スキル⚪︎⚪︎持ち転生令嬢、国外追放される 仲間と一緒にのんびり暮らします♪
誤字脱字には気をつけていますがあるかも・・・。
「次代の国王にるなる俺に逆らう奴は不要!
さっさと出ていけ!!」
(この国から出ていける!やった!)
◇◆
(体格はいいけど厳つい顔ね。あの王様。
王妃は宝石ジャラジャラくっつけてるし第1王子はまたレティ見てる・・・鼻の下伸ばしてだらしない。馬鹿丸出しだわ。こんなのが私達と一緒の戦場で指揮を撮るなんて最悪)
国王の演説を聴いている私、エミリア・アンダーソン(ど田舎の男爵令嬢)は心の中で思いました。
学園の卒業式&成人の儀式終了後王宮へと移動し、王が演説をし始めたけど・・・
「我が国に仇なす者共も同盟を結んで我が国の悪評を言いふらしておるようじゃが笑止!!
邪悪な魔族や魔族と共存を、などと世迷言をいう獣人共や追随する連合国に正義の鉄鎚を!!」
(国が戦争で色々酷い事をしたなんて皆知ってるし、ここにくる途中で見た文官達も噂通り。
こんな戦争参加したくないしスキルがバレたら1番困る、一生飼い殺しがオチよね。
やっぱ隙を見てトンズラしましょうかねぇ)
この国は長い間魔族や獣人、他の人間の国と戦争をしています。
魔族とは魔法に長け、人間の数倍は生きる種族で、殆どの者は見た目が人間と変わりません。偶に体の一部に変化(頭にツノが生えたり皮膚が変化する)したり目や耳が遥かに良くなる者もいるそうですが力が強い者がそうなるそうです。
獣人は魔法を使うことはあまり得意ではありませんが、生まれ持った身体能力が人間より高い、
動物の体と能力をその皆宿す種族。寿命は人間と同じだそうですが、体に宿る能力が高ければ高いほど
寿命は短くなるそう。見た目が動物に近ければ近いほど短命。医学の進歩で50年は生きられるようになったとか。
それと私達と同じ人間。魔族や獣人と仲良くし、共存共栄をしている国々。
私が住むリンデイル王国は魔族と共存は認めず、共存しようとする国と敵対しているのです。
魔族殲滅を掲げ周辺国を説得し戦争を始めましたが、そのうち魔族殲滅に疑問を持った国、魔族を理解し共存共栄を図ろうとし離反した国、付き合いが表面上だけしかなかった獣人国とも敵対するようになりました。
そしてその国々が魔族と手を組み敵対。
大国とは言え敵も増え、すぐ終わるかと思われた戦争も長引く事に。
何か打開策は無いかと国は考え、思いつきます。
人間が生まれながらにもっている[スキル]。
魔族や獣人も持っているがスキルの質や種類は人間のほうが優れているそれ。
(人間の持つスキルが質や種類が優れているのは魔族や獣人より身体能力や寿命、魔法などで劣る人間にせめてもと神が与えたと言われている。)
産まれてすぐに判定されるそれに目をつけ、
戦向き・強力・国にとって有用だと判断されたスキル待ち達を貴族は「貴族学園」平民は「学校」で普通の授業と並行して[スキル]や魔法を徹底的に鍛え、
卒業と同時に行われる成人の儀を経て、戦地へと送って戦わせるという事をするようにしました。
平凡なスキル待ちの貴族や平民は学園や学校卒業し成人の儀式終了後、各々の道を進めます。
と言っても長い間の戦争で疲弊しているので生きていくのも大変なのですが。
近年はこの世界と異なる世界=異世界から召喚し、
最前線へ送って戦わせるという事もするようになりました。
とある魔術師の研究で、異なる世界がいくつもある事は確認されていました。
どのような世界なのか、そこにすむ者達はどのような生活をしているか等知るため異世界人を召喚する魔術を完成させましたが、その技術に目を付けた時の王が戦力補充のために使い、召喚された異世界人も強力なスキルを持っている事が確認された為に、彼ら彼女らにこの世界の事や戦争の事を話し、協力を仰いだそう。
(召喚されたけど帰る魔法は開発されてないから帰れない、この国で生きていくしかないが時の王が戦争に参戦しないと衣食住保証しないと脅したので必然的に協力するしかなかったという)
戦闘向きではないスキルを持った者もいるそうだがその場合はスキルを活かして監視付きで生活してもらっている。
さてその異世界とおぼしき人達が離れた所に十数人ほど。
怯える者や怒りをあらわにする者、戸惑っている者何故か笑っている者がいる。
「紹介しよう!我々と共に戦ってくれる異世界の救世主達だ!今年は強力スキル待ちは4人ほどだが他の者達もなかなかだ!
