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花鳥風月の神様  作者: るち
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追憶5

 怖い夢を見て鶴奈はその夜目を覚ました。なんだか胸騒ぎがする。家の中を見ると羅臼が寝ているはずの場所に羅臼はいない。耳をすましていると外で物音がした。鶴奈はチビのことが気になりそっと外へ出た。チビの元に駆けよると、羅臼がちょうどチビの小屋に手をかけているところだった。


「父さん!なにしてるの?」


羅臼がゆっくりと振り向いた。


「こいつはここにいたらいけないものなんだ。だから帰してやるのさ。」


「どういうこと?」


『ツルナ、カワ二イコウ。ココハアブナイ。』


鶴奈はチビから脳内に直接話しかけられる。


「どうして?」


『イソイデ!』


「おいおい、抜け駆けはなしだと言っただろう?」


 冷たい低い声に羅臼と鶴奈はびくっと身をすくませた。月明りの下、盗賊の元締め、増毛が立っていた。なぜここにいるのかと羅臼の顔に出ていたのだろう。増毛は自分が今ここにいる理由を語り始めた。


「おまえは明らかに隠し事をしていた。だから部下につけさせたのさ。まさかお宝を隠し持っていたとはな。」


「違う。これは娘の飼っているただの蛇だ。」


「珍しいものなんだろ?見せてみろよ?」


 鶴奈は二人のやり取りを聞いてチビの身に危険が迫っていると思い、チビの元に駆けより姿を確かめた。羅臼がやったのだろう、チビの背中には小さな傷がたくさんあった。


「チビっ!!」


 鶴奈はチビをさっと抱き上げ抱きしめ傷を労わる。チビに無事か確認し、チビは意思のある瞳で鶴奈に自分は大丈夫だと伝えた。


 月明りの中、チビの紫に艶めく白いうろこはこの世のものとは思えぬ美しさだった。まるで目の前の少女と意志疎通をしている様子も異様な光景だ。

増毛の驚き喜ぶさまを見て羅臼は不用意な鶴奈の行動に怒りが抑えきれなくなった。


「この馬鹿がっ!!」


そう言って思い切り鶴奈の頭を殴った。鶴奈は吹っ飛ばされ、チビはツルナの手から離れた。


『ツルナ!!』


チビは急いで鶴奈の元に這い寄る。彼女の頭からは血が流れていた。チビは頭をあげ羅臼を睨んだ。


「これは驚いた。この蛇は知能があるのか!」


ズカズカとチビに近寄る増毛の前に羅臼が立ちはだかる。


「こいつは俺のもんだ。うちのもんには手出しすんな。」


「おまえ、誰にむかってもの言ってんだ?」


羅臼は増毛とでも一対一ならなんとかなるかもしれないと淡い期待を抱いていた。羅臼は腕には自信があった。増毛は片腕もなく、彼個人の武勇伝は聞いたことがない。素早い動きなら自分の方が上だ。勝機はあると。そんな羅臼の気持ちをあざ笑うように増毛が冷たく言い放った。


「だったらお前のものを全部奪って俺のものにしてやるよ。」


増毛が指笛を吹くと木陰から二人の様子を見ていたのかぞろぞろと増毛の部下が現れた。あまりの人数の多さに羅臼は自分の考えの甘さに腹が立った。同時に自分の人生が終わったことを悟る。


「後悔しろ。」


そう言って生きる気力を失くした羅臼を払いのけ、増毛は家の中に入って行った。

すぐに朱鷺の泣き叫ぶ声が聞こえた。増毛が朱鷺を犯しているのだ。彼の後に部下たちが何人も入っていく。聞こえていた朱鷺の声はついに聞こえなくなった。羅臼はその間動くこともできず、地面に顔をおしつけ耳をふさいでいた。


「んん...チビ?」


そばにずっと寄り添い顔をペロペロと細い舌で舐めていたチビに鶴奈が気付いた。鶴奈は小さくうずくまる羅臼には気づかず、家から次から次に薄ら笑いを浮かべ出てくる男達の姿に愕然とする。朱鷺のことが心配になり誰も出てこなくなったのを見計らい、チビを抱きかかえ家の中に足を踏み入れた。


そこには朱鷺の死体があった。朱鷺は素っ裸で足を大きく開かれたままだった。顔は殴られたのか血まみれで腫れあがり、愛嬌のある母の面影はなかった。足の付け根からは真っ赤な血が大量に流れていた。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!」


鶴奈は朱鷺に駆け寄ることもできずに泣き叫んだ。手に抱いたチビを強く抱きしめる。チビの白い美しいうろこはくすみ、溝のような悪臭が漂った。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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