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花鳥風月の神様  作者: るち
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ツクヨミ1

このエピソードからの登場人物


★ツクヨミ

月の現人神あらひとがみ。齢14で現人神になる。聖剣、月鏡を手に毎夜祈りの舞を舞う。

神使しんしの右月、左月がいる。


右月うづき左月さづき

ツクヨミの神使。童の姿。双子のように同じ姿。手に榊を持つ。

「ミコトっ!」


 あわや車にぶつかりそうになるところで光夜くんに強い力で後ろから引っ張られ抱きしめられる。


パリンっ!!


耳飾りが目の前で車に轢かれて粉々に砕けてしまった。

「ツクヨミ、ごめんなさいっ。」

わたしはツクヨミに申し分けなくて心が張り裂けそうだった。その瞬間、背後に体重を感じた。


「ミコト...。」


振り向くと光夜くんが意識を失い、わたしにもたれかかっていた。


「光夜くんっ!誰かっ、誰か来て!」


わたしは泣き叫んだ。

シュウマくんがすぐにきてくれて、とりあえず塾の先生を呼んでくると建物の方へかけていった。

ランは気まずそうに距離を取って私たちのことを見ている。光夜くんはピクリともせずに固く瞼を閉じたままだった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 太古の昔。自然の力が神秘的で、まだ人を凌駕していた頃。俺は現人神(あらひとがみ)だった。


今夜は満月だ。月の力が一番強まる時。

ここは花鳥風月を愛でる一族、特に月を愛でる一族が立てた社がある。社の裏には巨大な木があり、毎夜俺はそこで月に祈りを捧げる。この土地の者たちが幸いに暮らせるように。


「今年で現人神になられて何年たちましたか?神々しさが増し、ますます人々の暮らしも豊になりますでしょう。」


俺の神使(しんし)である右月(うづき)が語りかける。


「ほんとうに。長年使えてきた甲斐があります。ツクヨミ様。」


同じく神使である左月(さづき)も答える。


「お前たち、毎日同じことを言って飽きないのか?」


 右月と左月は俺が現人神になった時に己の魂から作った神使だ。数百年前に人であった俺は何の縁か、わずか14歳で月の現人神となった。


 はるか昔、この土地で徳を上げ神となり天上へ召されたカナウ様。

彼はこの土地が未来永劫豊かであるようにと、その時勢力を誇っていたある一族に自分の配下の現人神を与えた。彼らは花鳥風月を愛でる一族だったので、現人神にはそれぞれ花、鳥、風、月の名がつけられ、その現人神が住まう社が各地に建てられた。


「そろそろ祈りの時間だ。」


 毎夜、月に祈りを捧げる。それが俺の使命、俺がここにいる理由。

もう父と母の顔も忘れてしまった。人はみな俺を神として敬い尊敬してくれる。それに応えるためにも俺は祈り続ける。

 

カナウ様の思惑通り、何事もなく平和な時間が過ぎていく。俺たち花鳥風月の現人神の祈りのバランスが拮抗して災いを防ぎ守りは強固なものになっていた。


 俺が外に出るのは夜、月が出ている時だけ。日中は社の中でじっとしている。人はこの社の中には決して足を踏み入れない。バチがあたってなにか取り返しのつかないことが起きたらと恐れているのだ。

社には俺と右月、左月しかいない。


 しかし、その日は社で珍しいものを見つけた。よく見るとウサギだ。直接見るのは何百年ぶりだろうか。そっと近づくとウサギは逃げることなく俺のことを見ていた。不意に懐かしさがこみ上げウサギを抱き上げ膝に乗せた。その時、人の声がした。


「すごい。抱きかかえれるなんて。」


 柱からひょっこり顔をのぞかせているのは人の女だった。見た目は俺より少し下か?

リスのようなかわいい黒目で俺のことをじっと見つめクスクスと笑っている。


「ここがどこだか知っているのか?」


「知ってるよ。神様の社でしょ?」


少女は足音を忍ばせそっと近づいてくる。


「あなた、ツクヨミ様?」


そう言いながら少女は俺の膝で大人しくしているウサギを優しく撫でる。


「このこ、ちっとも抱っこさせてくれなくて。ここに逃げ込んだから、追いかけてそのまま来ちゃった。

怒った?」


俺のことを神と意識せず、まるで普通に話す彼女に興味をそそられた。


「いや。人と話すのは久しぶりだ。」


「もっと話したほうがいいよ?」


「なぜ?」


「だって、祈りの舞をしているとき、ツクヨミ様、とても寂しそうだもん。」


「...。」


彼女はウサギを見つめながらさらりと言った。

既に神となった自分が人に、それもたった一人の少女に本心を見透かされたようで、数百年ぶりに感情が高まるのを感じた。


「もう帰りなさい。」


俺は立ち上がりウサギを彼女の胸に押し付けその場から立ち去った。






「ツクヨミ様、今宵の舞は特に激しく心が奪われました。」


「月の力が増し、良い日となりましょう。」


右月と左月が毎度の御世辞を述べる。


「そうだな。」


 いつもは無心でやる祈りの舞は、今日出会った少女のせいで荒々しいものになってしまった。神使たちには気づかれていないようだが。

常に己の心は無であるように。神となった今、食事も睡眠も必要ない。祈りの舞以外の時間は精神を統一することに時間を費やしていた。


 少女と会ってから幾日過ぎたのだろうか。あの出来事は過去のことと思い始めていた時、またあの少女が社に忍び込んだ。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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