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花鳥風月の神様  作者: るち
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月乃神社

「体が痛い...さっきいたる所をぶつけたから。」

「レンは大丈夫かな?光夜がいるからきっと大丈夫。彼がいるから…。光夜…。」







 ふと目を覚ますと先程まで見ていた夢がどんな夢だったのか全く思い出せない。私は丘の上の岩肌でまどろんでいたようだ。もうすぐ月乃神社が完成する。ここまでくるのに長い年月がかかった。私は月乃神社を見下ろせる丘の上からあの頃を思い出していたんだ。


 来る日も来る日もツクヨミと待ち合わせをした大木。あの頃は本当に幸せだった。今はあの木だけが昔を記憶している。あの木の向こう側に広がる山の奥には美しい黄色の花が咲き乱れる池がある。私はあれから一度もあの場に足を踏み入れていない。きっと悲しみに押しつぶされてしまうから。今はまだ立ち止まってはいけない。前を向いていくしかないのだから。でもよかった。間に合って。




「おばさぁん!!」


背後から私を呼ぶ明るい声に私は振り向きその相手に笑顔をむける。まったく。またあんな呼び方をして。


「私はあなたの師にあたるのですよ。呼び方はなんというのでしたか?」


私の厳しい言い方に甥であり弟子のツウトはぴしっと背筋を伸ばしはっと気づいたように言い直した。


「失礼しました!月の巫女様。明日いよいよ社殿を清めてご神霊をお迎えいたします。儀式の打ち合わせをいたしますので、長老たちの元においでください。」


さっき見た夢に出てきたのはツウトだったのか?なんだかとても懐かしい感じがした。


「巫女様?」


押し黙って自分の顔をじっと見る私のことを不思議に思い、ツウトが声をかけた。私ははっとして話の続きを始める。


「わかりました。望和(ぼうわ)様もおこしくださるようです。今夜中にはこちらにおつきになるそうなのでお出迎えをお願いしますね。」


「はい!万事滞りなく。」


 ツウトは姉、桃花の息子だ。濁龍の災難から十五年が経った。今年十四歳になるツウトはゆくゆくはわたしの跡を継ぎこの月乃神社を管理していく。彼なら間違いなく立派にこの神社を盛り立てていってくれるだろう。私たちは長老たちの待つ村の集会所へとむかった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「月乃巫女様。明日の衣装の打ち合わせをしましょう。」


 集会所に着くと女たちが明日の儀式の準備のためにせわしなく動き回っていた。私の姿を認め、桃花が近寄り儀式のための準備を行うため私を連れ別室へと移動した。


「ツウトはどう?あの子ったら浮かれちゃって。」


二人きりになると桃花は普段通りの感じで私に話しかけてきた。


「ツウトはああみえてしっかりしているから大丈夫。でも、蘇芳(すおう)さんがよく許してくれたね。神社の後継者になることに。」


「そんなの私が反対させないわよ。それにツウト本人が決めたのよ。あの子はあんたのことが大好きだから。あんたみたいにみんなから尊敬されたいのね。」


桃花は明日私が着る衣装の用意をしながら少し寂しそうに言った。


「桃花はいいお母さんだよ。それに素敵な人と出会ったね。蘇芳さんは本当にいい人。亜音(あのん)もかわいいし。」


蘇芳さんは桃花の二人目の夫だ。一人目の夫は病で濁龍の災難のあと程なくして亡くなった。

月乃神社の再建を通じて知り合ったのが蘇芳さんだ。代々建物作りを担ってきた家の人でとてもたくましい体に優しい顔立ち。亜音は蘇芳さんの連れ子の娘で今年五歳になる。


「あんたもね。初恋につくすなんてすごいことよ。おまけに巫女様にまでなっちゃうんだから。今夜はあんたの師匠の望和様がくるんでしょ。積もる話があるだろうから今夜は寝不足ね。」


桃花は用意した衣装をさっと私に羽織らせた。


「素敵。とても威厳があって神聖だわ。」


「ありがとう、桃花。」


私はこれまでずっと支えてきてくれた桃花に感謝を述べた。彼女には感謝してもしきれないのだ。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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