追憶3
「最近物騒なやつらが多いらしいよ。あまり遠くに遊びに行ってはだめよ。」
「川とは反対側の山の方なら大丈夫?」
「そうね、すこし遠いけれど。」
「チビがあそこにある池の水が好きなの!」
「そうなの。ふぅ...。」
「母さん大丈夫?」
「大丈夫よ、ありがとう。」
朱鷺は体調を崩していた。彼女は妊娠しているのだ。ちょうどつわりの頃で、食欲もなく顔色も悪かった
「おまえが心配ばかりかけるからだっ!蛇なんか育てやがって。薄気味悪いガキだ。」
「やめて、羅臼!あなたのこどもなのよ!」
「俺のこどもはおまえの腹ん中にいるやつだけだ。」
誰のせいで鶴奈の顔がっ!!朱鷺は歯を食いしばり喉元まででてきた言葉をぐっと飲みこんだ。これを言うと羅臼は大激怒し現実逃避のために数日姿をくらます。自分があまり動けない今そんなことをされたら野垂れ死んでしまう。
「鶴奈、チビの様子見ておいで。」
「うん...。」
鶴奈は悲しい眼差しを羅臼にむけ家を出た。外にチビ用の小さな家を作ったのだ。チビは今ちょうどツルナの片腕ぐらいの大きさに成長していた。つらい時もチビを見て一緒に話をすると鶴奈の心は癒された。鶴奈とチビはお互いに愛を与えあっていた。
「チビ、父さんはわたしが嫌いなんだ。生まれてくる弟か妹のことはすごくかわいがるんだろうな。そのために一生懸命働いてるって前に母さんに話してるの聞いちゃった。わたし、捨てられるのかな...。」
『ダイジョウブ、トキガイル。ソンナコトサセナイ。チビモツルナスキ、トキモツルナスキ。ウマレテクルコモツルナスキ。』
「そっか!!赤ちゃん、わたしのこと好きになってくれるよね?一生懸命にお世話しなきゃね!」
孤独でなければ人は強くなれる。鶴奈はチビと支え合って生きていた。二人の間には強い絆が芽生えていた。
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時を同じくして、不穏な噂が流れていた。
盗賊まがいなことをしてその日暮らしをしている仲間内でその話題があがっていた。ボスらしき男と子分が話し込む。
「最近ヤバイやつがうろついているらしい。」
「どんなやつです?」
「奇妙なじじいらしいがな。ある高貴なものが盗賊同士のいざこざに巻き込まれ行方知れずになってな。それを探し回ってるみたいだが...。」
「それのどこがヤバイんですかい?」
「俺たちみたいなコソ泥がそのじじいに会ったら体が金縛りにあったみたい動かなくなるんだと。」
「マジですかい?」
「それで質問に答えられないと、魂抜かれるらしいぜ?」
「死んだやつが言ったんですかい?」
「アホ、気を失ってるやつが目撃したんだとよ。異様な光景だったらしいぜ。妙な術みたいなもんを使うらしい。俺たちも気をつけないとな。」
「その高貴なものってなんだったんです?」
「ん?お前この間入った新入りか?」
「ボス、こいつは羅臼です。ガキができたから金がいるんだと。女房は知っているのか?おまえが悪さして稼いでいるのを。」
「大丈夫ですよ。で、高貴なものって?」
「なんか植物らしい。ようわからんが。珍しい生き物の卵とか...?」
「ボス、どっちなんです?」
「どっちでもいいだろ。そんなもの、とっくにだれかが手にしているはずだ。さ、俺たちは早速仕事に取り掛かるぞ。もうすぐここいらを旅人が通る。がっぽりいただくぞ。」
羅臼は考えていた。紛失したその高貴なものを手にできればこんなコソ泥たちとつるまなくてもいいのではと。早速明日から一人でそれを探すつもりだった。
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