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花鳥風月の神様  作者: るち
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月乃神社7

「ツウト様、わたし背中ながします。」


 一日の修行を終え、汗を流しに湯浴みにむかうと、妃奈里が衣の裾を膝上まで捲し上げてツウトがくるのを待っていた。ほかの弟子達はあらわになった妃奈里の白い足に目が釘付けになっている。


「俺以外の人もいるから。こういうことは…。」


「じゃ、あがるのまっています。一緒に食堂まで行きましょう。」


 妃奈里は神社にきてから、ツウトへの猛烈な求愛を人目もはばからず繰り返していた。他の弟子達は華やかな娘が現れ自分たちのまわりを彷徨(うろつ)くことにツウトが羨ましいとは思えども悪い気はしていなかった。


「おまえあれはいいぞ。顔もいいし乳もケツも肉付きよくて。いつでもいい感じじゃないか!」


ただでさえ異性に興味丸出しの兄弟弟子の出がツウトについて回る妃奈里のことを羨ましく思っているようだ。妃奈里になびかないツウトに意見してきた。


「勘弁してくれ。」


「ああいうのは好みじゃないのか?ま、気になるのは年上っていうのがな。」


 たしかにツウトにしてもそんなに悪い気はしていなかった。妃奈里はどちらかというと美人の部類に入る。彼女はたいていツウトに腕をからめてくる。わざとかどうかはともかく、その時にしょっちゅう妃奈里の豊満な胸が腕にあたるのだ。しっかりしていないと、妃奈里をこのまま押し倒してしまいたいという欲求に駆られることすらあった。

しかし自分は妃奈里のことを思っていない。気持ちのない相手に欲望のままそんなことをするのはよくないことだとツウトもわかっているから、必死に理性を保っていた。


 毎回妃奈里はツウトの隣に座り夕餉(ゆうげ)を食べる。それはもう暗黙の了解で、最初は眉根を寄せていた巫女もそのことについてなにも言わなくなっていた。

身体(からだ)が空く時間にツウトはいつも妃奈里につかまるので、最近海夕とは話せていない。ツウトは何故かそれが少し寂しく、物足りないように感じていた。




 ある日、頼まれていた用事が早く終わったので、ツウトは久しぶりに海夕と話をしようと彼女がいる薬膳室へと向かった。辺りを見回すとすぐに海夕を見つけることができた。久しぶりに海夕の姿を目にするとツウトはほっとした。「あいつは華奢すぎる。ちゃんと食べてるのか?」海夕は小さい時に無理やり桃を口に入れられそれ以来桃が食べられないと言っていた。桃はツウトの好物なのだ。「いつかうまい桃を食べさせてやりたい。」桃だけでなく他のものも一緒に食べたい。海夕と一緒ならきっと楽しいに違いない。そんなことを考えながら海夕に声をかけようとするが、さっとその場から海夕が移動した。慌ててツウトが後を追うと、海夕はツウトの弟子仲間の飛源(ひげん)と話をしていた。


「助かるよ。俺よく風邪をひくから。」


風邪のせいなのか心なしか飛源は頬を赤らめながら薬草を用意した海夕に礼を述べた。


「この薬草は今の次期はたくさん取れるの。寒くなるとなかなか見つからないから、必要ならためておいた方がいいかも。」


「うん、そうだね。」


「じゃ。」


「あ、あのさっ。」


その場を立ち去ろうとする海夕を飛源が呼び止めた。


「なに?」


「えと...。今度良かったら散歩しない?気分転換に。」


「散歩?」


「そうだっ、すごくいい場所知ってるんだ。空気が澄んでいて。水も美味しんだ。」


それは清めの水の場だろ。あんな山奥に海夕を連れて行くつもりか?二人のやり取りを黙って聞いていたツウトは飛源に対して無意識に負の感情を抱いていた。


「そうなの?水が美味しいのは惹かれるな。」


ふふと海夕が笑うとこちらに顔をむけている飛源の頬がさらに赤らんだ。ツウトは拳を握りしめ、さっと(きびす)を返し元来た道を帰った。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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