ー5章ー 24話 「子供ギルドの初挑戦 ― ウルフの森へ」
カリムが子供ギルドマスターとして最初に挑むのは、「魔物と人間の子供たちが仲良くなること」。
ぎこちなくも真剣に、リオンと共に踏み出すその一歩は、やがて大きな未来へ繋がる始まりでした。
のどかな朝。
トリア村の空には小鳥の囀りが響き、澄んだ空気が一日の始まりを告げていた。
子供ギルドマスターとして任命されたカリムに課せられた最初の課題は「魔物と人間の子供たちと仲良くなること」だった。
城で暮らしていた頃のカリムには友達と呼べる存在がいなかった。
だからこそ彼は、まず村の子供たちと顔見知りになることから始めようと決めた。
【カリム】「こんにちは!初めまして、カリムって言います!君は?」
少しぎこちない挨拶。
慣れていないせいで、言葉がどこか固い。
けれど相手は子供。
そんな細かいことを気にする年齢ではなかった。
最初に仲良くなったのは、ユイナの親戚である男の子──リオンだった。
カリムは親であるグレイストと離れて暮らすことになっていた。
罪を犯した彼らと共にさせるわけにはいかないからだ。
今はリュウジの提案でじいさんの家に身を寄せている。
トリア村へ越してきた当時、じいさんに村を案内してもらう中で、リオンと自然に出会ったのだ。
【リオン】「カリムはウルフ車って知ってる?あれ凄いよな!カッコイイ!」
【カリム】「リュウジさん達が乗ってたのだね?確かにあれはカッコイイね!」
リオンは男の子らしく、力強くてかっこいいものに興味津々だ。
その話題にカリムも頷き、すぐに意気投合していった。
ふと、カリムの脳裏にひらめきが走る。
【カリム】「そうだ!……ねぇリオン、ウルフの森に行ってみない?子供ギルドは魔物の子供とも仲良くしないといけないんだ。だからまずはウルフの子供と仲良くなろうよ!」
唐突とも思える提案。
けれどそれは、彼がギルドマスターとして抱いた最初の挑戦だった。
【リオン】「ウルフの子供かぁ……噛まないかな?」
不安そうに眉を寄せるリオン。
無理もない。
人間の子供が魔物と一緒に遊ぶなど、経験したことがなかったのだ。
せいぜい、村にいる人畜無害なスライム程度だろう。
【カリム】「んー。お話しが出来れば噛まないと思うよ!」
根拠はなかった。
けれどカリムはまっすぐな目でそう言い切った。
その言葉に押され、リオンも勇気を振り絞る。
【リオン】「……分かった!カリムと一緒だから大丈夫だよね!なら早速行ってみよう!」
二人は顔を見合わせ、小さく頷くとウルフの森へと足を踏み入れた。
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森の中はしんと静まり返っていた。
時折吹き抜ける風に葉が揺れ、川のせせらぎや鳥の声が心地よく耳に届く。
少しひんやりとした空気に、二人は身を縮めながらも歩みを進めた。
【リオン】「何か探検してるみたいだね!あ、そこの木の棒を武器にしよう!」
【カリム】「僕はあっちの長いのにしよっと!」
恐怖心もあったはずなのに、気づけばまるで冒険ごっこのような気分になっていた。
不安は次第に消え、笑顔が自然にこぼれていく。
やがて、森を抜けた先の小高い丘に、堂々とした影が見えた。
【リオン】「えっ!?ウルフってあんなに大きいの!?」
リオンが驚きの声を上げる。
そこにいたのは、ウルフの長の一匹──リュナだった。
白銀の毛並みを風になびかせ、鋭い瞳を持ちながらも、どこか母性的な雰囲気を纏っていた。
リュナは子供たちの声に気づき、ゆっくりと顔を向ける。
【リュナ】「あなた達、トリア村の子供?この森に遊びに来たの?」
その声は思いのほか優しかった。
威圧的どころか、まるで母が子を諭すような穏やかさだった。
【カリム】「う…うん!リュウジさんからの課題で、魔物の子供たちと仲良くならないといけないんだ!だからウルフの子供たちが居ないかなって探検してたの!」
怒られるのではと怯えながらも、必死に説明するカリム。
リュナはその言葉を聞き、ふっと柔らかく微笑んだ。
【リュナ】「そう、リュウジ様が……なら、この子たちと遊んでくれない?」
リュナが丘の上へと二人を招き入れる。
そこには、カリムたちより少し小さなウルフの子供が三匹、無邪気にじゃれ合っていた。
毛並みはまだ柔らかく、大人の犬ほどの大きさ。
その姿は恐ろしさとは程遠く、愛くるしさに満ちていた。
リオンもカリムも思わず息を呑み、同時に顔を見合わせる。
想像していた「怖いウルフ」はそこにはいなかった。
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こうして、カリムとリオンの子供ギルドとしての挑戦が幕を開けた。
魔物と人間の子供たちが交わり、同じ時間を過ごすことで芽生える絆。
それはまだ小さな一歩に過ぎない。
だが、この瞬間がやがて大きな未来を形作る礎となることを、二人はまだ知らなかった。
人間の子供と魔物の子供たちが触れ合う姿は、温かくも新鮮な場面になりました。
小さな交流がどのように広がっていくのか──ぜひ楽しみにしていてください。
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