真実4
つらい...こんなに苦しいの?わたしには無理...出産なんて!!痛い!痛い!ああっ!!
「黄花!」
意識朦朧とし目を開けると満面の笑みの桃花がいた。
「見て。元気な男の子だよ。ほら。」
「オギァッ、オギァッ、オギァッ、オギァッ。」
元気に泣き叫ぶ赤ん坊は生まれてすぐにも関わらずとても美しい子だった。わたしは気付いた。ツクヨミにそっくり。小さな手をそっと握る。愛しさがこみ上げてくる。
今夜、この子に乳をあげたらわたしはこの子の母でなくなる。喜びと悲しみが混ざり合い、わたしは生まれてきた子と同じように声をあげて泣いた。
「かわいいね。いい子、いい子。きっとあなたの父さんも会いたかったはず。」
愛しい我が子を抱き抱えながら寝顔を見つめる。本当にツクヨミにそっくり。将来女泣かせになるな。そんなことを思っていたら桃花が部屋に入ってきた。
「黄花、そろそろいい?」
「うん...。」
「名前、決めたの?」
「月思人。」
「あら、素敵な名前ね。父親の名前を入れたのね。」
わたしは桃花の手にツキシトを委ねた。
「本当にハンサム君ね。きっと名前にふさわしい色男になるわね。」
「あれもするの?」
「うん。早いほうがいいと望和様も言っていたし。これはわたしと黄花の秘密よ。一人で抱え込まないで。」
「うん。ありがとう桃花。」
桃花はわたしを優しく抱きしめた。そして望和様から頂いた忘却の香を焚き始めた。わたしと桃花はそっと家を出た。わたしが出産したことを知っている母さんを含め周りの人達に香を嗅がせる。わたしとツキシトとの関係を忘れさせるために。自然に涙がこぼれる。桃花はなにも言わずにわたしのそばにいて手を繋いでくれた。香が炊き終わるまで、わたしたちは月が照らす静かな空の下にいた。
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「ツゥゥトのぉ!!」
「こらこら、喧嘩しないの。ツキシトのじゃないでしょ。」
「ツウ、ツウトッ!」
あれから三年近くが経った。わたしは邪念を払う術をしっかりと望和様から学ぶために月の半分は望和様の元で修行をしていた。久しぶりに見るツキシトは少しおしゃべりができるようになっていた。幼いながらにも目鼻立ちがくっきりとしている。まるでツクヨミをそのまま幼子にしたような感じだ。
「ツキシト。元気そうだね。」
わたしの姿を認め、ツキシトは一目散に駆けてきた。ぎゅっと抱きつきわたしの足を掴む小さな手の平にたまらない愛しさに襲われる。
「ツゥトね、ツゥトね。」
「ほらほら。あわてなくても叔母さんは逃げないから。」
「おしゃべりが上手くなったね。」
「この子は利口さんだよ。でもちょっと名前が難しくてまだ言えなくて。」
わたしとツキシトとの関係は絶対に知られてはいけない。人々の憶測でわたしの身に巣くう邪念が力を増す可能性があるからだ。それに決してこの邪念をツキシトにまで継がせるわけにはいかない。
「名前...普段はツウトでいいかもね。」
「え?」
「本当の名前は大きくなってから伝えればいいよ。本人がツウトツウトって言っているんだし。お友達もそのうちツウトでなじむでしょ。」
「それはそうだけど...。」
「桃花、わたし本当に感謝しているの。桃花がこの子の母さんでよかったって。だから...。」
「決定権は全てあんたに委ねるつもりよ。わたしはみんなで幸せになりたいの。黄花も幸せじゃなきゃ。」
「桃花、ありがとう。」
「ツゥトも?ツゥトも?」
同じように話にはいってくるわたしたちの宝物を桃花と二人で抱きしめる。
「もちろんだよっ!」
「一緒に昼餉をとろう。ツウトは好き嫌いないもんね。」
桃花の言葉にツキシトは満面の笑みを浮かべる。子供の成長は早い。わたしと桃花はツウトの成長を穏やかな気持ちで見守った。




