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「レン、おはよう。」
次の日、わたしは登校してすぐレンに声をかけた。振り向いたレンは驚いているようだ。彼の反応は当然だ。わたしのほうから話しかけるなとレンを拒絶したのだから。
「おはよう。」
レンはわたしから目を逸らして小さな声で挨拶を返した。
「レン、話したいことがあるの。今、少しいい?」
「でも、先生が...。」
「大切なことだから。」
わたしとレンは人気の少ない裏庭へと向かった。予鈴までまだ時間はある。
「レン...。あの...ごめんなさい。わたし。」
わたしはまず最初にレンに謝らなければと思っていた。レンはわたしを許してくれるだろうか。
「光夜が言っていた。ミコトが俺の母さんと会ったって。母さん、なにかひどいこと言った?」
光夜が伝えてくれたんだ。ここからはわたしがきちんとレンに話さなければ。
「うん。もう会うなって言われた。あといろいろ...。レンは悪くないのにわたし、つらく当たってしまってごめんなさい。」
わたしは溢れそうになる涙をがまんしながら話した。レンはしばらく黙っていたが、顔をあげ、意を決したように話し始めた。
「俺さ。ずっとミコトに会いたかったんだ。姉さんがいるって知って嬉しかった。そのために琴も頑張ったんだ。」
「え?!」
レンから聞いた衝撃の事実にわたしは心底驚いた。「そんなふうに思っていてくれたの?」レンの母親に会いあんなことを言われたので、わたしはてっきりよく思われていないのではと心の奥底で思っていた。レンのことを大きく誤解していた。我慢していた涙がこぼれ落ちた。
恥ずかしそうにはにかみながら話すレンはなにか吹っ切れたようだった。
「ミコトと仲良くなれたから。琴の練習に身が入らなくて。それもあって母さんが不機嫌だったんだ。」
「そうだったの。」
「ごめん。母さんが嫌な思いさせて。俺が母さんに自分の気持ちを話していたらよかったんだ。」
「レン...。」
「俺はミコトと普通の兄弟のように過ごしたい。ミコトは?」
「わたしもっ!わたしだって。レン、許してくれるの?」
「ミコト、誰も悪くないよ。ただ、言葉が足りなかっただけで。」
レンがわたしの手をとりそっと握った。わたしもレンの手を握り返す。わたし達はお互いの手を握り合う。そして笑いながら泣いた。
今約束を交わす。わたし達は普通にしようと。親や先生のことは気にせずにありのままで。しばらく泣き笑い、落ち着いたところで白宝の話になった。
白宝の件は光夜がレンにくわしく話してくれていた。わたし達の前世の因縁に最初、レンはとまどったらしい。無理もない。わたしだっていまだに信じられないほどだ。
「でも光夜が言うことだから信じられた。あいつは嘘をつかないから。白宝は...早く連れて帰ってやりたい。」
放課後になるまでわたしは気が気でなかった。「白宝、どうか昨日と同じ場所にいて。レンがもうすぐ迎えにいくから。」呪文のようにずっと心の中でそう唱えながら時間が経つのを待つ。
ようやく放課後になり、レンと二人、みんなとの待ち合わせの場所までむかう。携帯が鳴り確認すると翔愛からのメールが届いていた。
【昨日白宝を捕まえようとした人物が人を暴行しました。白宝の鱗が関係しているのか定かではありませんが。念のため、大人の影宮さんにも同行してもらうことになりました。】
どういうことなのだろうか?鱗?たしか濁龍は災いを招くとは聞いていたけれど...。偶然ではなくて?
固まるわたしにレンが声をかけた。
「ミコト、とにかく急ごう?」
「うん、そうだね。」
わたしとレンが目的の場所に着いた時、まだ誰も来ていなかった。橋の下、咲生が白宝を目撃した川岸を見る。鬱蒼と雑草が人の腰のあたりまで生い茂っている。歩いて探すのは大変そうだ。「ここに本当にいるんだろうか?」あれこれ考えながら川に視線をむけていたわたしをよそにレンが川岸に降りる階段にむかって走り出した。
「レンっ?」
「白宝っ!!」
レンは白宝を見つけんだ。
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