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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー5章ー 24話 「子供ギルドの初挑戦 ― ウルフの森へ」

カリムが子供ギルドマスターとして最初に挑むのは、「魔物と人間の子供たちが仲良くなること」。

ぎこちなくも真剣に、リオンと共に踏み出すその一歩は、やがて大きな未来へ繋がる始まりでした。

のどかな朝。

トリア村の空には小鳥の囀りが響き、澄んだ空気が一日の始まりを告げていた。


子供ギルドマスターとして任命されたカリムに課せられた最初の課題は「魔物と人間の子供たちと仲良くなること」だった。


城で暮らしていた頃のカリムには友達と呼べる存在がいなかった。

だからこそ彼は、まず村の子供たちと顔見知りになることから始めようと決めた。


【カリム】「こんにちは!初めまして、カリムって言います!君は?」


少しぎこちない挨拶。

慣れていないせいで、言葉がどこか固い。

けれど相手は子供。

そんな細かいことを気にする年齢ではなかった。


最初に仲良くなったのは、ユイナの親戚である男の子──リオンだった。


カリムは親であるグレイストと離れて暮らすことになっていた。

罪を犯した彼らと共にさせるわけにはいかないからだ。

今はリュウジの提案でじいさんの家に身を寄せている。

トリア村へ越してきた当時、じいさんに村を案内してもらう中で、リオンと自然に出会ったのだ。


【リオン】「カリムはウルフ車って知ってる?あれ凄いよな!カッコイイ!」


【カリム】「リュウジさん達が乗ってたのだね?確かにあれはカッコイイね!」


リオンは男の子らしく、力強くてかっこいいものに興味津々だ。

その話題にカリムも頷き、すぐに意気投合していった。


ふと、カリムの脳裏にひらめきが走る。


【カリム】「そうだ!……ねぇリオン、ウルフの森に行ってみない?子供ギルドは魔物の子供とも仲良くしないといけないんだ。だからまずはウルフの子供と仲良くなろうよ!」


唐突とも思える提案。

けれどそれは、彼がギルドマスターとして抱いた最初の挑戦だった。


【リオン】「ウルフの子供かぁ……噛まないかな?」


不安そうに眉を寄せるリオン。

無理もない。

人間の子供が魔物と一緒に遊ぶなど、経験したことがなかったのだ。

せいぜい、村にいる人畜無害なスライム程度だろう。


【カリム】「んー。お話しが出来れば噛まないと思うよ!」


根拠はなかった。

けれどカリムはまっすぐな目でそう言い切った。

その言葉に押され、リオンも勇気を振り絞る。


【リオン】「……分かった!カリムと一緒だから大丈夫だよね!なら早速行ってみよう!」


二人は顔を見合わせ、小さく頷くとウルフの森へと足を踏み入れた。



---


森の中はしんと静まり返っていた。

時折吹き抜ける風に葉が揺れ、川のせせらぎや鳥の声が心地よく耳に届く。

少しひんやりとした空気に、二人は身を縮めながらも歩みを進めた。


【リオン】「何か探検してるみたいだね!あ、そこの木の棒を武器にしよう!」


【カリム】「僕はあっちの長いのにしよっと!」


恐怖心もあったはずなのに、気づけばまるで冒険ごっこのような気分になっていた。

不安は次第に消え、笑顔が自然にこぼれていく。


やがて、森を抜けた先の小高い丘に、堂々とした影が見えた。


【リオン】「えっ!?ウルフってあんなに大きいの!?」


リオンが驚きの声を上げる。

そこにいたのは、ウルフの長の一匹──リュナだった。

白銀の毛並みを風になびかせ、鋭い瞳を持ちながらも、どこか母性的な雰囲気を纏っていた。


リュナは子供たちの声に気づき、ゆっくりと顔を向ける。


【リュナ】「あなた達、トリア村の子供?この森に遊びに来たの?」


その声は思いのほか優しかった。

威圧的どころか、まるで母が子を諭すような穏やかさだった。


【カリム】「う…うん!リュウジさんからの課題で、魔物の子供たちと仲良くならないといけないんだ!だからウルフの子供たちが居ないかなって探検してたの!」


怒られるのではと怯えながらも、必死に説明するカリム。

リュナはその言葉を聞き、ふっと柔らかく微笑んだ。


【リュナ】「そう、リュウジ様が……なら、この子たちと遊んでくれない?」


リュナが丘の上へと二人を招き入れる。

そこには、カリムたちより少し小さなウルフの子供が三匹、無邪気にじゃれ合っていた。


毛並みはまだ柔らかく、大人の犬ほどの大きさ。

その姿は恐ろしさとは程遠く、愛くるしさに満ちていた。


リオンもカリムも思わず息を呑み、同時に顔を見合わせる。

想像していた「怖いウルフ」はそこにはいなかった。



---


こうして、カリムとリオンの子供ギルドとしての挑戦が幕を開けた。

魔物と人間の子供たちが交わり、同じ時間を過ごすことで芽生える絆。

それはまだ小さな一歩に過ぎない。


だが、この瞬間がやがて大きな未来を形作る礎となることを、二人はまだ知らなかった。


人間の子供と魔物の子供たちが触れ合う姿は、温かくも新鮮な場面になりました。

小さな交流がどのように広がっていくのか──ぜひ楽しみにしていてください。

気に入って頂けたら、評価やレビュー・一言コメントなど、お気軽にお寄せください!お待ちしております!

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