月乃神社6
「ツウト!元気そうね。」
「母さん、って...えっ!」
「ごめんね。みんなあんたに会いたいってついてきちゃったの。」
今日は一月に一度親に会える日だ。修行中の身のため極力親と会うことは禁じられている。ツウトの母、桃花はいつもツウトの好物を携え息子の顔を見に来ていた。最近村への使いに行っていないツウトの顔見たさに村の娘たち数人が桃花に同行していた。
「ツウ!また背、伸びた?」
幼いころよく一緒に遊んだ由芽葉がツウトの姿を見、大きな声で叫んだ。
「わたしよりずっとチビだったのに。」
「それいつの話だよ。追い越したのはずいぶん前だろ。」
「ツウ、今日は自由な時間があるんでしょ?この辺案内してよ!」
綴は妹のような存在だ。よく両親が留守にしていたからツウトの家に泊りに来ていた。
「この辺って言ってもあんまり歩き回ってはいないから。決まった場所しか行っていないし。」
「ツウ、修行は厳しい?家が恋しくない?」
心配そうに尋ねてきたのは一つ年上の日和だ。ツウトが親子喧嘩したときは叔母の黄花がいるときは彼女に、彼女が留守の時は専ら日和に愚痴をぶちまけていた。時には厳しく時には優しくツウトを支えてくれた姉のような存在。
「頑張ってるよ。」
「そう。やっぱりね。」
二人の様子に由芽葉と綴が割って入る。
「わたしたち、今からおばさんと一緒に巫女様のありがたいお話を聞きに行くの。」
由芽葉の話にツウトが反応する。
「巫女様と?」
「そうそう!そんなわけだからツウ、また後でね!」
そう言って綴がツウトに手を振った。
「じゃ、ツウトまた後で。」
桃花の言葉にみんなようやくその場をあとにする。女たちはぺちゃくちゃと楽しそうにしゃべりながら巫女のいる秘室へとむかった。
嵐みたいなやつらだとツウトは一息つくと自分の部屋へ戻ろうとした。数歩歩くと柱の陰にいる海夕と目があう。どうやらさっきの様子を見ていたようだ。海夕の手には薬草が入った籠があった。
「海夕。」
海夕は目が合った瞬間視線を下にむけていたがツウトは気にせず笑顔を浮かべ、海夕の元へ歩み寄った。海夕は顔を下にむけたままツウトが目の前にくると黙って籠を差し出した。
「これ...。頼まれていた薬草。他のみんなにも渡してあげて。」
「ああ、ありがと」
ツウトが礼を言い切る前に海夕はさっと背を向け足早に去っていた。残されたツウトはぽかんとその場に立ち尽くしていた。
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「みんな元気で。まるでここに花が咲いたようね。弟子たちも喜んでいるんじゃないかしら。」
「質問責めにあって疲れたでしょ?」
「うううん。とても楽しかった。」
女同士で話すことが最近ない私にとって村の娘たちとの会談は楽しいひと時だった。彼女たちから月の神について、また神事について話を聞きたいと申し出があったのだ。月乃神社を建てた理由はより多くの人々にツクヨミの功績を知ってもらうことが目的だ。私には願ったり叶ったりだ。
「巫女様、最後に一つ、いいですか?」
彼女は由芽葉。華奢だが瞳は生き生きとしている。女子には珍しく髪を肩まで短く切っているが、またそれが彼女らしい快活さをより一層引き立てていた。
「なにかしら?」
「あの…わたしたち三人の中で、誰がツウトとあいますか?」
予想外の質問に私は一瞬言葉を失った。
「私達、三人とも真剣なんです。ツウの…ツウトのこと大切に思っています。抜け駆けはなしって約束もしています。今日巫女様に選ばれた人の邪魔をしないって。」
真剣な眼差しで由芽葉の言葉を引き継いだのは綴。三人の中で一番あどけなさ残る少女。彼女の顔のパーツは全てが大きかった。大きな黒い瞳を潤ませ長年ツウトへ抱いている思いを伝える。
「桃香…。」
私はそれなら母の桃花に聞くべきではと桃花に視線を投げかけた。
「私も聞きたいな、巫女さまの意見。」
ツウトの相手…。わたしの大切な宝物。幸せになってほしい。私は瞼を閉じしばし思案した。そしてゆっくりと目を開け自分の考えを話す。
「みなツウトを好いているのですね。しめしあわせたりせずに素直に行動しなさい。誰と添い遂げるか、ツウト本人が選ぶことです。」
私の話に由芽葉と綴は少し残念そうだった。日和だけは安堵の笑みを浮かべている。日和はとても大人しい。悪く言えば他の二人と比べ華がない。ツウトより一つしか年は違わないが、年上ということを気にして由芽葉と綴のように積極的には行動できないのかもしれない。
「やっぱりね。黄花らしいわ。」
桃花が冗談ぽく女子三人の健闘を祈るというと皆笑顔になった。
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