに、最近妙に力が増している。争うつもりはないが、リュウジ様のお手を煩わせる訳にはいかん!」


 三点結界の影響で、領地内の魔物は例外なく強化されていた。

ガルーガやカリフスも、以前とは比べ物にならない力を得ている。


 だが、カリフスは不安を口にせずにはいられなかった。


【カリフス】「しかし若、領地内の話なら分かりますが……相手は国王ですよ!?本当に宜しいので?」


 その言葉に部屋の空気が再び張り詰める。国王領の問題に手を出せば、政治的な介入となる。

下手をすれば、リュウジの意図しない戦いを引き起こしかねない。


 しかしガルーガの瞳は迷いなく燃えていた。


トマスの告白によって、物語は新たな局面へと進み始めます。

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