表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/178

ー1章ー 13話 「別れの朝に、厨二が響く」

今日はタケトの旅立ちの朝。 村に吹く風は少し冷たく、そして、少しだけ寂しい。


……でも、俺は思う。


これは、ただの別れじゃない。

それぞれの場所で、自分にできることをやる。

そんな「新しい始まり」なんだと。


ただし。


そんな感動をぶち壊すのが、この男──リュウジである。


 朝焼けのトリア村は、少し肌寒い風と静かな空気に包まれていた。

 ……そう、今日はタケトの旅立ちの朝だ。


 俺はまだ少し眠い目をこすりながら、村のはずれにある広場に立っていた。

 手には……そこら辺に落ちていた長い木の棒。


【リュウジ】「……よし、練習するか。どうせなら“それっぽく”構えて……」


 俺は棒を構え、見よう見まねで槍を扱うように振る。

ただ、完全に自己流だ。

俺にそんな武術経験があるわけでもない。

しかし!俺には夢があった…。

幼い頃テレビで見たあの波動……または宇宙を感じる事で繰り出されるアレを……。

いつかは出せると信じて練習した幼き日々を……。


【リュウジ】「ドラゴンファングスピアー!!」


 ──叫んだ。思いきり。


 朝の静寂をぶち破る俺の声は、トリア村中に響いた……と思う。


 その時、背後からひとつの低い声が飛んでくる。


【タケト】「……おい、リュウジ」


【リュウジ】「うおぉっ!?タケト!?いつから見てた!?」


【タケト】「……ドラゴンファングスピアーって何?」


【リュウジ】「いや……あの……勢いで」


【タケト】「……お前、もしかして厨二病発症したのか?」


【リュウジ】「ちょっ!?おま……!?」


そこにもう1人の足音が近ずいてくる。


【じいさん】「なんじゃリュウジ、病を患ったとな!?それは心配じゃ…」


【リュウジ】「いや違うからね!?病名じゃないから!なんなら世代の呪いみたいなもんだから!」


【じいさん】「それにおぬし、ドラゴンファンタジーストリップとは何なんじゃ?」


【リュウジ】「いや、もはや意味変わりすぎてるし、何か変態っぽいから忘れて欲しいんですけど!?」


 朝から非常に恥ずかしい空気になってしまった。

 だが、それでもタケトは笑いながら言う。


【タケト】「……いい名前だったぞ」


【リュウジ 】「嘘つけっ!」


【タケト】「……いや………マジで……ププッ」


【リュウジ】「おまっ…!?バカにしてるだろ?」


【タケト】「ちょっとな!あははは!」


 そんな軽口を叩きながら、タケトは荷物を背負い直す。


【タケト】「じゃあ、行ってくる。ミズハ村、待ってるだろうからな」


【リュウジ】「ああ。タケト、気をつけてな。色々大変だろうけど、俺もたまには顔出すからさ!」


【タケト】「任せろ。このハンマーで必ずミズハ村を復活させてみせる。トリア村みたいにな!」


【村長】「では、タケト。これを持っていくがよい。トリア村の誇る干しイモじゃ!」


見るからに重そうな袋をタケトに手渡す。


【タケト】「うっ……これは重い。だが、ありがたい……!」


 タケトは干しイモの束が入った袋を荷に追加し、よろめきながらも前を向く。


【タケト】「じゃあな、リュウジ。また会おうぜ。近いうちに!」


【リュウジ】「ああ。またな、相棒!」


 タケトが背を向けて歩き出す。

 その背中に、朝日が差していた。


 その姿を見送った俺は──もう一度、さっきの棒を手に取った。


【リュウジ】「……厨二病!?何をおっしゃる…ここは異世界だぞ!?幼き頃に夢見たアレが繰り出される日もそう遠くはないのだよ……(たぶん)」


 そう言って、もう一度だけ構える。


【リュウジ】「──ドラゴンファングスピアーッ!!」


 空振りだった。

 棒の先っぽが地面に引っかかって、思いきり転んだ。


【リュウジ】「いってぇぇ……ッ!!やっぱり棒じゃダメか……」


 そんな朝だった。

 少し寂しいけど、どこか温かい──新たな一歩の、朝だった。


お読みいただきありがとうございました!


今回は、タケトの旅立ち――

…のはずが、気づけばリュウジの中二病が大炸裂。


あの棒を構えた時の真剣な顔、本人はいたって本気なんです。

(周囲からは全力の冷たい視線を感じていたことでしょう…)


でも、ふざけたやり取りの中にも、

「相棒との別れ」や「信頼」が見えると嬉しいな…なんて、

作者もちょっとセンチメンタルに書いてました(笑)


次回から、タケトのミズハ村編が本格始動です!

引き続き、ぜひお楽しみください!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