ー5章ー 25話 「子供ギルドと森の外」
丘の上で出会ったウルフの子供たち。
カリムとリオンにとって、それは人間と魔物の子供が初めて心を通わせる瞬間でした。
森を越え、川へ向かう小さな冒険がどんな物語を生むのか──その第一歩です。
カリムとリオンは恐る恐る丘の上へと歩みを進めた。
目の前に立ちはだかるのは、大人の背丈の二倍以上もあるウルフ──リュナ。
子供たちにとっては、まるで伝説の怪物のように思える威容だった。
しかしリュナのお腹のあたりには、寄り添う小さな影があった。
三匹のウルフの子供たちだ。
【リュナ】「この子達は兄弟なの。まだ大人の様な狩りはできないけど、あなた達みたいに元気で可愛いのよ?」
リュナの声は優しく、恐怖心を与えないように配慮されていた。
【カリム】「初めまして、カリムです。あなたのお名前は?」
カリムは一歩前へ出て、恐れることなく問いかける。
幼い頃からおとぎ話が好きだった彼にとって、魔物との対話は不思議と恐ろしいものではなかった。
一方、リオンは魔物との接し方が分からず、カリムの背中に隠れるようにして様子を伺っている。
【ルカ】「僕はルカ」
【ルナ】「私はルナ」
【ルノ】「僕はルノだよ」
三匹の返事に、カリムは安堵の笑みを浮かべた。
【カリム】「僕たちは君たちとお友達になりたいんだ! だから一緒に遊んでくれない?」
数百年もの間人間と魔物の子供が友達になるなど、あり得なかったことだ。
けれどその提案に、子ウルフたちは嬉しそうに尻尾を振った。
【ルカ】「うん、いいよ! 何して遊ぶ? 鹿を追い回す?」
ウルフらしい発想に、カリムは苦笑いを浮かべる。
さすがにそれは人間の子供たちには難しい。
すると、リオンが勇気を出して口を開いた。
【リオン】「ね、ねぇ……森の外で遊んでみない? 遠くには行けないけど、村のそばなら川もここより大きいし、お魚も取れるよ!」
水遊びを提案するリオン。
しかし、森の外へ出たことがない三匹は少し困った顔をした。
【リュナ】「この子たちは森から出た事がないの。私たちは人間と交流をしてこなかったから。でもお友達ができたなら、それも良いかもしれないわね。遠くへは行かないって約束できるなら行ってらっしゃい」
リュナは静かに語った。
ウルフは森で生まれ、森で育つ。
外の世界と関わることはなかった。
だが──今は時代が変わろうとしている。
【ルナ】「いいの? お外で遊んでも」
【ルノ】「人間怖くない?」
【ルカ】「お魚って美味しい?」
三匹が一斉にリュナへ問いかける。
【リュナ】「ここに人間のお友達がいるでしょ? あなた達はいずれ森の外の事も知らないといけない。だから、一緒に遊びながら学んできなさい。人間の世界がどういう所なのかをね」
その言葉に背中を押され、子供たちの胸に冒険心が芽生えた。
【カリム】「ありがとうございます! えっと……」
【リュナ】「リュナよ。この子たちをよろしくね」
【カリム】「はい、リュナさん!」
カリムは深々と頭を下げた。
【カリム】「よし、それじゃ森の外の川へ探検だ!」
【全員】「おー!!」
こうして子供ギルドの初めての遠征が始まった。
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森を流れる小川を辿れば、自然と森の外へ出られる。
外に出た途端、目に飛び込んできたのは、大人たちが忙しなく畑を耕す姿だった。
【ルカ】「ねぇ、あの人たちは何をしているの?」
【カリム】「あの人たちは畑で野菜を作ってるんだよ。僕たち人間は色々な物を食べるんだ」
ルカは興味津々に身を乗り出す。
【ルカ】「へー、そうなんだ! なら、川の魚も食べる?」
【カリム】「うん、食べるよ。でも今は忙しいからお魚を取ってる時間がないと思うよ」
領地の発展のため、村の大人たちはそれぞれの仕事に追われている。
魚を取る余裕など、今はなかった。
【ルカ】「なら僕たちで魚取って皆にあげようよ!」
【リオン】「ルカ……それ良いよ!そうしよう!」
ルカの提案に、子供たちの目が輝いた。
こうして「遊び」はいつしか「任務」へと変わっていく。
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子供ギルドの次なる挑戦は、川での魚取り。
それは小さな遊びでありながらも、やがて村人と魔物を繋ぐ新たな絆となる一歩だった。
子供同士だからこそ築ける絆。
それは遊びの延長でありながら、確かな未来への兆しとなっていきます。
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