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不遇だったアラサーの俺が異世界転生させられたら  作者: 榊日 ミチル


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ー5章ー 14話 「樹海の小さき守護者」

樹海の外を探索中、予想もしなかった“小さな存在”との出会いが待っていました。

見た目は愛らしいのに、その口から出るのは意外な一言……?

穏やかな空気の裏で、竜涙石にまつわる物語がまた一歩動き出します。


樹海の中から、かすかに「カサカサ……」と草の擦れる音が響いた。

風のせいではない。

何かが確実に近づいてくる。


じっと息を潜め、リュウジとユウは音の方を凝視する。


 やがて、濃い緑の葉の間から、ちょこちょことした影が姿を現した。

 それは――人間の脛の高さしかない、小さな存在だった。


 二人の視線と、その小さな者の視線が、ぴたりと重なった。

 間に流れる一瞬の沈黙。


 そして――


【リュウジ】【ユウ】【小人】「ギィャァァァーー!!」


 三者三様の絶叫が、樹海の静寂を破った。

 動物か何かだと思い込んでいたリュウジとユウ。

 そして、この辺りに人間が居るはずがないと思っていた小人。

 互いの想定外がぶつかり合い、しばしの騒音劇が繰り広げられた。


 やっと声が止み、先に口を開いたのは、小さな者だった。


【小人】「お……お前たち、森を荒らしにきたのか……!?」


 声が少し震えながらも、警戒心を滲ませている。

 ここは一面が荒野に囲まれた土地。

その中にぽつんと存在する樹海だ。

 外から来た者が「荒らしに来た」と疑うのは当然かもしれない。


【リュウジ】「いやいや、違うって。城の上からここが見えて……荒野に森だろ?明らかに怪しいじゃん!スライムでもこんな規模の森作れないぞ!?だから見に来ただけだ。荒そうだなんて思ってねぇよ」


 必死に身振り手振りをして、リュウジは自分たちの目的を説明した。


【ユウ】「小人さんはこの森に住んでいるのよね? 何でここだけが荒野にならなかったのか教えてくれない?」


 ユウは一歩進み出て、冷静に問いかけた。

 樹海の存在自体が不自然だ。

この謎を知ることができれば、何かの手がかりになるかもしれない。


【コロボックル】「小人って言うなっ! 俺はコロボックルだ!……この森はエルフのじいさんが魔法で荒野にならないように守ってるんだ。だからずっと昔から変わらずに存在してるんだ」


 その答えに、リュウジの目がカッと見開かれる。


【リュウジ】「おい……今、魔法って言ったか!? 魔法ってやっぱりあるんだな!?」


 これまでリュウジが目にしてきたのは、魔物の不思議な技や現象ばかりで、「魔法」と呼べるものは一度もなかった。

 だからこそ、今その言葉を聞いた興奮が収まらない。


【コロボックル】「いや、魔法くらいあるだろっ!」


 当たり前のように言い放つコロボックル。


【リュウジ】「そんな常識みたいに言うな! 見た事ないんだから。それとも何か? おたくが魔法はあるって証明できるのかな? ん?」


 挑発するような笑みを浮かべ、嫌味っぽく言うリュウジ。


【コロボックル】「当たり前だろ!? 俺は森の精霊、コロボックル様だぞ? 目ん玉かっぽじってよく見てやがれ! 腰抜かすなよ!?」


 そう言って、コロボックルは胸を張り、両手を空へとかざす。


【コロボックル】「悠久の時を統べる森の息吹よ。森の精霊たる我が声に応え、嵐となりて目の前の不浄を吹き飛ばせ! ウィンド・ストーム!!」


 次の瞬間、リュウジの前で風が巻き起こり、小さな竜巻のように渦を巻いた。


【リュウジ】「ぶわぁぁぁーー!」


 叫びながら目を細めるリュウジ。

 しかしその威力は――シャツが少しめくれる程度。


【リュウジ】「……って扇風機の強くらいかよ!」


 思わず突っ込むと、コロボックルは鼻で笑った。


【コロボックル】「ふふっ。本気でやったら、お前さんが吹っ飛んでしまうからな……って……んん!?」


 その瞬間、彼の目が驚愕に見開かれる。

 風に煽られ、リュウジの首元から、銀色の鎖に吊られた宝石がちらりと覗いたのだ。


【コロボックル】「そ……それは…竜涙石!?……そんなまさか……!」


 竜涙石――ドラゴンが千年に一度だけ流す涙から生まれる秘宝。

 精霊であるコロボックルも、その存在と意味を知っていた。


【リュウジ】「ったく。風なんか起こすからバレちまったじゃねぇかよ。隠してたのに……。それよりも、マジで魔法ってあるんだな! すげぇ…!」


 竜涙石を隠していたことよりも、魔法が実在することに感動するリュウジ。


【ユウ】「ねぇ、竜涙石って? そのネックレス、そんなに凄い物なの?」


 転生して間もないユウは、その価値も経緯も知らない。


【リュウジ】「ああ、これはドラゴンを助けた時、お礼で貰ったんだよ。でもこれのせいで魔物たちがやたら俺を崇めるから、バレないように隠してるんだよ」


【コロボックル】「何と……フォレストドラゴン様を助けたと……!?……何という人間なんだ! いや、ドラゴンの同胞様とお呼びするべきか」


 感嘆の声を上げるコロボックル。

その反応は、他の魔物と何ら変わらなかった。


【リュウジ】「またこの反応になっちゃうんだよなぁ……もう慣れたけどさ」


 ため息混じりに肩をすくめるリュウジ。


【コロボックル】「ドラゴンの同胞様……お急ぎでなければ、是非ともエルフの長老に会って頂けないでしょうか?」


【リュウジ】「まぁ良いけど、会ってどうするんだ?」


【コロボックル】「我々樹海の民は、外界との接触を避けてきたのですが……少し困った事になっておりまして」


 何やら事情があるらしいが、詳細はまだ明かさない。


【ユウ】「良いんじゃない? ここで樹海を眺めていても仕方ないし。それに、ドラゴンの同胞? だから話したいのかもしれないし」


 ユウは会話から、これはリュウジだからこその依頼だと察した。

樹海の謎も、この先にあるかもしれない。


【リュウジ】「分かった、なら案内してくれ。俺にできる事かは直接話を聞いてから決めるけど、良いか?」


【コロボックル】「もちろんです! では入口を作りますので、少しお下がりください」


 コロボックルが両手をかざすと、侵入を阻んでいた草木が左右に分かれ、一本の道が生まれる。


【リュウジ】「マジかよ……これも魔法か!?」


 驚きながらも、リュウジとユウは緑の回廊を進み、樹海の奥へと足を踏み入れた――。


小さな森の精霊・コロボックルとの出会いが、エルフたちの樹海へ繋がる扉となりました。

竜涙石を巡って、新たな縁と試練が同時にやってくる予感です。

これから先、リュウジはどんな選択を迫られるのか――。


今回もお読みいただきありがとうございます!

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