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花鳥風月の神様  作者: るち
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月乃神社10

「あの子は本当にそつなくんなでもこなすわ。きっと父親譲りなのね。最近ますます精悍になった。」


桃花が私の不調を心配し最近よく神社に顔を見せる。


「年に一度の月謝祭があるじゃない。あの舞い人にツウトが選ばれたのは知っているでしょう?すごいのよ、本当に月の神様の舞みたいで。またあの子を追っかける娘が増えるわね。」


「そう...。」


「妃奈里は相変わらず女房面でしょ?いったいどうなっているの?」


 この神社が建立した日、年に一度月の神に感謝の気持ちを込めて月謝祭を行う。その時に弟子の中でより優れた者が月の舞を踊る。今年はその役にツウトが選ばれた。

望和様が教えてくれた神に捧げる舞はなんの因果か剣舞だった。まるでツクヨミが甦り祈りの舞を舞っているような錯覚にとらわれる。私はここ最近こういうことが多い。現実と夢の狭間で生きているようだ。


「私にもよくわからない。でも気になる子はいると思う。」


「え!誰?」


「それは私もわからなくて。」


「なぁんだ。でもそうか、もうそんな年なのね。」


桃花は昔を思い出しているのか遠い目をした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ツウト様、手ぬぐいをお持ちしました。さ、剣は私が。」


 剣舞の練習が終わると待ってましたとばかりに妃奈里がツウトの元に駆け寄りかいがいしく世話を焼く。ツウトの剣舞の練習を見るためにわざわざ村を出てきた娘たちがすごい目で妃奈里を睨んでいた。


「なにやってんの!!ツウトもデレデレしちゃって!」


ツウトの様子を見にきた由芽葉はストレートに嫉妬した。


「でも美人だわ。」


顔立ちが地味な日和はさっさと敗北を認めた。


「ツウト、ますます人気が出ちゃったね。雲の上の人みたいになっちゃった。」


綴もほぼ諦めている。一緒にツウトを思い続けた日和と綴の後ろ向きな気持ちを聞いて、由芽葉は悲しくなった。確かにツウトは昔から格好よかった。成長してますます素敵になった。普通に話しているときですらドキドキとときめいてしまうくらい今のツウトはいい男なのだ。「でもあの人とツウトは合わない。」負け惜しみではなく直感で由芽葉は思っていた。




 遠巻きから海夕はツウトの剣舞を見ていた。長い手足を使って優雅に舞う姿は圧巻だった。全てが美しく、ツウトのことを思うとため息が出た。「わたしはただの友達。あの人とツウトはとてもお似合いね。」ツウトと距離が少し近づいた海夕であったが、こんなふうに思うようになっていた。





 その夜は祭りが近いこともあり海夕は神社に泊りこむことになっていた。弟子たちの夕餉の支度を整えたあと海夕たちも夕餉を取る。

身を清めさっぱりとした弟子たちが夕餉を取りに部屋に入ってきた。海夕は遠目にツウトの姿を確認する。いつもは耳の横で結っている髪を寝る前だからか一つに後ろに結っていた。とても大人びて見え、また胸が無意識に高鳴った。


 ツウトへの気持ちを諦めなければと言い聞かせているのにも関わらず、彼の姿をみると性懲りもなくときめいてしまう自分に嫌気がさした。深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

ツウトも珍しい時間に海夕が神社にまだいることに気付いた。そのまま海夕とすれ違う間際、ツウトは海夕に話しかけた。


「あれ?今夜は泊まり?」


「あ、うん。」


「あとで大木のところで。」


ツウトはとても小さな声で海夕にそう伝えた。


「え?」


 いつもはツウトのそばにいる妃奈里がいない一瞬のできごとだった。海夕に伝わっているか定かではなかったが、ツウトは今夜賭けに出ることにした。

海夕とすれ違った直後、また妃奈里がさっとツウトの隣に陣取り胸を押し付けながら腕を絡ませていた。そんな二人の後ろ姿を海夕は複雑な気持ちで見ていた。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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