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「レン、その箱、少しみせてもらってもいいか?」
「これ?白宝の...。いいよ。」
レンは鼻をすすりながら寂しい眼差しを箱にむけ光夜に差し出した。光夜は箱を受け取った瞬間、ビリビリと体に電気のような感覚が走った。「なんだ!?」そっと箱を足元に置く。しゃがみ込んで蓋を開ける。
その瞬間!!光夜の脳裏に夢で見た濁龍の目が受かんだ。ぬばたまの闇のように暗く虚ろな目。絶望と怒りに支配された瞳だ。ツクヨミであった時、濁龍となった蛟龍と真正面から衝突し自分が消滅するときの感覚が一瞬甦る。
「光夜!大丈夫?」
光夜はめまいを起こし、倒れる寸前で床に手をついていた。顔は血の気が引き、寒気がした。なんてことだ!白宝は蛟龍だ。光夜は確信した。自分の内にわずかに潜む神の力が教えている。「やはり俺のそばにいた!こんなに近くにいたなんて。」光夜は焦った。翔愛と詳しく話さなければ。白宝が調子が悪いということはなにか変化を起こしているに違いない。蛟龍はそばにいる人の影響を受けやすい。レンの今の心情を考えると、よくない変化だ。急がなければ...。まさか、それで最近雨が続いているのか?
「光夜?」
押し黙る光夜に今度はレンが心配そうに尋ねてきた。
「レン、白宝って蛇なのか?」
いきなり白宝について質問され、レンは一瞬戸惑ったが光夜の質問には素直に答えた。
「そうかなと思っていたんだけど。最近腹のあたりに小さな手があることに気付いて。もしかしたらトカゲなのかもしれない。」
腹に手...。光夜は確信した。神獣の蛟龍は龍の姿をしている。
「レン、白宝は生きているかもしれない。」
「え!」
「俺の方で少し調べてみたいことがある。白宝を探す必要があるかも。」
「光夜?」
「今はまだ詳しくは話せないんだ。でも必ずレンには話すよ。レンの助けが必要になるかもしれないし。」
光夜はレンをまっすぐ見て言った。嘘はない目だった。レンは黙って頷き、光夜を信じる意思を伝えた。
「それから、いつでも話聞くから。遠慮するな。親は...。最近うっとおしく感じることはあるよな。」
「光夜も?」
「そりゃあるさ。面倒だけど...。ミコトへの気持ち、レンの母さんに伝えるべきだと思う。きっとわかってくれる。俺も力になるから。」
「光夜...。ありがとう。」
二人は強い眼差しで友情を確認し合った。
「なにかわかったら連絡する。」
光夜はレンを励まし彼の自宅をあとにした。
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そして、花鳥風月のメンバーで緊急の話合いが次の日に決まった。翔愛は急を要すると他のメンバーにメールで伝えた。ちょうど日曜だったので集まりに参加できないのはサッカーの試合で都合の悪い咲生だけだった。きっとみんな衝撃を受けるだろう。
光夜はミコトがこの件に絡んでいないか心配だった。レンはミコトと最近疎遠になっていることを気に病んでいた。避けられているとも言っていた。
すぐ目の前に蛟龍がいた。でもミコトは普通の人間だ。気付くはずがないのだが、その件で自分を責めるのではと光夜は思った。「俺が支えてあげないと。」今回こそは誰も犠牲にならずに蛟龍を天に返す。それが蛟龍を拾い育てたレンのためにもなるはず。光夜は強い気持ちを胸に翌日の話合いに臨んだ。
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