この国の常識などは知らないので皆で教えてやってほしい!」
救世主って言ってる。強力スキル持ちと言っていたけれどういうスキルなんだろう?気になる。
スキルが気になった私はいつものように観察しようとして
「おい王サマ!!!
いきなり光に包まれたと思ったら異世界です、あなたは選ばれました、選ばれし者達と戦ってもらいますっていってローブの奴らがなんか丸い物持った後勝手に盛り上がって、こっちに気付いたらと思ったらあなたは[ウエポンマイスター]スキル待ちです!これからこの国の為に戦って下さい、強力スキルで良かったですねって一方的に言って、説明求めたら貴方は召喚されました、この邪悪な魔族や獣人などと戦争している国の為に戦う事が求められます、ちなみに帰れませんってどういうこった!!
なんでいきなり拉致られて戦わされなきゃならねえんだ!
俺は戦争なんてしたことねえししたくもねえよ!」
怒りをあらわにしていた成人男性?が言います。
ウェポンマイスターは剣や槍などあらゆる武器を自由自在に使いこなせるスキル。素手での戦闘もお手のもの。異世界人はこの世界の魔法は基本使えませんが、魔法を籠めた杖を持たせれば魔術も使えるという戦闘には持ってこいなスキル。
(強力スキル持ちの1人?当然よね。でも・・・)
私は王や王妃、第1王子を見ます。
「王宮魔術師が言ったが返す魔術はない。
世界を渡るほどの召喚魔法は膨大な魔力と転移先の位置が必要だからな。
膨大な魔力は魔術師や文官達が溜めていた分を使ってしまったし、転移先の位置など関係なしに召喚したから分からん。
だが敵である魔族の中に世界を渡る術を持つ者がいるらしい。四天王、魔王などがそうだと言われている。昔暇つぶしで作ったとか・・・指揮官も渡る術を知っているらしい。
その者を生け捕りにするか技術を手に入れれば帰れるだろう。
それまで怒りを胸にしまって戦ってくれないか?」
と王。
確かにその話は有名ですが噂レベル。
魔族を統べる魔王と側近である四天王、は滅多に前線に出てはこないし、指揮官も強者で生け捕りにできた事はない。
「次期王である私からも頼む、この世界の為、自分の為に」
第1王子も頭を下げます。
「わたくしからも。お願い致しますわ」
なんと王妃も。
「魔王や四天王や指揮官捕まえて本当に帰れるのか?そうらしいってレベルじゃ信用できねえよ!」
「技術がある事は確認済みだ、この前確認した。
指揮官補佐を捕まえる事ができてな、自白スキル待ちが自白させた」
それを聞いて騒つきます。
「魔王を捕まえれば帰れるの?」「いや魔王だぞ?四天王?無理っしょ」「自白?怖い・・・」「いつの間に捕まえてたんだ?学園じゃ聞かなかったが」
「だよな?毎日戦場の事は聞かされて来たけどなったよな?」「学校でも聞いてない」
「ああ、捕まえたのがごく最近だったのと重要機密扱いになっていたから知らせていなかった。
そろそろ知らせようとした所だったのだ。ちょうど良かったな。
我々は先日、指揮官補佐を捕縛、自白スキル持ちに自白させた結果、敵が異世界転移技術を有している事が判明した!!
魔王や四天王は単体で世界を渡れるそうだ!!
技術も記録してあると!!
これで救世主達を返す事ができる!!」
おおーっと言う声と異世界人達の呆然とした表情、
歓喜の声が聞こえます。
「ホントかよ!?嘘だったらただしゃおかねえが
まあ信じてやるよ。
殺しはしたくねえのはあるがな」
「出発までまだ時はある。それまでにを決めてくれればいい」
「行きたくない、って言ったら?」
「強力スキル持ちは戦闘を行って貰いたいのだがな逃げなければ衣食住は保障する。そこそこのスキル持ちは監視付きで生活してもらう事になるな。」
「監視されるの?」「私のスキル[超回復]って言ってたけどこれ戦地へ行かされるやつだよね?」
「救世主達には申し訳ないが暫しの辛抱だ。
良い返事を期待している。今はゆっくりと休むといい。
衛兵、救世主達を部屋へ」
部屋の隅にいた衛兵に連れて行かれました。
(エミリア、聞こえます?どうします?わたくし達は今日中に戦地へ出発しますけど、その前に抜けます?)
