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花鳥風月の神様  作者: るち
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追憶4

 羅臼は盗賊同士の争いがあった場所へ赴き、例の高貴な物を探し始めた。しかし、目的のものがはっきりしないうえに、数週間前のことなのでめぼしいものが残っている気がしなかった。辺りを見回しても生活のたしになるものはとっくに持ち去られた後だった。高貴なものならなおさら(かしら)が言っていたように、もう誰かが持ち去ってしまったのだろう。


「ちっ、ついてない。」


少し足を伸ばせばすぐ来れた場所だったのにみすみすチャンスを失くしてしまった。羅臼は一人悪態をつきながら帰路へとつこうとした。


「ここでなにをしている?」


 突然背後から背筋が凍るような冷たい声をかけられ、羅臼はビクッとなった。おそるおそる振り返ると、凍るような視線の大男が立っていた。もう何人も人を殺している目だ。彼の顔は無数の傷があり、特に左頬から口元にかけては深く大きな傷跡があった。そして彼は左腕の手首から下がなかった。彼の名は増毛(ましけ)。増毛のことなら誰もが耳にしたことはある。相当ヤバイやつだと。


「失くしものを探して...。」


「それは奇遇だな。俺も探し物をしているんだ。(ちな)みに俺はこの世のものとは思えない珍しいものを探している。おまえはなにを探していたんだ?」


「手、...手ぬぐいです。」


「お頭、こいつ、湖畔(こはん)のところの新入りですぜ。」


「おまえか。」


増毛はなにか感づいたのか探るような目で羅臼を見た。


「抜け駆けはなしだ。おれたちは仲間なんだからな。」


「当然です。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「くそっ、あの男はやばい。計画が台無しだ。」羅臼は自分がとんでもないやつと関わりを持ってしまったと後悔していた。他の仕事が見つかり落ち着いたら盗賊から抜けようと思っていたが、あんなやつが元締めでは簡単に抜け出せそうにない。強さはともかく、敵や裏切り者には容赦なく残虐になれる男だった。増毛が関わったとされる殺しの場はどれも凄惨なものらしい。



今は仕方なくとも長い間こんな生活はできないだろう。朱鷺の目もごまかせない。真面目に働かず、人を襲い盗んで生活の足しにしているなど朱鷺には言えなかった。


 羅臼は気分転換にいつも歩く道と反対方向に向かって歩く。しばらくすると、池がありそこには鶴奈がいた。目ざわりなものを目にしてしまったとすぐにその場から立ち去ろうとしたが、奇妙なものが目に留まり、羅臼は鶴奈の元に近寄った。


「ぁっ!父さん。」


 羅臼が自ら鶴奈に近づいてくることなどここ最近はなかった。鶴名は驚きを悟られないように平静を装った。


 鶴奈の足元には白く美しい蛇が首をあげ羅臼を見つめていた。そのうろこは光に当たると紫がかって見えた。輝く金色の二つの瞳からは普通蛇からは感じられない知的さを感じる。羅臼は身がすくむ思いがした。


「おまえ...この蛇どこで拾った?」


羅臼はなんとなく予感がした。高貴なものは生き物だとか...。この世のものとは思えないものだとも聞いた。


「えっと...。」


「怒らないから言ってごらん。」


羅臼は普段出さない甘い声で鶴奈に問いかけた。


「前に悪い人たちが殺し合いをした場所で...。」


やった!!これだ!見つけたぞ!!まさかこいつの蛇がお宝とはな。お偉いさんのところに持っていけば褒美をがっつりもらえる。


「そうか。かわいらしいじゃないか。」


羅臼はチビにそっと手を伸ばした。


「シィーーーーッ!」


チビは羅臼に威嚇した。そして羅臼の脳内に直接訴えた。


『フレルナ!』


なんだ?今の声はこいつがやったのか?羅臼は手をのばしたまま固まった。


「父さん?」


羅臼は焦った。こいつが他のやつらの目にとまり俺みたいに気付くやつが現れるかもしれない。


「鶴奈、もう帰るぞ。」


「う、うん。」


羅臼は考えていた。どうすればこの蛇を生け捕りにできるのか。「今夜さっそく鶴奈が眠ったら動くか。急いだ方がいいな。」


 今夜は満月だ。月明りの中なら明かりをともさず作業ができ人目につくことはない。羅臼は頭の中で計画を立てながら家路についた。

読んでくださりありがとうございます。

続きが気になる、面白かったなど思われましたら、是非是非☆評価、応援よろしくお願いいたします。

楽しんで読んでいただけるようがんばります。

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