真実2
体を動かしている方が余計なことを考えなくてもいいからと、桃花は産後すぐに村の再建に復帰した。
桃香の無理に笑顔を作り明るく振る舞う姿が痛々しかった。
でもわたしも桃花と同じ。ツクヨミの死から立ち直れてはいない。忙しくしている方が気が紛れる。わたしと桃花は血は繋がっていないけれど、よく似ている。
そんな時、遠くの村に避難していた母さんがようやく戻ってきた。母さんは桃花の死産を聞いて胸を痛めていた。
「まぁ若いんだからまたすぐにできるわよ。無理だけはしちゃだめよ。」
「母さん...。」
明るく励ます母さんがいなくなると桃花はぼそりと呟いた。
「わたし、もう赤ちゃん産めない体なのに。」
「えっ?」
桃花が寂しい眼差しでわたしを見た。
「母さんには黙っててね。赤ちゃんと一緒に大切なものまで出てきてしまって。あの子を取り上げた人に言われたの。」
「桃花...。」
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「あんたは最近食べてるの?ガリガリじゃない。」
せわしなく動くわたしを見て母さんが声をかけた。
「あまり食べたくないの。そんな暇もないし。」
「体が資本なんだからね。少しは丸みがあるほうが男にはいいのよ?」
最近母さんはこんな話ばかりだ。わたしは一生独り身でいるつもりだ。ツクヨミ以外の男の人なんて受け入れられるはずがなかった。
でもたしかに最近自分でも痩せすぎかもしれないとは思う。以前まで美味しく食べられたものが最近は美味しくない。そのせいか体調もあまりよくはなかった。以前より疲れやすくもなっていた。
その日は桃花と一緒に肉体労働をしている人たちのために料理を作っていた。たくさん米を炊いて味をつけて握り飯にする。炊きあがった米の匂いが鼻に届くと今まで感じたことのないような胸やけに襲われた。
「黄花?」
吐き気をもよおしたわたしは口元をおさえ川岸に向かう。吐き気は程なくしておさまった。
「はぁ、はぁ...、なにこれ。風邪かな。」
振り向くとわたしを心配した桃花が背後に立っていた。
「黄花、あんたまさか...?」
「え?どうしたの?」
桃花が速足でそばまで歩み寄る。わたしの両肩に手をかけ真剣な目で確認するように尋ねた。
「赤ちゃんができたんじゃないの?」
わたしはそっと自分のお腹に視線を下ろし手を当てた。赤ちゃん...ツクヨミの赤ちゃん?
「月の神様となんども逢瀬を重ねたんでしょ?それに月のものはきているの?」
桃花の目はよかったねとわたしを励ますような目だった。生理は確かにしばらく来ていない。濁龍の件でバタバタしていたしそんなことを気にかけている暇はなかった。本当にツクヨミの子供が...?
「桃花...。わたし...、わたし...。この子、産みたい!」
「うん。当然だよ!よかったね、黄花。おめでとう。」
わたしと桃花は抱き合い、泣きながら笑った。ツクヨミがいなくなってからこんな幸せな気分は初めてだった。絶対に元気な子を産んでみせる。この子はわたしの宝物だ。神様がわたしに与えてくれた大切な贈り物。ツクヨミの忘れ形見。
わたしと桃花は二人で母さんの元に行き、わたしの妊娠を報告した。
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