追憶2
チビはあれから毎日鶴奈と森に出かけ、そこにある澄んだ池で体を洗ってもらっていた。体調はすっかり良くなり一度目の脱皮を終えたところだ。
キモチイイ。ツルナダイスキ。
「チビ、本当に綺麗だね。紫がかって見えるよ?それにここに手、みたいなのがある。チビはトカゲなのかな?」
チビはくるくる変わる鶴奈の表情が好きだった。とても満たされ、自分は愛されていると感じていたし、チビも鶴奈を愛していた。鶴奈の優しい母の朱鷺も好きだった。
鶴奈につらくあたる父親だけは嫌いだったが、鶴奈と朱鷺の愛のおかげでチビは問題なく健やかに成長していた。
「バケモノ!なにやってんだ?」
同じ村の同世代の子供たちは大人の真似をし鶴奈につらくあたった。鶴奈は彼らの格好の餌食だった。
「この間弟が病気になったんだ。お前が呪ったんだろ!」
そう言って彼らは鶴奈に石や泥を投げつける。鶴奈は関わっても無駄と彼らを避けようとするが、むこうから関わってくる。つらく攻撃されても鶴奈はやり返しはしなかった。そもそも一人に対して大人数で襲ってくる相手には黙って嵐が立ち去るのを待つしかなかった。
チビは鶴奈の気持ちに敏感だった。しかし鶴奈が彼らに襲われているとき、鶴奈は心を殺しているのか負の感情はチビには感じられなかった。チビが鶴奈から感じたのは「無」だった。鶴奈は彼らが立ち去ると見つからないように隠していたチビの元にきてニコリと微笑む。
「わたしにはチビがいるから平気だよ。友達はチビだけ。」
「なにひとり言?気持ち悪い。」
さっと鶴奈は振り向いた。そこにはさっきの子供たちの仲間が一人居残っていたようだ。かわいらしい顔をした少女だった。
「やっぱりバケモノなのね。」
少女はそう言って立ち去って行った。その時、チビは体が痺れた。鶴奈の心が悲しみの悲鳴をあげているのだ。チビは鶴奈の顔を見上げた。彼女は時間がとまったようにぼぉっとつっ立ったままだ。
『ツルナ?』
鶴奈はさっとチビを見た。
「今、話しかけたの、チビ??」
チビは知的なまなざしで鶴奈を見つめ返し、彼女の脳内へ直接話しかける。
『ダイジョウブ?』
鶴奈は目を大きく見開いた。
「チビっ!心配してくれているの?ありがとう!ちょっとね...、さっきの子、むかし仲良くしていた子なんだ...。だから...少しだけ寂しくなっちゃった。」
悲し気な顔だった鶴奈の表情がぱっと明るくなる。
「でもチビ、話までできるんなんて!わたし、すごく嬉しい!」
鶴奈はチビをぎゅうっと抱きしめた。
『トモダチ、トモダチ。』
鶴奈からの愛を感じる。チビからは濃い蓮の花の香が漂っていた。
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