49
特に体に異常なところは見つからなかった。でもレンの意識は戻らない。わたしの話を聞いて翔愛と影宮さんは押し黙っている。いったいレンの身になにが起こっているの?
「ちゃんと話さなければいけませんね。」
翔愛は覚悟を決めたように語り始めた。
「これはわたしのかつての記憶からわかっていることなのです。」
「蛟龍が天にかえる」とはどういうことなのか。翔愛が語り出した。わたしたちにわかりやすいように説明したのは次のようなことだった。
①蛟龍はもともとは無垢な存在である。
②傍にいる者の影響を受けやすい。
これはその者の気を取り込み成長しているからだと推測できる。
⑴心清らかな者のそばなら美しい澄龍に成長する。
この世に水の恩恵をもたらし人々の暮らしを豊かにする。
⑵醜い心の者のそばなら濁龍に成長する。
水害を引き起こす。災いをまき散らす存在となる。
⑴の場合、そばにいる者の心情を敏感に感じ取るため、その者の感情に蛟龍の状態は左右される。
よって濁龍に変化する可能性は捨てきれない。
⑴の場合、蛟龍はしばしば『絆』を結ぶ。
意思疎通が可能となる。
「これは今まで聞いてきた話だ。他にもあるんだろ?」
光夜が疑問を投げかけると翔愛は黙ってうなずき続きを話した。
「なぜ、蛟龍の世話をする一族がいるのか。人として優れた者でなければなりません。でないと蛟龍を澄龍にすることはできませんから。」
「我々がいるのはそのためなのです。わたし達の一族の当主となる者は幼い時からずっと言い聞かされてきました。蛟龍が産まれたら一生を捧げるのだと。」
「一生を捧げる?大袈裟な感じがするけど...。」
咲生が感じたまま率直に答えた。
「いえ、その言葉通りなのです。蛟龍は『絆』を結んだあと、その者の体内で成長します。」
「え!」
一同驚きの声をあげる。
「ちょっと待って。それって。」
美路が言葉を繋ごうとするが、上手く言葉が続かない。
「まさに一心同体となるのです。いわゆる依代です。蛟龍を体内に宿した本体は深い眠りにつきます。蛟龍は自分が選んだ一番安心できる場所でゆっくりと成長するのです。」
「それって今のレンの状態なんじゃ...。どうしようっ、どうしようっ...。」
わたしはパニックになった。レンはいったいどうなってしまうの。
「翔愛、レンはまだ白宝と『絆』は結んでいないだろう?なにか手はないのか?」
「光夜...。白宝はレンの中に入る前にレンの名前を呼んだの。わたしにも聞こえた。レンも返事をして...。」
わたしの告白に光夜は押し黙った。咲生が翔愛に話の先を促す。
「成長するまでってどれくらいかかるんだ?成長したら、本体は無事解放されるのか?」
「わたしも実際を見たわけではありません。現人神であったときに古文書で読んだのです。[天に 天翔ける美しい龍が現れた…。]これは古文書の一節です。古文書には依代となった者は澄龍と一体となって天に上ったとありました。何人も澄龍が天に上る瞬間を見てはおらず、以降の依代の記述はないのです。そう何度も蛟龍が現れるわけではありません。古すぎて正確な記録が残っていないのです。」
わたしたちは翔愛の話に絶句した。今の時代に本当にこんなことが...。
レンはここ最近つらいことばかりだった。白宝はレンを守るためにどこかに連れて行ってしまうのだろうか。いったいどうしたらレンを救えるのか途方に暮れ病室へとむかった。
そこにはレンの母親がいた。
読んでくださりありがとうございます。
続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。
楽しんで読んでいただけるようがんばります。