突然脳内に声が響きました。これは思念伝達の魔法。そしてこの声は・・・
(レティ。そうねぇ、どうしようかしら。クロム兄さんに挨拶をしに行かなきゃいけないし、その途中で文官達にも出会うでしょう。最終判断はそれからでもいいかも。なるべく多くの人を見て判断したいし)
(多くの人を見たいって・・・。見たいのは[スキル]でしょう?ここに来る途中の文官達も観察して便利そうなスキルはコピーしてきたのでしょう?)
(エミリアーレティーあんまり時間ないぜー?どうすんだよ)
(あらシン、ご機嫌よう。エミリアが従兄上殿に挨拶しに行くからその時に最終判断するそうよ。
途中ですれ違うだろう文官達のスキルを見たいのが本音でしょうけど。ここに来る途中で文官は見たし皆様噂に聞いた通りの人物でしたもの)
(あーあいつらな。サボってだべってた。なんか金渡して仕事を減らしてくれなんて言ってた奴いだぜ?
ほーんと腐ってんなー。従兄の兄ちゃんは真面目で上司に目を付けられて閑職?についてるんだっけ?)
(そうよ。資料室での資料の管理と修繕、あとは資料の貸し出しが主な仕事。宝物庫の管理もしてるって。[鑑定解析]スキル持ちだから持ち込まれた物の鑑定もしているそうよ。
一昨年採用されたけどスキルと性格のせいで上司に疎まれてね。最後に会ったのは採用される前。元気かしら?)
(資料の管理と宝物庫の管理って2つ同時かよ?疲れてんじゃねーの?)
(普通は別々の人物が管理していると思うけれど・・・。ほんとにまともな人がいないのね。
いいわ、従兄上殿に挨拶してからで。わたくしも挨拶したいもの)
(あら、素直に引き下がったわね)
(何年友達してるとお思いで?あなたの好きにさせたほうがいいって学んだだけよ?説得なんて聞かないもの)
(そうだな!それに会うかもしれない文官の中には使えそうなスキル持ってる奴いるかもしれねえし。
俺とレティも許可証持ってるから会えるし)
(ありがとう。それじゃ演説も終わりそうだし切るわね)
(ようやく終わりだー疲れた、じゃ)
(ご機嫌よう)
思念伝達で会話していた相手は友人達。
伯爵令嬢レティシア・ヘンドリックと平民のシン。
レティシアは学園で知り合い友人に、シンとは年に一度の学園と学校の競技会(模擬戦や競技を通じてスキルを高め合う事が目的)で知り合い同じく友人に。
レティシアは激レアスキル[魔女]を持っていたため学園から浮いた存在だった。
[魔女]は[魔術師]やその上の[魔導師]の上のスキルであらゆる魔法を自由自在に扱えるスキル。歴史上でも数人いたそうですが、当代の魔王と渡り合ったとかいう記録も残っている程。
スキル判明後は大騒ぎになったとか。それ故に期待や重圧も凄く、私が話しかけようとした時には泣いていた。びっくりしたな・・・。話を聞いていて慰めようとうっかり秘密を打ち明けてしまい、驚かれて懐かれた(本人は否定してるけど)感じで友人になった。
シンはレアスキル[魔術剣士]。[魔術師]レベルの魔法を剣に纏わせて戦う剣士。
こちらも平民のレアスキル持ちで大騒ぎされていたが、うまく使えずに学校で浮いていたそう。
(炎の剣の威力強すぎて近くの木を灰にする、風の剣で者を切り刻み跡形もなく消滅、その他諸々。
人的被害はなかったそうだが物を壊しまくっていたそうな)
競技会で興味を持ったレティと私が学校の先生に掛け合い、レティとシンの1対1の勝負後レティ監修の猛特訓で力のコントロールを身につけた。(私はサポートしてた)
そして友人に。
学生生活中に疑問を持ち、いざとなったらこっそり国を抜けようか、と話し合っていた。
強力スキル持ちが戦地行きを拒むのは重罪で、最高刑は貴族の場合は爵位剥奪、平民ならば斬首。それ故拒めない。だが[魔女]スキルを持つレティが『記憶を書き換える』魔法を使い、私達の記憶を国民全員から無くし、(生きていた記録も無くしてしまう)出ていこうと提案し、実行しようとしている。
出て行ったら前から目を付けていた場所でのんびり暮らすのいいよね、と笑いながら計画を練っていました。(ピックアップ場所はシンの修行場所や転移魔法でこっそり旅行した場所など)
ああ、私のスキルを紹介していませんでした。
[高位付与術士]と偽っています。
