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光夜はミコトとレンのことが気になっていた。レンはかなり落ち込んでいるし、ミコトに尋ねてものらりくらりと答えるだけで、全く話が掴めない。その日は休日だったので、光夜はレンから聞いていた住所を頼りにレンの家にむかっていた。
小雨の中、ようやく目的のマンションにたどり着いた時、人目もはばからず泣きじゃくる者がいた。光夜は自然とそちらに目をむけた。女性とその子供だろうか。川の前でお互いを罵倒し合っている。光夜はその親子に近づくにつれて衝撃が走った。
泣き叫んでいる少年はレンだった。ということはひどい形相で泣きながら叱っているのがレンの母親か。
光夜は二人に歩みより声をかけた。
「レン、どうしたんだ、いったい?」
周りが見えずに罵り合っていた二人は光夜の呼びかけに二人同時に光夜を見た。
「光夜...白宝がっ、白宝がぁぁ。」
レンはそう言って光夜にしがみつき泣きじゃくった。光夜はまずレンを落ち着かせなければと思いレンをよしよしと抱きしめた。
レンの母は息子をなだめる少年をぼぉっと見ていた。レンと少年はかなり親しそうだ。身なりのきちんとした、いい家の子っぽい光夜の様子にレンの母親は胸に安堵の波が押し寄せた。「友達が...本当にいたの...。」ミコトとのつながりを隠すため、自分に嘘をついて蛇まで飼っていたと思い込んでいたレンの母親は、友人の存在までも疑っていた。光夜の姿を認識し、彼女はまるで憑き物がとれたようにその場にペタンと座り込んだ。
「雨足も強くなってきたし、家に入ろう?話聞くから。」
泣き続けるレンに光夜が優しく問いかける。光夜はレンの母親を見、自己紹介をした。
「あの、こんな形ですみません。光夜といいます。ここにいたらみんな風邪をひいてしまうから...。」
「ああ、そうね。たしかにそうだわ。家に入りましょう。」
彼女はのろのろと立ち上がり、二人を連れ立って家へと案内した。
三人でレンの家に入り、タオルで濡れた体を拭く。
「レン...。」
「部屋で話すから。母さんは入ってこないで。」
レンは母親と目を合わさずに光夜をつれだって自分の部屋に引きこもった。
「レン、大丈夫か?」
光夜の言葉に止まっていた涙が一筋、レンの頬をぬらした。
「白宝だっけ?いなくなったのか?」
「もう最近なにもかもぐちゃぐちゃだ。ミコトにも避けられるし。」
「俺もミコトに聞いたけどなにも教えてくれなくて。」
レンはもうどうでもいいのだと言うように俯き首を振った。そしてこうなってしまった経緯を話し始めた。
「白宝の調子が良くなくて。病院に連れて行きたいと母さんに頼んだんだ。母さん最近機嫌悪くて。それで...。」
「それで?」
「つい、ミコトの名前を口走ってしまった。白宝の名前はミコトがつけたから。そしたら母さんすごく怒りだして川に白宝を捨てて...。」
「そうだんったんだ。レンの母さんはミコトのことをよくは思っていないんだな。」
レンは肯定するように黙ってうなずいた。
「ミコトは俺の姉さんだ。存在を知ってからずっと会いたかった。琴はそのために頑張ってきたんだ。うまくなれば姉さんに会えると思ったから。でも母さんはミコトを嫌っている。」
光夜はなんと声をかけたらいいのかわからなかった。複雑な家庭の事情だ。レンの母親には彼女なりの葛藤があるのだろう。この件はレンがきちんと母親と向き合って話し合わなければいけないことだ。
「白宝はかなり弱っているのか?」
「うん。もう死んでしまったかもしれない。もっと早くに拾った池に返してあげたらよかった。」
「レン...。自分を責めるな。」
光夜はこれからどうすればいいのか思案していた。友達を支えてやりたかった。そして光夜は先ほどからレンが大切に持っている箱が気になっていた。たしか白宝が入っていた箱らしいが、光夜は無意識に強烈に意識がそちらに引き寄せられていた。「一体なんなんだ?この感覚は??」光夜は箱の中身を確認しようとした。
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