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花鳥風月の神様  作者: るち
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 気持ちを落ち着かせるためにわたしは光夜と二人、別室にいた。今、翔愛が美路にわたしとレンの関係を含め詳しく話しているはずだ。光夜はずっと黙っている。


「光夜、レンの様子はどんな感じ?」


 わたしはようやく一番気にかかっていることを聞いた。レンはなにも悪くないのに、ただつらい目にあってしまっているようで、わたしはレンをそんな状況に追い込んでしまった自分が許せなかった。


「ミコト、レンは大丈夫。白宝のことは心配しているけど、俺たちがちゃんと見つけてレンに会わせてやればいい。ただ白宝は蛟龍だから、ずっと一緒にはいられないだろうけど。」


どうして光夜はこんなに前向きでいられるんだろう?白宝に関しては投げ捨てた川以外、なにも手がかりがないのに。見つけだすことなんてできるんだろうか。


「なにか手がかりがあるわけじゃないんでしょ?」


「まぁ...な。でも俺は諦めない。レンとも約束した。川が流れつく場所を翔愛と影宮さんに調べてもらっているから。」


窓の外はずっと雨が降り続いている。まだ小雨だ。これが白宝がもたらしている雨なのだとしたら、とても悲しい雨だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 今日はサッカーの試合で咲生は隣町の小学校まで足を運んでいた。雨のなか泥まみれになりながらのサッカーだったが、相手が強豪のため一点も取れずに負けてしまった。こんなことなら急遽決まった花鳥風月の集まりに参加すればよかったと思っていた。いったいなんの話だったんだろうか。やはり緊急という言葉が引っかかった。


 自宅とは反対方向の友人たちと別れ咲生は一人川沿いの道を歩いていた。話し合いの件は翔愛に聞くのが一番手っ取り早いので、早く帰宅し翔愛に連絡しようと思っていた。


 最近雨が降り続いているが、道と並行して流れる川はまだ水の量はそんなに増えてはいない。川を眺めながら自宅へむかう。


 しばらく歩くと小雨の中、左手に見える橋の上に傘を片手に川を見ている制服姿の者たちがいた。咲生より年上の中学生ぐらいだろうか?二人の男子が下にいる者になにか指示を出している。


「そっちだ!」


「また逃げられた。」


「絶対新種だ。」


などなど。


よく見ると彼らは全員きちんと制服を着、眼鏡をかけたいでたちだ。話の内容から科学部にいそうな真面目なタイプの者たちだった。彼らのそばを通り過ぎるとき、咲生も興味を惹かれ橋の下に目をやる。


 川岸は雑草が生い茂っており、確かに上から指示を出さないとなにかがいてもつかまえるのは難しそうだ。下でなにかの捕獲に当たっている学生も眼鏡姿で目的の獲物がどこにいったか辺りをキョロキョロと見ている。


 しばらくすると咲生は嫌な視線を感じた。生い茂る茂みの中、動かずにこちらの様子を見ている二つの視線に気づく。咲生は一瞬それがなにかの生き物の目には見えなかった。なぜならその目は人と同じように意思を感じさせたからだ。冷や汗が流れる。咲生がその生き物の視線に気付くと同時に茂みにもう一人の男子学生の存在を確認する。彼はいきなりその生き物の背後から捕獲のためそれにめがけてダイブした。

「捕まえたっ!!」と捕らえた男子学生が歓喜の声をあげる。捕獲に成功した男子学生は、体調1mほどあるその体を持ち上げて見せた。それはトカゲのような形でささくれた黄ばんだ鱗があり、全体的に薄汚い色をしていた。腹には小さな手のようなものが二対ある。


 巨大トカゲか?咲生がそう思った瞬間、それの長い尻尾がビュンと音をたて、手にした男子学生の顔面を見事に直撃した。かなりの衝撃だったらしく、彼の眼鏡は壊れ、自身も派手に吹っ飛ばされた。その時その生き物の体から鱗のようなものが数枚剥がれ落ち、吹き飛ばされた男子学生の体にかかった。いや、違う。かかったと思ったが、鱗は彼の体に当たった瞬間消えた。まるで体の中に取り込まれたように。自由の身となった巨大トカゲは素早い動きで茂みの中に消えてしまった。


 ことの成り行きを夢中になって見ていた咲生は、手すりを強く握りしめ身を乗り出していた。手が冷たくなっている。何故か心臓の鼓動が速く、嫌な予感がした。


 気絶してしまったのか、吹き飛ばされた男子学生を介抱するために仲間が彼の元まで駆けよっていく。咲生は長居は無用と再び自宅への道を歩き始めた。

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