ー5章ー 8話 「商業ギルド、第一歩の食材調査」
商業ギルドの初仕事は、温泉にお店を出す計画!
飲み物、軽食、宿泊施設…と夢は膨らむものの、食材はほぼイモ!?
ユイナたちは領地の食材調査に乗り出します。
トリア村の酒場には、朝から人と魔物が集まっていた。
集まっていたのは商業ギルドの会議。
ギルドマスターのユイナを中心に、女王スライム、ゴブリン、スライム、村人、街から来た商人など、多種多様な顔ぶれだ。
【ユイナ】「じゃ、会議を始めるわよ!リュウジさんが言ってた温泉にお店を出すって計画ね!」
ユイナの声が空気を引き締めた。
今回の議題は、ギルドとしての“初仕事”として、温泉に新たな店舗を出すことについて。
【女王スライム】「タケトにお願いをして屋台は一つ作ってあるわ。でもそれだけじゃ味気ないでしょ? せっかくの癒しスポットなんだもの……。賑やかにしたらみんなが喜ぶんじゃないかしら?ぷるるん♪」
どうやら、女王スライムはこの構想をかなり前から抱いていたようだ。
【ユイナ】「毎日温泉には行ってるけど、お風呂上がりに飲み物がないのは問題だと思ってたのよ」
【街人A】「最初は軽食なんかがあれば良いけど、本格的な食事ができるお店があっても良さそうだな!」
【村人A】「ギルドが出来たことで、遅くまで働いている人も出て来るだろうから、宿泊施設もあった方が良いんじゃないかしら?」
【ゴブリンA】「温泉でしか買えない商品も必要だな!」
【スライムA】「まずは領地にある食材を調べるのが必要だ!」
次々と飛び出すアイデア。
どれも、領地の未来を想像したものばかりだった。
【ユイナ】「色々意見が出たわね!まず建物が必要な案は、建築ギルドに依頼しないといけないけど、向こうも領主の家を建てるのが急務なはずよ!だから、その依頼は落ち着いてからにしましょう」
ユイナは他のギルドの状況もきちんと把握しており、無理な進行は避けるよう提案する。
【ユイナ】「まずは領地の食材調査から始めましょう!お店を出すにしても、どんな食材があるのかを知らないと始まらないわ!」
【女王スライム】「そうね、トリア村だけじゃ蒸かしイモくらいしかだせないわ♪」
会場がくすくすと笑いに包まれた。
【ユイナ】「決まりね!じゃぁさっそく調査しましょ!」
【全員】「オーーーッ!」
かくして、会議に集まっていた面々は、各地へと散っていった。
ユイナはお店のあるトリア村に残ったまま、調査を始めた。
【ユイナ】「この村だとウルフさんの森からお肉でしょ? 村の畑からサツマイモ、ジャガイモ、里芋。それと大麦、小麦か……。ほぼイモじゃない!」
思わず一人でツッコミを入れるユイナ。
彼女は、ふと「新しい畑」が作られると聞いていたことを思い出し、現地へと足を運んだ。
そこには、ナツキとじいさんが、何やら話している姿が見えた。
【ナツキ】「水路の件、お願いしてきましたよ!もうすぐ作業員さんが来てくれます」
【じいさん】「おお!ご苦労さんじゃったの。これで新しい畑が作れるというものじゃ!」
【ユイナ】「ナツキー!」
元気な声で呼びながら近づいてくるユイナ。
【ユイナ】「ねぇ、この畑って何を作る予定なの?」
【じいさん】「もちろん、イモじゃ!」
【ユイナ】「じいさんには聞いてない!」
【じいさん】「うぅぅぅ…。昔は可愛らしかったのにのぉ…」
軽く一喝したあと、ユイナはナツキの方へ向き直る。
【ユイナ】「で?農業ギルドとしてはどんな作物を予定してるのかしら?」
【ナツキ】「そうね、まだコレっていうのは決まってないけど、土壌や立地にあった作物を作りたいと思ってるよ!そのためにはスライムちゃんたちに種を探してもらわないとね」
スライムたちは草などを食べる時、土の中の有機物を取り込み種を体内に保持することがある。それが発芽のきっかけとなるのだ。
【ユイナ】「なるほどね……。なら少し時間がかかりそうね」
【ナツキ】「ひとまずは、ホノエ村でまだ作ってない野菜なんかもあるから、それを作ってみようと思ってるよ!」
ホノエ村で作られている作物はほんの数種類。
まだまだ育てていない作物はたくさんあった。
【ユイナ】「じゃぁ、イモ以外を育てるのね!?やったー!!」
飛び上がって喜ぶユイナ。
その横で、しょんぼりと肩を落とすじいさん。
【じいさん】「新種のイモは見つかっておらんのか……?」
【ナツキ】「おじいさん、ごめんなさい……新しいイモは見つかってないの」
【ユイナ】「イモはたくさんあるからいいでしょ!」
決定打の一言がじいさんの胸に突き刺さる。
だが、そんなやり取りを経て、商業ギルドの食材調査計画は本格的に動き出した。
ギルドの第一歩は、イモの壁を越えるところから始まるのかもしれない。
ギルドの第一歩は、どうやらイモの壁を越えるところからのようです。
領地の未来を変える食材が見つかるのか…!?
ぜひ、続きもお楽しみに。
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