本当のスキルは別であり、バレると捕まって飼い殺しにされるのが決定なので。
ハイエンチャンターは[エンチャンター]の上位スキルで高度なエンチャント(バフデバフを味方や敵に付与
可能)が出来ます。自分自身にも付与出来ます。後方支援のスキルですが戦いに必須。
そんな私の本当のスキルは[スキル創造&改変]
観察したスキルから創造し自分が使えるようにする、コピーして仲間に貸し与える、スキルをいじって効率よく使えるようにする、というぶっとんだスキル。
いやぁ産まれた時自分でスキル見たときにびっくりした・・・。
言い忘れていました。私、前世の記憶を持ったままこの世界に転生した転生者なんです。
産まれて産声をあげて、母親を見てあれ?って思ったんです。母の顔と違う、おぎゃーって言ってる。
何コレと。そうしたら父親と魔術師が来て「どんなスキルを持っているのか・・・。できれば強力なスキルでなければいいのだが・・・」と。それを聞いて(スキル?・・・もしかして転生してる?しかも異世界?私のスキルってなんだろう)と思って試しにステータスオープンと念じたら出てきたの、
ステータス。そして見たら
エミリア・アンダーソン
女 0歳
スキル
[スキル創造&改変]
スキルの創造と改変なんてぶっとんだスキルでしょ。バレたら大騒ぎになりそうだからなんとか誤魔化そうとしました。スキルを作って変えちゃえば良いんじゃないかと。あーだこーだ考えてたら魔術師が
スキル鑑定用の道具(見た目占い師が持ってるような透明な丸いもの)を目の前に持ってきて鑑定しました。そうしたら
「この子のスキルは高位付与術士です。後方支援向きの有用スキルですね。
おめでとうございます」と言ったのでびっくり。慌ててステータス開いたら
エミリア・アンダーソン
女 0歳
[高位付与術士](偽装)
[スキル創造&改変](本物)
※[スキル創造&改変]で[高位付与術士]を創造、表面に表示しています。
どちらのスキルも常時使用可能。
って書いてありました。あーだこーだしてたら作ってたみたい。なんで高位付与術士なのかは謎なんだけど。
ちなみにステータスオープンは皆できるらしいけれどスキルの誤魔化しを防ぐ為に鑑定用の道具で鑑定する事が必須らしい。
両親は有用スキル持ちだっかたらショックを受けていた。そりゃそうだよね。成人したら戦場に行くんだもん。
ちなみに兄がいるけど[観察&測定]というスキルで物を鑑定には劣るのとステータスは測定にはイマイチ向いていないスキル(高さ測ったり川の水深や雲の速さも測れる)で自然の測定は天気予報スキル持ちが王宮にいるので学園を普通に通って卒業したとさ。今は領地で跡取り教育真っ最中。
両親と兄には最近私が転生者で、本当のスキルの事を話した。
最初は信じて貰えなかったけれど、前世の事、兄のスキルの[観察]の鑑定に近い能力にしたら信じて貰えた。
その時にこの国を抜けるかもしれないと伝え、その方法も教えた。泣いていたけれど。
私たちの生きていた事全てを忘れてしまうから・・・。でも家族に累が及ばないようにするためにはこれしかない。
その時の事を考えていたら王の演説は終わり、2時間後に出発すると言われました。
自由にしていいがこの部屋から出るなと。
私はレティの所に行き、シンもやって来たので扉に向かいます。
扉にいた衛兵に従兄に会うこと、王宮の許可証(王宮内に入るには許可証が必要)を見せ、扉の外に出ます。
「えーっとフロム兄さんのいる所は・・・」
「それは王宮の地図?許可証と一緒になっているのでしたっけ?」
「うんそう。王宮から出たら消えて無くなる魔法の細工つき」
「王宮内を攻略させないためだっけ?」
「そうね。・・・ここから少し歩くわね。まあいいいか。途中で色んな人と出会えるだろうし」
「ブレないなぁ・・・」「ブレませんわねぇ」
「楽しいんだから仕方ないじゃない。文句ある?」
「「ない」」
いつものように話しながら歩いて行きます。
時々すれ違う文官や近衛兵に会釈しつつスキルを鑑定解析し、歩いていると・・・
「アーサー様・・・本当に戦場へ?寂しくなります・・・」
「すまないね、マロン。これも王族であり[指揮官]スキル持ちでもある私の使命だ。
