表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/178

ー1章ー 14話 「夜に響く遠吠えと、ご近所トラブル解決人」

タケトの旅立ちで少し寂しくなった夜。

静かに眠るはずのトリア村に──突如、爆音のような遠吠えが!

我慢の限界を迎えたリュウジは、夜の森へと乗り込むが……?

登場するのは、まさかの巨大な“お隣さん”!

異世界でも、ご近所トラブルは避けられない──!?


タケトが旅立ったその夜。

トリア村の空は雲ひとつない月明かりに照らされ、風は穏やかだった。


──のだが。


【リュウジ】「……うるせぇ」


 寝ようとしていた俺の耳に、響き渡る遠吠え。


 ……正確には、“2方向から交互に響いてくる”2種類の遠吠えだった。


【リュウジ】「あー、これじゃ寝れねぇよ!!」


 スライムのぬちゃぬちゃ音はまだ耐えられるが、こっちは騒音レベルでうるさい!

 完全に隣人トラブルの音量。

これは、さすがに放置できない。



---


 というわけで、夜中にもかかわらず、俺はひとり森へ向かった。

 村から見える森の入口に差し掛かった時、さらに大きな“ダブル遠吠え”が空を震わせる。


【リュウジ】「やかましいっっ!!」


 怒りのままに森へ突撃すると、そこには……巨大は何かがいた。


 ――デカい。

とにかくデカい。


 それは、人間の2倍はあろうかという、2頭の巨大な狼。

まさに一触即発の状態で対峙していたのだ。


片方は黒銀の毛並みに鋭い目を光らせたオス狼。

もう片方は白と灰の混じった柔らかな毛並みを持つメス狼。


 ……がっつり唸り合ってる。


【リュウジ】「あーあーあー!おーい!そこのふわっふわどもー!!」


2頭の耳がピクッと動いた。

どうやら人間の言葉が分かるようだ。


【リュウジ】「お前ら、ご近所迷惑なんだよ!!こっちは寝ようとしてんの!近隣の方に迷惑はかけない!これ、社会の常識だから!覚えておいてぇ!」


【黒い狼】「貴様……人間か。ここは我らの縄張りだ。貴様には関係のないこと。早々に立ち去るがよい」


【白い狼】「私も同感。これは我らの問題。人間に口出しされる筋合いはない」


【リュウジ】「いやいやいや、寝てる人間に大音量の咆哮はもう“関係大ありなんですけど?!被害者です!被害者!これはもう、当然の権利として首突っ込ませてもらいますからね!!」


 ひとしきり怒鳴ったあと、少し落ち着いて事情を聞くことにした。


【リュウジ】「……で、何があったんだ?ひょとしたら、ミラクルで俺が解決できるかもしれないぞ?どうだ……話してみないか?」


 すると、2頭はようやく戦闘モードを解いて、語り始めた。


【黒い狼】「俺はクラウガ。この森はかつて我らが住んでいた所。そこの中央にある丘は、俺の寝床だった場所だ。だから俺がそこに住むのは当然だろう」


【白い狼】「私はリュナ。その丘は、我々が先に見つけた場所。勝手に占拠されては困る」


 どうやら、かつてこの森に住んでいたそれぞれの群れが、森が再生し始めたのを機に戻ってきたようだ。

 だが、森はまだ十分な広さはなく、寝床の取り合いが始まってしまったらしい。


【クラウガ】「あの丘は俺の物だ!お前たちこそ、別の場所を探せばいい!」


【リュナ】「あなたの無駄吠えの方が問題なのよ!毎晩毎晩、子どもたちが震えているの!」


【リュウジ】「やかましい!!カップルの痴話喧嘩かよッ!」


 二頭がギロッとこっちを睨んできた。


【リュウジ】「あーはいはいごめんごめん。でも話は分かった。だから今から俺の言う事を耳かっぽじってよーく聞くように!要は森が小さすぎて、戻って来たは良いが住むに困ってるって事だろ?なら、俺が森を再生してやるよ!なぁに、お隣さんのよしみだ。気にするな!」


【リュナ】「あはははっ!森の再生……? 本当にできるのかしら?」


【リュウジ】「なら何で、荒れ果てて住処を追われたこの場所に今!森があるというのだね?」


【クラウガ】「…………確かに。」


【リュウジ】「うちにはな、ぬちゃぬちゃで森を蘇らせるプロがいるんだよ!」


【クラウガ】「……ぬちゃぬちゃ……?」


【リュウジ】「そう、ぬちゃぬちゃだ。最高にエコでノンケミカルなやつだ。

 で、どうする?今のままだと、どっちかが傷つくか、両方ボロボロになるかだぞ?」


 二頭は視線を交わし──やがて小さくうなずいた。


【リュナ】「……分かったわ。私たちは争いをやめる。森が広がるのなら、それに賭けるわ」


【クラウガ】「俺も認めよう。だが約束だ。森が増えたら、丘は譲ってもらうぞ。それまでは、お前たちにも使わせてやる」


【リュウジ】「よし、それで決まり!ご近所トラブル、解決だな。あと、これだけは約束してくれ!森が戻るまで遠吠え禁止!」


【クラウガ・リュナ】「………分かった。」


 夜の森に、ようやく静寂が戻る。

 俺はそっと息をついて、村へ帰る準備を始めた。


【リュウジ】「やれやれ……結局、隣人問題ってのは、世界が違っても同じなんだな」


 月明かりの下、2頭の巨獣が少しだけ距離を保ちながら座っていた。



今回もご覧いただきありがとうございました!

ついに登場しました、巨大ウルフのクラウガとリュナ。

いやぁ……遠吠え、やかましいですね(笑)


異世界の森で繰り広げられる“ご近所トラブル”、いかがでしたか?

リュウジの怒鳴り込み、まさかの仲裁スキル発動で、争いは回避!

こういう「異世界あるある」からはちょっとズレた日常の混乱、けっこう好きなんです。


次回はスライムたちの“森再生ミッション”にも触れていくかも…?

新しい魔物キャラとのやり取りも、ぜひお楽しみに!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