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花鳥風月の神様  作者: るち
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後継者1

 久しぶりに昔の夢を見た。なにか区切りを知らせるものなのかもしれない。私が生きている間にツキシトの憂いを取り除いておかなければ。気付けばあと一週間ほどで月謝祭の日だ。私は妃奈里を呼び出し、その日を最後に彼女にはこの村から去るよう話をする。するといきなり妃奈里が泣き出した。


「あんまりです。巫女様!私の思いはご存じのはずです。こちらに来てからは精神誠意ツウト様のために努めて参りましたのに。」


「あなたのお気持ちはよくわかっています。しかし、こういうことは当人同士の問題ではないですか。ツウトにその気がないのに婚姻を結ぶことはできません。」


泣き落としがきかないと思ったのか、妃奈里は歯を食いしばり私の顔をじっと見た。そして、彼女の手がそっと腹の方へと下りていく。


「巫女様、私、こどもがいるんです。ツウト様との子です。」


「なにを言っているのです。そんなことあるはずが…。」


「本当です!」


妃奈里は開き直ったように滑らかに話し始めた。


「私とツウト様が常に一緒に行動していたのは周知の事実です。ある夜、ツウト様と二人きりで会いました。それはとても優しくて。私たちは一線を越えたのです。お疑いでしたら医師にご確認ください。」


これほどの嘘を平気でつくとは。妊娠は事実でも相手はツウトではないだろう。残念だが弟子たちのだれかと関係をもったのだ。無理もない。この妃奈里は昼夜を問わず、男を誘惑するような姿で歩き回っていたのだから。


「わかりました。望和様にお越しいただきましょう。この件は文であなたのお父様にもお知らせします。」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




祭りが近いせいか最近みんなの集中力が落ちているよう気がする。祭りの間だけ、村の娘たちと一時でも触れ合えるのだから気分がうかれるのはわかるけど。

ツウトは一人、広場で剣舞の練習に励んでいた。剣舞での太鼓の演奏をたのんでいた亜門(あもん)はまだ来ていない。約束の時間はとうに過ぎている。しばらくすると、亜門が駆け足でむかってきた。


「悪いっ、遅くなって。」


「どうしたんだ?最近。」


「いや、腹が痛くて。」


腹を触りながらそう話す亜門であったが、それは嘘だとツウトは見抜く。しかし、彼の衣が少し乱れていることにツウトは気付いた。「本当に(かわや)に?」亜門が遅れてくるのはもう三度目だ。ツウトは言いたいことがあったが練習をつき合ってもらっている手前、あまりきつく言えなかった。


「じゃ、はじめよう。」




 一通り練習し、片付けをしているとやはり来た。


「ツウト様!」


薄衣の下に飽満な肉体がすぐにわかる。胸の二つのふくらみを揺らしながらツウトのそばに駆け寄り、今日は大胆にもそのままツウトに抱きついた。


「ツウトさま。会いたかった。」


「こういうことは困る。妃奈里...。」


ツウトは妃奈里の肩を掴みゆっくりと彼女を自分の体から引き離した。


「ツウト様。好きです。ずっとお慕いしています。」


そういって妃奈里は目を閉じた。ツウトは妃奈里に聞こえないようにそっとため息をついて背を向け身支度をした。


「ツウト様...私のなにがいけないんです?」


「妃奈里はなにも悪くない。ただ俺にとっては特別な者ではないということだ。早く湯あみをした方がいい。夜は冷えるから。」


ツウトは妃奈里に声をかけその場に彼女を一人残し立ち去った。




 明くる日、ツウトは巫女に本殿に来るように言われた。本殿には月乃巫女、望和、妃奈里、妃奈里の叔父が先に座していた。


「今日はツウトと妃奈里さんに確認してもらいたいことがあります。その前に望和様から一言いただきましょう。」


「診たところ妃奈里殿は妊娠しています。もうすぐニカ月でしょう。二人に思い当たることは?」


「なんのことですか?俺と妃奈里はなにもしていません。妊娠って...?」


ツウトも寝耳に水だったのだろう。目を大きく見開き二人の関係を語った。


「ツウト様、お忘れになったのですか。あの夜私を抱きしめてもう放さないと優しく抱いてくださったのに。」


「は?」


「ツウト様、婚礼前ですが責めは致しません。おめでたいではないですか。お認めください。」


妃奈里の叔父は姪の妊娠を歓迎しているようだ。


「本当に違うんです。俺の子ではありません。」


「ではなんですかな?妃奈里が他の男のこどもを孕んだとでも?」


「そんなこと、彼女に聞けばいいじゃないですか。俺が知るはずもない。」


「ツウト様...。」


とんでもない嘘に巻き込まれツウトは怒り心頭だった。妃奈里の顔も見るのが嫌だと言うふうに顔をそむけた。


「このままでは水掛け論ですね。妃奈里殿はずっとこの社にいたのだから、子の父親はこの社にいる者でしょう。この件は私にお任せいただけるかな?」


望和様が解決のために名乗り出てくれた。私とツウトにはありがたいことだ。望和様に改めて依頼をする。


「良き解決策があるのなら是非。」


「俺もです。潔白を証明できるのなら。」


 ここに来て妃奈里は視線をおとし落ち着きがなくなった。望和様の力は未知なる力だ。妃奈里は恐れおののいている。


「妃奈里さんの子の父親が他の者であった場合。速やかにご自分の村へおかえりください。」


私は妃奈里と彼女の叔父にきっぱりと言い放った。こうして望和様の父親捜しが始まった。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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