なぁに危険はないさ。後方で指揮を執るのだし、いざとなったら適当な理由をつけて帰ってくればいい」
「ねえ、今の声・・・」
「第1王子だな。相手誰だ?確か婚約者いるって聞いたけど名前違くなかったか?」
「ええ、第1王子アーサー殿下の婚約者は侯爵令嬢のオティーリエ・デリンバーグ様。
でもアーサー殿下は気に入らないらしくて冷たくしているの」
「オティーリエ様が成績優秀で殿下の穴を埋めるために選ばれた事を根に持っているそうよ。
他の令嬢に粉をかけているとか、文官と付き合っているとか聞いたけど、後者のようね」
「なんでそんな裏事情しってるんだ?エミリアにレティ。社交界なんてほとんど出てないだろう?」
「確かに強力スキル持ちは社交なんてしてるくらいならスキルを磨けって言われてほとんど出させてくれないけど、私は後方支援だから少し余裕はあるし、レティは鳥や動物達から話を聞いて知っているの。
アーサー殿下とオティーリエ様の仲が良くないことは有名だし」
「あーそっか動物か。忘れてた。
てかこんな所で密会かよ。しかもいざとなったら適当な理由をつけて帰ってくるだぁ?」
「アーサー殿下のだらしなさは有名ですもの。戦場に出て指揮を執るのもパフォーマンスよ。
なんで[指揮官]なんてスキル持っているのか不思議でたまらないわ。
せめて第2王子のネイサン殿下だったら良かったのだけれど、王の代わりに執務をしているから無理ね」
「王が執務をほったらかして王妃といちゃついてる、って世も末?ってヤツだよな。
さっきみたいな大事な時だけ出てきてさ。側妃様が玉璽持ってるって本当か?」
「ええ、本当よ。執務は側妃であるリリアーデ様とその息子であるネイサン殿下に丸投げ。
大事な式典とか今日みたいな出立式には出てくるけどそれくらいしかしない。
元々脳筋な王を支える為にリリアーデ様と婚約していたけれど、学園でイリーシャ様と出会って骨抜きにされて婚約破棄になりかけた。
まあイリーシャ様をお飾りの王妃にしてリリアーデ様を側妃にするっていう事になったけれど、
もし婚約破棄してたらこの国滅びていたでしょうね」
「馬鹿ばっかで政治が出来ずにって事か?」
「それもあるけどリリアーデ様のスキルが[正夢]、夢を本当のことにしちゃうスキルでね。
夢を自分である程度操る事もできるらしいの。スキルを磨きまくったら出来るようになったんだって。
それで国を滅ぼす夢を本当にされたらかなわないからなだめたり条件を聞いたりして側妃になって貰ったの。玉璽を側妃が持つっていうのも条件らしいけど」
「まじか、怖いスキル持ちの側妃様だな」
「スキルのせいもあって文官は恐れているそうだけど。恐れているのはサボってたりしてる文官達で、
まともな文官は慕っているらしいわ。優秀だから。フロム兄さんも尊敬してる人きいたらリリアーデ様って言ってたわ」
「わー側妃すげえ、俺も尊敬するわ。王様や第1王子より尊敬できる。てか優秀な側妃がいるのに文官は馬鹿なやつ多いのなんでた?クビにすりゃいいのに」
「クビにしたくても代わりの人材がなかなかいないのよ。長年の腐敗が酷くてとれないの。
バッサリ切ったら回らなくなる状態ね。
少しずつ入れ替えてるみたいだけど無くならないかも」
「まじかよ!そこまで酷いのかよ。
てかまだイチャついてるんだけど、どうする?通れないぜ。他に道無いんだろ?」
「そうねぇ・・どうしようかしら」
と悩んでいたら・・・
「ん?レティシア・ヘンドリックとその友人か?そこで何をしている!?」
こちらに気づいた殿下が声をあげます。
私達は近づき、学園で習った特殊な礼をします。
「レティシア・ヘンドリックとエミリア・アンダーソン、シンが殿下に挨拶を。
戦地に行く前にわたくしの友人であるエミリア・アンダーソンが従兄に挨拶に行くと言うので、同行しているところです。」
「ほう?従兄。王宮に勤めているとは優秀なのだな。どの職場なのだ?」
「エミリア・アンダーソンです。
従兄は資料室と宝物庫の管理をしております」
「資料室と宝物庫の管理・・・閑職か。
伯父上に一言いえばもっといい場所に配置換えができるが、どうだ?いい話だろう?」
「いえ、従兄は今の職場に満足しておりますので。
ご厚意感謝いたします」
(誰が腐敗を招いている家の人間に媚を売るかっつーの!!)
