ー1章ー 9話 「癒しのぬちゃぬちゃ、出動!」
ドラゴンを助ける鍵は、まさかの“ぬちゃぬちゃ”!?
異世界の救世主は、意外と柔らかくてぷるぷるしていた。
ドラゴンと遭遇したその後、俺はミズハ村にいた。
一度この事態を村長のガンジに知らせるためだ。
村の広場には、昨日届けた支援物資を分け合う村人たちの姿があった。
【村人A】「おかえりなさい、リュウジさん!」
【村人B】「ありがとう、本当に助かったよ!」
村人の温かい声に迎えられつつ、俺たちは村長ガンジのもとへ。
【リュウジ】「ガンジさん!お願いがあるんだ!」
【ガンジ】「ん?どういう事じゃ!?」
慌てるリュウジの姿を見て、ガンジの表情が変わる。
【リュウジ】「ドラゴンが槍で負傷している!突然暴れるかもしれないから、村の人を近づけさせないで欲しい!」
【ガンジ】「何じゃと!?ドラゴンが……!」
驚きと恐怖、不安が入り交じった表情を浮かべるガンジ。
【リュウジ】「とにかく1度トリア村に戻って対処方法を見つけてくるから!」
無用な被害が出ないように、俺は大岩で起こっている事態を伝え、急ぎトリア村へと向かった。
村に着くなり、急いでじいさんを探した。
【リュウジ】「おーい!じいさーん!いるかー!」
【じいさん】「なんじゃリュウジ、そんなに慌てて。何かあっのかの?」
俺はミズハ村での出来事を手短に話した。 川辺で見つけた傷ついたドラゴンのこと、助けを必要としていることを。
【じいさん】「ふむ……ドラゴンとな。おぬしはまた面白いモノに首を突っ込んだのう。はっはっは」
【リュウジ】「いや、笑いごとじゃないから。放っておいたら、どうなるかわからないんだ!」
【じいさん】「うむ、お前さんのことじゃ。そのドラゴンを何とかしてやらなんだら、問題が解決せんという事なのじゃろう」
【リュウジ】「察しがよくて助かるよ」
じいさんは、ドラゴンの信ぴょう性よりも、俺の真剣さに理解を示してくれたのだろう。
【じいさん】「そういえば昨日、ちょっとした事件があっての」
【リュウジ】「事件?」
【じいさん】「例のぬちゃぬちゃの上を通ろうとした村人が、足を滑らせて転んでしまってな」
【リュウジ】「うわぁ……アレ滑るからなぁ……ムダに」
【じいさん】「そうなんじゃ。それで膝を擦りむいたんじゃが……そこへ、緑色のスライムが現れてな」
じいさんは、ちょっと感心したように顎を撫でる。
【じいさん】「なんと、あやつが“ぬちゃっ”と出してきた液体を塗ったら、たちまち痛みが引いて、傷が癒えてしまったらしいのじゃ!」
【リュウジ】「え、それ……薬草の効果があるぬちゃぬちゃ!?」
(それだ!それなら何とかなるかもしれない!)
【リュウジ】「ありがとう!じいさん、何とかなるかもしれない!」
【じいさん】「うむ、気をつけるんじゃぞ」
じいさんの別れ、俺は即座に女王スライムのもとへ走った。
【リュウジ】「女王スライム! 緑色のスライムを呼んでほしいんだけど!」
【女王スライム】「はいはーい、今呼ぶねー♪」
ぷるんと軽やかな音とともに、緑スライムがやってきた。
【リュウジ】「こんにちは。あのぅ、君のぬちゃぬちゃって……薬草の効果があるって本当か?」
【緑スライム】「ぷる♪ あるよー。特別な草、たくさん食べたから、ぬちゃぬちゃに混ざってるの」
【リュウジ】「そのぬちゃぬちゃ、ちょっとだけ分けてくれないか?」
【緑スライム】「いいよー! 今出すねぇ!」
そう言うと、緑スライムはくるりと回転し、ぷるぷる震えながら小さな瓶にぬちゃぬちゃを注ぎ始めた。
【リュウジ】(……まさか、ぬちゃぬちゃをこんなにありがたがる日が来るとは……)
【リュウジ】「ありがとな、緑スライム。これがあればドラゴンを助けられるかもしれない!」
【緑スライム】「ぷるぷる、がんばってねー♪」
ぬちゃぬちゃの詰まった小瓶を手に、俺は再びドラゴンのもとへと走り出した。
空は高く、太陽は真上にあった。
日陰もない荒野を、俺は一心不乱に走り続けた。
ドラゴンを救うために奔走するリュウジ、そしてまさかの救世主・緑スライムのぬちゃぬちゃ。
読者の皆さまは、まさかここで“ありがたがる日が来るとは……”と共感いただけたでしょうか?(笑)
実はこの回、書いてる本人も「ぬちゃぬちゃ」の打鍵数が過去最高を記録しました。
癒しと奇跡のぬちゃパワーが、物語の流れをまた一歩進めてくれます。
次回はいよいよドラゴンとの本格的な交流が……?
引き続き、ふざけたようで本気な世界をお楽しみください!




