月乃神社4
次の日の早朝、ツウトが神社の周りの清掃をしていると、海夕が足をひきずりながら現れた。
「あの...。昨日はありがとう。きちんとお礼を言えなかったから。」
海夕は顔を伏せながらなんとかツウトに聞こえる程度の声で話した。
「足、いいのか?」
「まだ少し痛むけど。薬草を塗ってもらったから昨日よりは平気。」
伏し目がちにツウトを見て少し微笑む海夕を見て、ツウトはもう少し彼女と話がしたいと思った。やはり同世代の異性と話すのは刺激的だ。
「これ...。昨日とった薬草なの。風邪をひいた時にも効くし、切り傷なんかにもいいの。万能薬だから。」
海夕はそう言って薬草の入った袋をツウトに差し出した。昨日のお礼のつもりらしい。ツウトはだまって手を差し出す。遠慮がちにツウトの手に袋が置かれた。
「ありがとう。時間が大丈夫なら少し話さない?」
「え?あ...うん。」
ツウトと海夕はそばにある石段に腰を掛けしばらく話をした。
神社完成から母永羅の付き添いで神社を訪れ手伝いをしていた海夕だったが、ツウトは彼女と直接口をきいたことはなかった。海夕はいつも飄々としていて自分を追いかけまわす女子とは異なる雰囲気をもった子だと思っていた。一切自分に興味を示さない海夕にツウトはどこか苦手意識を持っていたのかもしれない。
しかし今回の件でこうして海夕と話してみると、彼女はとても気立てがよく話しやすかった。控え目な海夕の前では不思議と自然な自分でいられた。どこかしら無表情にみえる海夕の顔立ちも、笑うとぱっと女性らしいかわいさが垣間見える。海夕という存在にツウトは興味がそそられた。
この朝の出会いをきっかけにツウトと海夕は時間を作っては話をするようになっていた。
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「黄花、ちょっと相談があるの。」
月に一度しかツウトの顔を見にこない桃花が珍しく神社に顔をだしたと思ったら、いきなりこう告げられた。
「昼時には時間ができる。その時でいい?」
私と桃花は部屋で二人になり、昼餉食べることにした。
「なにかあったの?」
「実はね。ツウトのことなんだけど。縁談話を持ってこられてしまって。」
「縁談?」
「隣村の村長の弟の娘らしいの。先日ツウトが隣村までご神木の植樹に行ったでしょ。あの時にツウトの姿を見て一目惚れしたらしいわ。」
「そう。いくつなの?」
「ツウトより二つ年上だったかな。なんせ理想が高くて周りの男には今まで興味がない娘だったらしいけど、ツウトに対してはすごいみたいなの。絶対に結婚したいって。条件は悪くないかもしれないけれど...。 」
「なにはともあれ本人の気持ち次第じゃないの?」
「もう、全く他人事なんだから!一大事でしょ。神社のこともあるし。」
「そうね。ツウトのことを支えてくれるような人がいい。その娘さんでは難しいかもしれない。断ることはできるの?」
「そんなの、あんたの鶴の一声があれば大丈夫でしょ。それより、ツウトにはそういう人はいないの?」
「聞いていないの?」
「母親にそんなこと言うはずないでしょ。」
どうしようか...。もう少し見守ってあげたい。私はツウトと海夕の逢瀬を知っていた。数日前、偶然二人が居合わせているところを目撃した。ただ海夕はともかく、ツウトはまだ恋というところまではいっていないような気がした。「自分の気持ちに気付いていないだけのか...。」
「なにかあったら桃花にすぐに知らせるから。」
私はもう少し二人の様子を見てから桃花に報告することにした。
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