「そうか、気が向いたら声をかけるといい。
伯父上は知っているか?」
「はい、ユーラン・デイクバル人事部部長。
存じております」
「おお知っていたか。
頭が良いだけの側妃よりよほど人はいい。
頼るように言ってくれ」
(絶対言わないけどね。てか悪口いったな)
「はい必ず」
「うむ。
そういえばエミリア嬢のスキルはなんだ?
レティシア嬢のスキルは有名だが。あとそこのシンとやらも」
「わたくしのスキルは[高位付与術士]、こちらのシンのスキルは[魔術剣士]です」
「ほう?高位の地味な戦闘ができない支援スキルとレアスキルか。
優秀だな」
「お褒めに預かり恐悦至極にございます。
ところでその・・・隣の方は?服装からして文官の方とお見受けしますが」
「ああ、マロン・ウィンザー嬢だ。男爵令嬢だが優秀な文官でな。たまたま出会ったのが縁で時々話をしているんだ」
「初めまして、マロン・ウィンザーです!
よろしくして下さい!ええっと、エミリアさんにレティシアさんにシンくん!!」
(わあ、シンを君付けしてる・・・)
(声大きいしマナーなっていないわね。さすが王子の恋人)
(うえなんだこいつ色目使ってる???)
「エミリア・アンダーソンです。よろしくお願いします」
「レティシア・ヘンリークです。よろしくお願いします」
「シンです。よろしくお願いします」
「それにしても噂の[魔女]スキル持ちに出会えるなんてラッキー!シンくんもカッコいいし、[魔術剣士]もレアなんでしょ?
エミリアさんも地味で戦闘は出来ないけど普通の付与術士より高位のスキルだし凄ーい!!」
(さっきから支援、地味、戦闘できないって)
表情には出しませんが少しイラッときます。
「たしかに地味ですが大事な後方支援です」
「戦闘が不得手なのが弱点だな」
「わたくしは戦闘もできます。死ぬ気で訓練しました」
「本当か?ならそこらの付与術士より使えるか」
「わたくしは高位がつきますが」
「付与術士より多く、威力の高い能力を付与できるのだったか?
付与スキル持ちはあまり話をした事がないな。
付与自体があまり効いていないとも聞くが
お前は使えるのか?」
(は?)
「ええと・・・付与自体が効かないというのは始めて聞きました。」
「戦場にいる者達からたまに聞くのだ。付与が聞いていないと。それに後ろで何かをかけているだけで楽そうだ、戦闘がからっきしだからお荷物だとも。
付与スキル待ちは地味すぎるからな。」
「ええ?そうなんですか?エミリアさん可哀想!
あ、でもエミリアさんが頑張れば名誉挽回になるんじゃないですか?頑張って下さいね!」
(可哀想扱いになってる。てか誰だ付与が効かないとかお荷物とか言ってる奴)
とそこへ
「殿下、こちらにいらっしゃったのですか?出立前に少しは執務をして頂かないと困ります」
そう言って現れたのはアーサー殿下の婚約者、
オティーリエ・デリンバーグ様。
(やっぱりサボってたのかこの王子。オティーリエ様が代わりに執務しているのかしらね)
「私は忙しい、それに夫となる者を支えるのが妻の役目だと言っている!お前は将来の妻なのだからな!いつものようにお前がやれ!」
「オティーリエ様、戦に向かうアーサー様に仕事を押し付けないでください!」
「マロンは優しいな。おい!マロンを見習え!」
マロンさんも殿下に加勢してます。そしてそれを褒める殿下。
「わたくしは殿下を思って「お前が俺を想っていない事は分かっている!この女狐」
ここが分水嶺だった。
剣呑な雰囲気の中、オティーリエ様が可哀想なのと王子と文官(笑)にキレて思わず
「あのー?殿下、少ーしだけでもやるのはいかがでしょう?
出立前に仕事を終わらせマロンさんカッコいいところを見せるのもありかと」
私の言葉にレティとシンがギョッとしてこちらを見て思念伝達をします。
(なに言ってんだよ!!!怒られてえのか?)
(剣呑な雰囲気の中になんで飛び込んでいきますの?貴女は!)
(なんかついキレて)
(なんかついキレて、じゃない!!)
(でもさ、王子あんなんだし。オティーリエ様いるけどダメでしょ。私の事もバカにしてたし兄さんも側妃もバカにしてたし、だめだこりゃ、って。
こんな王子の指揮で戦いたくない。
出ていこうって思ったの。それでやった)
思念伝達で話していると
「関係無い者は口を挟むな!
これは俺とオティーリエの問題だ!」
「そうなのですが、殿下も執務をしたほうがよろしいかと?少しは時間ありますし。
それと、マロンさんも仕事に戻られた方ががいいのでは?
いつから殿下といたかは知りませんが、休憩は十分したのでは?」
「え?でもまだ10分くらいかな?それしか殿下とお話ししてないし」
「10分休憩したら十分では?
上司の方が探しているのではないでしょうか?」
「マロンにも口を出すのかお前は!
マロンは上司に許可をとって休憩している!」
「ですが「口を挟むなと言っている!
早く去れ!これ以上はいくら[魔女]スキル持ちの友人でも見逃せぬ!!即刻最前線送りか、
付与しかできないのだから国外追放という手もあるな!
国外追放は稀だがないわけではない!!
この国の者が国外追放されて敵に捕まった場合、
手酷い拷問を受けて情報を抜くだけ抜いて処刑されるらしいからな。真っ当に生きていけない。
今なら謝って去れば許してやる。
さあ、追放されたく無かったら俺とマロンに謝り早く去れ!!!」
(あら、国外追放を持ち出して来た。後は王子に宣誓してもらえば・・・)
「本当の事を言っているので謝るつもりは御座いません。王子と一緒の戦場にいるのもイヤなので、
国外追放してください。
ああ、王子の言葉だけでは効力はございませんので
国と神に誓ってください」
「この俺と一緒の戦場にいたくないだと無礼な!?というか貴様正気か!?国と神に誓うだと!?
誓えばこの国に戻ってくる事はできん!?
戻った瞬間誓いを破った罰が降るのだぞ!?」
「全て承知の上ですわ。さあ、王子お早く」
「待って下さい。エミリアを国外追放にするなら私も一緒に。私も王子の指揮で戦いたくはないです」
シンがそう言いました。
「わたくしもご一緒に。人の話を聞かない短気で女性を下に見る王子の指揮など入りたくありません。
国外追放して下さい」
レティもそう言いました。色々言ったな。
「レティシア・ヘンドリックはダメだ!!
我が国の貴重な戦力だ!追放できん!」
王子は焦ったけど遅かりし。
「あら、やはり戦力としてしか見てもらえませんのね?でももう決めましたの。
聞いてもらえないなら国を壊しますがよろしいですか?簡単にできますのよ?」
そう言うレティの体から魔力が漏れ出します。
相変わらず怒ると怖い。
王子はビビって後退り、マロンさんもオティーリエ様も顔を青ざめさせています。
「ぐぅっ!・・・脅しおって。
そんなに追放されたいならしてやる!
リンデイル王国第1王子、アーサー・リンデイル。
リンデイル王国と神ラーテリュンツに誓い
エミリア・アンダーソン、レティシア・ヘンドリック、シン。
この3名を国外追放にする!荷物も持たせん!
次代の国王にるなる俺に逆らう奴は不要!
さっさと出ていけ!!」
(((やった!これで出ていける!!!)))
「何をしているのですか!?」
振り向くと側妃であるリリアーデ様、第2王子ネイサン様がいました。他にも文官数名。
アーサー王子達の後ろにも。
気付かないうちに集まっていたようです。
フロム兄さんの姿も見えます。
「アーサー!?貴方は〈国と神の誓い〉をし、
3名を国外追放をしましたね?聞こえていました。
なんて事を!!」
「側妃様、聞いていたのですか?
この者達が望んだのです。私は悪くありません」
「何としてでも止めるべきでした。
優秀な者達を追放するなど。
しかも貴方の我が儘で!」
「我が儘?指揮官である俺・・・私に意見したのですよ?その上指揮に入りたくないと!」
「上官が間違っていたら命を掛けて止めるのは正しい事です!自分勝手な指揮官の指揮に従いたくないというエミリア嬢達の気持ちは当然でしょう!?
・・・貴方は前線に行かなくていいわ。
部屋で謹慎していなさい。
代わりに別の者を行かせます。
マロン・ウィンザー嬢、貴女も処分が決まるまで謹慎していなさい」
「な!?マロンは関係ないでしょう?」
「・・・関係ない?ここにいて王子を止めなかった時点で同罪です。
それだけの事をしたのですよ。それにサボって婚約者がいる者に近づいて密会。
ウィンザー男爵家にも連絡をいれ、抗議します。
ああ、オティーリエには罰はないわ。わたくしと一緒にいらっしゃい。今後の事を話し合わなければ」
そう言うと、こちらを向き
「・・・優秀な貴女たちを手放すのは心苦しいけれど、ごめんなさい。
謝っても許される事ではないけれど。
元気で。伯爵達には連絡をしておきます。家の荷物すら持たせてあげられなくてごめんなさいね」
「寛大なお言葉に感謝いたします。わたくし達は大丈夫ですわ。
失礼します」
カーテシーをした後、フロム兄さんをチラリと見ます。
少しやつれているわ。
(ごめんなさい。兄さん、お元気で。体に気をつけて。叔父様達にもよろしく)
(ああ・・・エミリアこそ、元気で)
フロム兄さんのステータスを確認します。
フロム・ストークス
男 20歳
スキル
[鑑定解析]精度約80%
少し精度を上げようかなと考え
[鑑定解析]スピード&精度+30%
鑑定スピードupと精巧な偽物も一発で見抜けるように改良しました。
(兄さん、私からのプレゼント、受け取って。ステータス見れば分るから。それじゃ)
そう言って立ち去ります。チラリと見ると、
ステータスを見た兄さんが驚く顔が見えました。
◇◆
「あーもうびっくりしたぜ。まさか馬鹿正直に言って国外追放されるなんて。しかも〈国と神の誓い〉まで使って。
まあこの国出られるからいいんだけど」
「本当に。でもあの第1王子、性格最悪でしたわね。
国外追放されて正解ですわ。正々堂々出て行けますし」
「まあこの後記憶を消すから関係ない・・・〈国と神の誓い〉には引っかかるか。
帰らなければいいんだし。荷物も持ってるもんね」
私はそう言うと何もない空間に手を入れ、鞄を引っ張り出します。
これは[空間収納]スキル持ちからコピーし少しいじった能力。
空間収納は魔法もありますが習得が難しく、あまり物を入れられないという欠点もあります。
スキル持ちのほうがたくさん入れられるので(レアスキルなのであまりいない)スキルをコピーしました。
「あ!荷物確認しなきゃ」
そういってシンも空間収納を使います。スキルをシンにも与えた為、シンも使えます。
「本当に便利よね、空間収納スキル。最近はこればっかり使っているもの」
そういってレティも荷物を出します。
「良かった金入ってた」
「でも国のお金見せたらリンデイル王国国民だってバレて捕まるわよ?」
「あーそうだった!」
「まあしばらくは取っておきましょう。何かに使えるかもしれないし。
あ、ここら辺で良いんじゃない?人はいないし魔法を使っても感知されないでしょう」
古い建物が並び、人っ子一人いない通り。
「そうね。じゃ、ちゃちゃっとやりますか!」
「発動はわたくしがするのですけどね。エミリア、シン見張りよろしく」
「「了解」」
レティが離れ目を閉じます。すると魔法陣が現れ、レティを中心として風が急速に四方に広がっていきます。
「うん、大丈夫。魔法はちゃんと発動してる。魔力も十分。あと3秒で終了ね。
「流石だなーレティ。発動から展開が速い。あ、終わったか?」
「ええ、終わったわ。これでわたくし達を覚えている人は1人もいない。
さっさと国から出ましょう」
「お疲れレティ。魔力は?」
「余っているけどかなり遠くに転移するのはすぐには無理ね。疲れが凄いもの」
「了解、じゃあ転移は私とシンでするわ。どこにする?」
「海!海見たい!」
「海も見てみたいけれど広くて緑豊かな所がいいわ。あそこにしましょうよ。シンの修行に使っていた所
人なんて来ないし、少し先に海もあったはずだから行こうと思えば行けるわ」
「そうね、あそこにしましょう」
「嫌なこと思い出した・・・」
「頑張って克服してね。じゃあ行くわよ」
そういって私とシンは転移魔法を発動させます。これも[転移]スキル持ちからコピーしたもの。
「さ、着いた。相変わらずねーここは」
「ええ。あ、穴を開けた所雨水溜まってる」
「ちょ!?ああー穴や焦げた所いっぱいじゃん!俺こんなにやらかしてたのかよ!?
地面直さねえと!!」
慌てて駆けていくシン。それを見て、私とレティはクスクスと笑いお合うのでした。
◇◆
私たちはまだ知らない。
この後魔王や獣人の王など色んな人達がここに来て、仲良くなることも。
国に馴染めなくて逃げてきた魔族や獣人、人間達が住み着く事も。
戦地から逃げてきた国民兵や異世界人に会う事も。
そして
王国が滅び、私が新しい国の王の妃候補になることも・・・。
終
疲れた時にはのんびりしよう。
特殊な礼って敬礼みたいな。胸に手を当てる。
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